第558話 優しさ渋滞中

ゴトッ


「さして価値のある物では無いが受け取ってくれ」


「ありがたく頂戴致します。」



レヴァティ様が机に置いたのは、柄にビー玉くらいの大きさの青色の宝石が埋め込まれたナイフだ。


これはレヴァティ様が息子が出来たら渡そうと作ったナイフらしい。


ナイフを手に持ってみると意外に軽い。そして、埋め込まれた青い宝石にはピスケス伯爵家の紋が描かれている。


どうやって宝石にこんな精密な紋を描いたのか全く分からんけど、めっちゃ格好良い!



「ふふっ、やはりシン殿は目の付け所が違うようだ。」


「どういう事でしょうか?」


「シン殿は埋め込まれた宝石を見ていたようだが、宝石に興味があるようには見えなかったからな」


「まぁそうですね。宝石にどうやって紋を描いたのかが気になります。」


「普通は幾らで売れるかを気にするだけで、どうやって作ったかを気にする者など居ないよ。他人と違う視点で物事を見るからこそ、新しい発想も生まれるのだろうな。」


「そこまで考えてませんけどね、あはははは」



レヴァティ様の真面目な意見には申し訳ないけど、マジでそこまで考えて生きてません。



「ははは、狙って出来る事でも無いのだろうさ。どうやって宝石に紋を描いたかだが、魔法でやったらしい。職人の秘伝だから詳しく私も知らんのだがな」


「へぇー、色んな魔法があるんですねぇ。鞘から抜いて見ても良いですか?」


「勿論だ。」



じゃあ遠慮無く、スッと


むむっ!


鞘から抜くと刀身が白く輝いている、何コレ?


だがこの白い輝き、何処かで見た事があるような、、、



「もしかして、ミスリルですか?」


「正解だ。しかしよく分かったな、もしかして鑑定か?」


「いえ、ケイトがミスリルの剣を持っているので、それで知っていただけです。でもミスリルって高いんじゃないですか?」


「平民が気軽に買える物では無いが、貴族ならミスリル製品は家臣に褒美として渡す為に幾つか持っている。安くは無いが高価過ぎて受け取りを許否する程では無いよ。


ちなみに、シン殿に近付く貴族の馬鹿が居ればそのナイフを見せると良い。私と深い繋がりがある事の証明になる。

相手がそのナイフを見て何も察しないような本物の馬鹿だった場合、好きにして構わん。馬鹿がこの世から消えても誰も困らんからな。」


「ええー?!」


「ふふっ、シン殿なら馬鹿が相手でも心配要らんだろう。だがそのナイフを見せるだけで済む事もある。使える手札は幾らあっても無駄にはならん。

まぁ無駄になってくれるのが1番ではあるがな、わっはっはっはっ♪」



俺が本気で馬鹿の対処をした場合、神様や神獣の力を借りる事になり、色々と影響が大きい(世界崩壊の日が近付くおそれがある)から、ザコキャラ相手にはこういう印籠的なアイテムはマジでありがたい。



「使える手札が幾らあっても良いのは賛成です。ちなみにこの部屋は盗聴対策はしてますか?」


「勿論だ。あらゆる魔法が使えんようにしているのに、シン殿が普通にスキルを使って驚いたぞ」


「あれは創造神様の恩恵ですから、アハハハ。という事で遠慮無く、、、ほいほいっと、回復薬です。どうぞ」


「疲労回復の栄養ドリンクか?」



俺が机に出した液体の入った瓶は、製薬スキルで作った回復薬


文字通り回復が必要な事に対して全てを回復させる薬、、、のはず。


製薬スキルで作った薬の効果は実証済みだけど、今までは便秘とか腰痛を治す程度の薬しか実際に使った事が無い。


製薬スキルは信用しているけど、命に関わる怪我や病気に使った事が無いからしょうがない。



「生きてさえいればなんとかなる程度の回復薬ですけどね」


「、、、は?」「あらあらあら♪」



レヴァティ様は口を開けてポカーンとして、アストレア様はとても嬉しそうだ。


夫婦であっても真逆のリアクションをするんだなぁ。



「手札は幾らあっても良いですよね♪」


「待て!いやシン殿待って欲しい。これはそんな気軽に存在しては駄目なやつだろう!」


「製薬スキルで作れちゃいましたからしょうがないですね。あはははは♪」


「笑って済む話では無いぞ!」


「旦那様はちょーっと黙ってましょうか?」


「うっ、うむ(汗)」


「ねぇねぇシンさん、製薬スキルってなぁ~に?」


「鎮痛、解熱、咳止め等々、あらゆる効能の薬を作れるスキルですね。

家族にしか教えないと決めていたので、アストレア様に黙っていたのはすいませんでした。

今はもう家族ですから教えても良いかと、、、正式にはまだですかね?」


「いいえ、シンさんは既に私の可愛い息子です。だから抱きしめちゃう、えいっ♪」



ぎゅぅぅ♪


おおっ!


久しぶりにアストレア様に抱きしめられたけど、全然花畑が見えない!


にも関わらずアストレア様の柔らかいお胸は俺の顔に押し付けられているという不思議!


これが母の優しさという物なのだな♪






つづく。

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