第474話 オムレットは聖剣よりも強し

シュポッ、トクトクトクトク


「おにいちゃんビールどうぞ」


「ありがとうメリル。そしたらみんな今日も1日お疲れ様でした。かんぱい」


「「「「「「「「「「「「「かんぱーい♪」」」」」」」」」」」」」



んぐんぐんぐ、ぷはぁっ!


いつものビールもメリルが注いでくれると5割増しで旨い♪


今日の夕食はお母さんが作ってくれた『ブリの照り焼き』だけど、これがまたビールに合う!


何が違うのか俺の作るブリの照り焼きとは桁違いの美味しさなんだよな。ブリの皮だけで既に瓶ビール2本を空にしてしまった。


しかもケイト、スミレ、コニー、フラニー、育ち盛りの4人の豪快な食べっぷりを見てるだけで、更に酒が飲めてしまうし


我が子を見守る父親の気分だよ(笑)



おっとっと


我が家の可愛い娘達を見てほっこりしている場合では無かった。


家族を守る為に俺は全力を出すと決めたんだ!



「ヨウコさん食べてるところ悪いんだけど、試練について質問があります。」


「ナガクラ様が試練について質問とは珍しいですね。何でしょうか?」


「第九の試練をクリアしたらヨウコさんの加護が貰えるんですか?」


「答えは否ですね。加護はあくまでもサービスなので、試練のクリアに関係無く私の気持ち次第になります。」



マジかよ?!


それならもっと早くに我が家のみんなに加護を授けて貰うんだった。



「じゃあ何か新しい料理を対価に、我が家のみんなにヨウコさんの加護が欲しいんですけど」


「え゛っ?」


「え?」



何故かヨウコさんが凄く驚いて俺を見ている。



「あのう、ナガクラ様は私に何を期待なさっているのでしょうか?」


「何をって、ヨウコさんのっていうか神獣の加護があれば色々と安心なので」


「そっ、そうですか。ナガクラ様の御家族は創造神様が見守られておりますから、神獣の加護は不要でございます。」


「本当にありがたい事だよね。でも保険は幾らあっても良いでしょ?料理とかちょっとした物と交換で貰えるなら欲しいじゃないですか」



創造神様の事は当然信用しているけれど、創造神様の今までの言動を見て一抹の不安を感じたとしても、何か美味しい料理とお菓子をお供えするので許して欲下さい。



「うーん、そういう考え方も一理ありますね。じゃあ、はいっ!加護の付与完了でございます。」


「早っ!」


「ねぇねぇ、加護を授けるだけでナガクラ君から何か貰えるならボクの加護もあげるよ。ほいっと、付与完了!ナガクラ君何かちょうだい♪」


「えっと、、、『骨無しクリスピーチキン』で良ければ、はいどうぞ」


「やったぁー♪スンスン、いただきまぁーす。」



ついでにドラゴンのシエーネさんからも加護を貰えたのだが、こんなんで良いのだろうか?


まぁ対価の骨無しクリスピーチキンを美味しそうにバクバク食べてるから問題は無いか。



「ちなみにヨウコさんとシエーネさんの加護の効果って何ですか?」


「基本的には全ての防御力が上昇しますけど、私の加護は炎に耐性が付いてシエーネさんの加護は物理防御に特化していますね。」


「へぇー、という事は他の神獣の加護もそれぞれ違う効果があるんですね?」


「私からは勝手に教える事が出来ないので察していただけると(汗)」


「試練をクリアしなくても良いなら神獣に直接聞けば良いだけだしね。おっと、忘れる所だったけど第九の試練のクリア報酬にマジックバックってありますか?」


「マジックバックというと魔法を付与された道具ですよね、そういうのは無いですね。」



あぁ~、無いのかぁ


ナタリアさんには悪いけど物流革命はまだまだ先になりそうだ。




「ねぇシン君、ちょっと良いかな?」



食後のデザートとコーヒーを堪能していると、ミリーさんが隣に来て真面目な表情で俺を見ている。


こういう時のミリーさんは面倒事を抱えているのがお決まりのパターンなんだよなぁ(悲)



「何でしょうか?」


「シン君がカスミちゃんやスミレちゃんや他のみんなに優しいのは分かるの、結婚して本当の家族になったんだから当然よ。

でもね、私もマーマの子供なんだから私にも優しくして欲しいの」


「えっと、ミリーさんには過去にイラッとして冷たい態度をとった事があるのは認めますけど、基本的には優しく接してますよね?」


「でも積極的に優しい事はしてくれないわよね?」


「ミリーさんは大人ですから、メリルやニィナの前で他の女性に積極的に優しくはしませんよ」


「むぅ、、、私にも優しくしてくれなきゃやぁーだぁー(泣)」



はぁ


勘弁して下さいよミリーさん


我が儘を言うのは構わないけど、幼い子みたいに駄々を捏ねるのは止めて欲しい。



「はいはい、ミリーさん分かりましたから、何か食べたいお菓子でもあるんですか?」


「、、、武器が欲しい」


「武器?」


「うん」



まさか武器が欲しかったとは予想外の答え!


しかしミリーさんは魔法が得意だから武器で戦う必要あるのか?


でも武器が欲しいって言うんだからスキルの「店」に何か、、、これだ!


購入をポチッとな



「ミリーさんどうぞ、『特殊警棒スタンガン』です!」


「すたんがん?」


「はい、鋼鉄製で頑丈なので打撃武器としても使えるうえに、ボタンを押すと電気、、、雷魔法を纏うので触れるだけで気絶するほどの威力がありますよ♪」


「私が欲しいのはこういうのじゃ無いの!」



えぇー?!


非殺傷で威力のあるお薦め武器なのに(悲)



「じゃあどんなのが良いんですか?」


「えっと、なんかこう、、、ドラゴンが驚くようなのが良い」



ドラゴンが驚くって言われても、、、むむっ!


ふと視界に入って来た光景を見て俺は閃いた。


この世界のドラゴンには聖剣を持って立ち向かうよりも、もっと有効な手段があるじゃない♪


本日のデザートをドラゴンの神獣であるシエーネさんが笑顔で頬張っているのなら選択肢はひとつ


ホットケーキミックスで作った生地に、イチゴとキウイとホイップクリームをたっぷり挟んだ『オムレット』


これでどうだ!






つづく。

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