第二十七話 護衛依頼の付添人......という名の監視係
「「俺とこいつに依頼? 」」
モヒカンと肩パットがそれぞれを指してミミに聞く。
そこには「余計な口を挟みやがって」という感情が乗っているが、依頼なら仕方ない。
そう。仕方ないのだ。
「いってこい。二人とも」
「「えぇ~!! 」」
「Bランクの二人に来るということはかなり高難易度だろう。しっかりとこなしてこい」
「ですが
「いってこい」
「「ハ、ハイ」」
「全く。指名依頼を断ろうとするとは」
「ふふっ。それほどまでに彼らにとってアルケミナ殿の想い人というのが興味深かったのでしょう」
「例えそうだとしても、依頼を断ろうとする理由にならん! 」
足を組み、
隣を見るとニヤニヤとマリアンが見てくるが、今回ばかりは不愉快だ。
「おや? なにやら集まっているじゃないか」
椅子に座るケルブがそう言う。
受付の方を見るとそこには受付の中心にいるエルジュに
……。なんだ、この犯罪臭は。
ここは冒険者ギルドじゃなくて
「……外から見ると、ヤバいな」
「中身を知らずにこのような光景を見ると、誤って捕まえそうです」
それは
「しっかしオロオロしてるな。エルジュ」
「あの集団に囲まれてしない方がおかしい、と吾輩は思うがね」
「顔が引き
彼らも悪い奴らではないんだが
Bランク冒険者というよりかはBランクチンピラだろう。
少し聞き耳を立てていると
「俺達に任せな」
「ねぇーちゃんをきちんと届けるぜ。天国にな」
「ここにサインしな。これで——取引は完了だ」
うん。ヤバい。
「アルケミナ。これはついて行った方がいいんじゃないかね? 」
「……不本意だが、そう思えてきた。同じ女性として」
「女性? 」
「あ“? 喧嘩を売っているのか、ケルブ? 」
「いやそのようなことはない。ただ、君が女性としての自覚があったとは」
「それを喧嘩を売っているというんだ」
まぁまぁ、とマリアンが
軽く受付の方を見るとミミも引き
オレが見ていることに気が付いたのかこっちに「助けて」と視線を送ってくる。
それを受けケルブとマリアンに顔を合わせる。
「……助けた方が良さそうだが、二人はどうする? 」
「吾輩が行く場所は、不本意ながらもアルケミナが行く場所だ。君が決め
「私も大丈夫です」
「店を数日あけることになるが……まぁ大丈夫か。人来ないし」
「悲しい事をいうね。事実だけれども」
いつも一言多いケルブを軽く
それを追うかのようにマリアンとケルブも立った。
仕方ない、と思いつつオレは受付へ足を向けた。
「おい、お前達。エルジュが怖がってるじゃないか」
「「「姉さん?! 」」」
腰に手を当てため息交じりに声を掛ける。
すると強面達が一斉にこちらを向いた。
その先にいるエルジュの表情が少し
「お前ら顔がこぇんだからせめて話し方くらい
「なにか変でしたかい? 」
「変も何も、他の町でその話方で女性に話していたら捕まるくらいに変だ」
それを聞きショックが走ったような表情をする強面達。
いや、自覚なかったのかよ。
「お、俺達はこれが普通かと」
「これじゃいけねぇんですかい……」
「ここは責任を取って腹を」
「お、おいそれはやり過ぎだ! 」
「止めろ! こいつを
「だ、だが
「「「ぐぅっ!!! 」」」
「いや、つけなくていいから! 」
「あ、姉さん……こんなオレを許してくれるんですかい?! 」
「女神でさぁ……。姉さんはまさに、女神でさぁ」
「このくらいでいちいち感動するな」
強面達が一斉に
腹を切ろうとする野郎を止めに入っただけでこの状態とは。
もしかしてついて行かない方がいいんじゃないか?
周りの迷惑になりそうだ。
「どうするんだい? 最初の予定だとついて行くはずだったと吾輩は覚えているのだが」
「これを見るとついて行かない方がいいような気がしてきた」
ケルブがオレに聞いて来る。
ケルブもこの過剰反応に少し引いているようだ。
流石に落とし前をつけようとするとは思わなかったようで。
ケルブと話していると野郎共の中心にいたエルジュが目ざとくオレ達の会話に入ってくる。
「ついてきてくれるのですか?! 」
「この状態になる前は、少し仲介しようかと思ったんだが」
「これを見るとアルケミナがついて行くと護衛になりそうにない」
「実力は本物なんだがな」
少し頭を
だが横からモヒカンが声をかけてきた。
「だ、大丈夫でさぁ。依頼は……グスン……きちんとこなすんでぇ」
「
涙を
「可能ならアルケミナさん。彼らについて行ってくれませんか? 」
「ミミ。だが……」
「彼らのブレーキ役がどうしても必要なのです! 」
「いや。オレがついて行くとブレーキどころかアクセルになりそうなんだが」
ミミが受付台から身を乗り出してそう言う。
そしてエルジュが一歩前に出て口を開いた。
「私からもお願いします。護衛料、という形で金銭もお渡ししますので」
少し
気持ちはわからんでもない。
彼らとは今日初めて会うはずだ。
オレもエルジュと昨日会ったばかりだが同じ女性。
恐らく彼女はガガの町やダンジョンの町へ行くまでの護衛として「この町で一番強い護衛を」とでも頼んだのだろう。
そして出てきたのが犯罪臭しかしない冒険者。
もしオレが逆の立場なら身の危険を感じてチェンジを頼むか諦める。
「……あぁぁ、分かった。行けば良いんだろ、行けば! 」
「「「うぉぉぉぉぉぉ!!! 」」」
オレがついて行くと聞いていきなり
いや何でお前達が喜んでんだよ。
「ありがとうございます」
「……まぁ奴らを放置するわけにもいかないし、な」
「それでも、です。しかし……」
「しかし? 」
「
不本意だがな。
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