第585話 テンプレはいつも突然に

グラフィアス商会会長のレサト殿が、ケイトの闇の元凶ラウール・サグェを連れて来たらしいので、俺はヨウコさんとシエーネさんと一緒に応援室の前にやって来た。


先ずは自分に自動回復の魔法をかけ、護身用にコルトパイソン357マグナムを上着のポケットに入れる。


一緒に来たヨウコさんとシエーネさんを見ると2人とも無言で頷いている。


すぅーはぁー、すぅーはぁー、、よし!


いざ参る!


ガチャッ



「レサト殿お待たせしました。」


「やぁシン殿、夜分遅くに申し訳、、、ひぃっ?!」


「すいませんね、ラウール君を見たらどうにも殺気が漏れてしまったみたいで」



とは言え、応接室のソファにはレサト殿しか座っておらず、ラウール君は部屋の隅で土下座の姿勢から微動だにしていない。


ヨウコさんとシエーネさんも何の反応もしていないし、ラウール君が俺に復讐に来た訳では無さそうだ。


だからといって過去の出来事が無かった事にはならないけどな。


復讐で無いとすると、相当面倒な理由があるんだろうなぁ。



「シン殿とラウール殿の戦いは私も一部始終を見ていましたから、お気になさらず(汗)

本日は全てを承知の上であえてラウール殿を連れて参りました。先ずはその理由を聞いて頂きたく伏してお願い申し上げます。」


「出来れば聞かない方が良いような予感がしますけど、聞かない訳にはいかないんでしょうね」


「アハハハ(汗)」


「そうそう、ラウール君はそのまま動かないでいてくれ、今現在の君がどのように暮らしているのかは知らんけど、俺は君を信用していない」


「はっ!仰る通りです。弁解の余地もございません。」



ふむふむ


やはりラウール君は、突然別人のようになって去って行ったあの時の性格のままか



「レサト殿、説明をお願いします。」


「はい、ラウール殿を連れて来た理由は、、、」





レサト殿から聞いた話を纏めると


1:ラウール君は孤児院で暮らしていた子供時代に、王都の神殿からシスターとして派遣されて来たジャンヌに洗脳魔法をかけられる。



2:ラウール君は俺と戦っていた最中、もしくは俺に倒された直後に洗脳が解けるも理由は不明。(ラウール君は神の慈悲によるものだと考えている)



3:洗脳が解けた後は神殿と関係があり怪しい動きをしているジェミニ辺境伯を探る為に、プロプスの町の孤児院で支援活動をしている。



4:ジャンヌ・サワタリは現在、神殿の神官長をしており、サワタリ一族栄光の日々を取り戻そうとしている。



5:サワタリ一族栄光の日々を取り戻すには、女神様から『チート』を授かる必要があり、洗脳魔法を使ってラウール君のような優秀な者を国中から集めている。




はぁ~


サワタリ一族栄光の日々には全然興味無いけど、ジャンヌ・サワタリは洗脳魔法の使い過ぎで、自分が使った洗脳魔法が跳ね返って来て自分自身を洗脳してる状態なのかな?


ビィさんも言ってたけど、今のジャンヌ・サワタリは乱心してるらしいしな


ジャンヌ・サワタリがどんな状態なのか確認は必要だろうけど、放置してても直接俺に害は無さそうな気がするから、アストレア様やゲオルグ様に任せておけば、きっちり解決してくれるだろ。





ガチャッ!


「シン殿、緊急事態です!」



えぇ~(疲)


突然部屋に入って来たウェンディさんが、面倒な事を言っちゃってるけど、聞かないと駄目なんだろうなぁ



「ウェンディさん、何があったの?」


「ジャンヌ・サワタリが王都にてクーデターを起こしました!」



おぅふ


王都でクーデターとか、これぞまさしくクライマックスのテンプレ展開やん


勘弁してよぉ~(悲)












テンプレを愛し、テンプレに愛され、テンプレに翻弄される男、シン・ナガクラ


これはテンプレに囚われた男が、連綿と続くテンプレの連鎖を断ち切る為に命をかけて戦う・・・


否!


最終的に神頼みでどうにでもなる、シリアスとは無縁の物語である。






第12章 完

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