第二十二話 ジルコフ・プライとニルヴァ・デルル
ギルドマスターの
そこには
しかしニルヴァはそれを冷たい顔で見下していた。
「……貴方は変わりませんね、ジルコフ・プライ子爵家次男様」
「こんなことをしてタダで済むと思うなよ! 」
「済みますよ。もうすでに貴方のご実家は、貴方を切り離しにかかっているようですから」
それを聞き、先ほどまでの
同時に体を
「き、君が欲しいのは権力か? ならこのギルドマスターの
「私が欲しいのは権力ではありません」
それを聞き焦ったように少し口早に言う。
「な、なら金か? ならば幾らでもやろう。そ、そうだな。手持ちに白金貨が数十枚ある。それを上げるから——」
「
「了解しました」
更に焦り、体を捻じる。
拘束が強くなり痛みが走ったのか
しかし媚びることをやめないジルコフ。
「な、何が欲しいんだ? 欲しいものを上げる。だから俺を解放してくれ」
「……私が欲しいのはただ一つ」
それを聞き、少し希望が入った表情をし——
「ジルコフ・プライ。貴様の首だ! 」
絶望に堕ちた。
そしてせきを切ったかのようにジルコフの口から言葉が
「何故だ! 何故私の首にこだわる! 私がしたのはここまで
「皆やってる、ですか。まだまだ調査は必要なようで。しかし「何故俺が咎められるのか」については答えられますよ? 」
「なら答えてみろよ! 」
「私の母さんをお前が殺したからだ!!! 」
「!!! 」
そう言われ、ジルコフの顔が固まる。
「たった一人私を育ててくれた母さんを、金が払えないゴミと、貴様が捨てたからだ! 私はそこから
ジルコフの方へ一歩進むと「ひぃ」と
「なんだ! 勉強すればわかるじゃないか! 単なる風邪じゃないか! 何で医師ギルドは、貴様は単なる風邪にこんな高額な治療費を
バン! と隣にある机の上の書類をジルコフの方へ叩きつけ見せる。
「何で風邪を治すのに金貨が必要なんだ! 」
「し、知らない……私はしらない」
「ジルコフ・プライ!!! デルル準男爵の名前を忘れたとは言わせんぞ!!! 」
「ひぃ! 」
「
「……すまない。取り乱した。後は頼んでも? 」
「はい。連れていけ! 」
ニルヴァが軽く白衣を
★
「ニルヴァ内偵官、今回の長期にわたる任務ご苦労であった」
「今回はウルの町の住民が声を上げたからこそ。私は何も」
「
アーク公爵邸の一角、
ニルヴァは軽く返した後、「やはり解雇だろうか」と思いつつも、言葉を待つ。
「ふむ。ニルヴァ内偵官。君の事はある程度知っているつもりだ。無論書類上だが」
「ありがたき幸せ」
「君は元をただせば準男爵じゃないか。ならば、まず今回の
そう言われ、顔を上げそうになる。
すぐにでも
確かに準男爵の出身だ。
しかし準男爵と男爵では意味合いが違う。
ということはそれ
ほとんどの時間を医学の勉学や内偵
ありがたいが、断ろうと顔を上げようとした瞬間「しかし」と公爵が口を開いた。
「君も不安だろう。この先貴族としてやっていけるのか、と」
まさに考えていたことである。
その言葉を
「で、だ。今、息子のトリアノの専属医師がいなくてな。少し困っている。誰かを任命しようと考えていたのだが、トリアノがあまり貴族
ニヤリと笑う公爵に話が見えたニルヴァは苦笑いしながら話を聞く。
「ニルヴァ・デルル男爵にその専属医師を頼みたいのだが……どうかね? 」
「そのお話。
こうして公爵家に新たな仲間が加わった。
―――
後書き
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