第4話 してやったり……

 …… 


 僕が孝太郎の車に細工をした。その翌日……


「じゃあ、行って来るよ!」

「結花。陽向!」


 僕の家では孝太郎が出勤時。結花と僕で見送ることに成っている。

 その日も、何時も通りの光景が行われた。


 多分…。今日が、お前の命日に成るかも知れないのに……


「行ってらっしゃい~~!」

「あなた!❤」


 結花は笑顔で手を振りながら、見送っている。

 結花もこれから起こる、孝太郎の悲劇を知らないから笑顔で見送りが出来る。

 僕は最後の別れも含めて、作り笑顔で孝太郎に言う。


「行ってらっしゃい!」

「お父さん!!」

「元気で……仕事(あの世)に行って来てね!!♪」


 先ず、最後の挨拶になると思うから、僕は満面な笑みで言う。

 すると、孝太郎は普段以上に和やかな表情で僕に言い始める。


「おぉ、行ってくるな!」

「陽向!!」


『ブロロ~~~』


 孝太郎は僕への言葉の後。自家用車に乗って勤務先へ向かって行った。

 僕の仕掛けた細工は、果たして発動するだろうか…?


 まぁ、失敗しても、新た方法を模索すれば良いし、実の息子が父親を暗殺するなんて、誰も思わないからな!


 ……


 孝太郎が勤務先へ出勤してから、十数分後。

 僕も、小学校に行く為に家を出る。


「お母さん(結花)。行って来ます~~♪」


「陽向。今日も、しっかりと学校を楽しむのよ!!」


 お互い、笑顔で言葉を交しながら、僕は小学校に向かう。

 だが、今日は小学校を楽しむことは出来ないだろう。


 細工が無事に発動したら、小学校どころでは無い……

 僕の小学校区は集団登校では無いので、一人で小学校に向かう。


「おはよう。新居浜さん!」


「おはよう。陽向!」


「おはよう。新居浜君!」


 通学途中。低学年から高学年まで、男子・女子を含めて朝の挨拶をされる。

 みんな、爽やかな表情で僕に挨拶をしてくる。


 それだけ、僕に魅力が有るのだろう。

 だが、残念なことに、僕が求めているのは結花だけで有る。


 ……


 僕は小学校教室に到着して、朝の会話をクラスメイトと楽しむ。

 僕のクラスは、僕が学級委員でまとめているから、平穏無事そのもので有る。


 まだ、本格的な思春期を迎えていない学年なので、本当に平和で有る。

 男子は女子と会話を楽しみ、女子も男子と会話を楽しむ。


『タタッ、―――』


『ガラッ!』


 一時間目の授業が始まる直前。

 僕の担任が血相を変えて、教室に飛び込んで来るように入ってくる!?


(この担任の慌てよう……仕掛けは成功したな!)


「えっと……にっ、新居浜さんは学校に来ている!?///」


 僕の担任は素っ頓狂な声を上げながら、僕の名字を呼ぶ。

 僕は澄ました表情で、右手を挙げながら返事をする。


「はい…!」

「先生。どうしましたか?」


「大変よ! 新居浜さん!!///」

「新居浜さんのお父さんが、出勤途中に交通事故を起こして、病院に搬送されたとお母さんから連絡を貰いました!!」


「!!」


 僕は驚きの表情を見せるが、同時に心の中でほくそ笑む。


(やった!)

(奴に感づかれる前に、細工が無事発動した!!)


『えぇ~~~!?///』


『新居浜君のお父さんが交通事故~~!?///』


 僕の父が交通事故に遭ったことでクラスメイトから、どよめきの声が上がる。

 今この場で、僕は嬉しい顔をしてはいけないので、びっくりした表情で担任に聞き始める。


「ほっ……本当ですか!?」

「葛城先生!!///」←葛城先生は女性


「はい…。本当です……新居浜さん!///」

「お母さんが今。こちらに向かっていますので、先生と一緒に来てください!!」


「……後の皆さんは、先生が戻って来るまで自習の時間とします!!」


 葛城先生は、焦った表情でクラスメイトに言っている。

 僕は冷静な態度で、机の中に入れた教科書類をランドセルにしまって、早退の準備をする。


 このまま、無事に死んでくれよ。孝太郎!!

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