第469話 帰宅は焦らずゆっくりと その2

何やら意気投合したニィナとナタリアさんは、お互いの住んでる場所を教えあっている。


元世界ならメールアドレスやLINEの交換をする所なんだろうけど、手紙を出したり直接訪ねて行けるように住んでる場所を教えるしか無いもんな。



「ニィナにナタリアさんも、そろそろ良いかな?あんまりゆっくりしてるとニックとレイチェルさんとの待ち合わせに遅れちゃうんだけど」


「ごめんごめん、時間を取らせちゃったね。仕事が落ち着いたらキャラバンシティのお宅に伺うから、その時はよろしくねニィナさん。」


「はい、いつでも大歓迎です♪」



ふふっ


ニィナもナタリアさんも嬉しそうやなぁ


どうやら2人は『友』と呼べるくらいの仲になれたっぽいし、ナタリアさんが我が家に来た時は、盛大に歓迎会をしないとな。



「ナタリアさん、今後も保存食が必要になったらエモンズ商会に頼んで下さい。木箱1個だけなら優先的に運んでくれるように話をしときますから」


「嬉しいけど木箱1個かぁ、せめて木箱3個でお願い!ニィナさん駄目かな?」


「旦那様、どうにかして下さい。」



おぅふ


奥さんに頼られるのは嬉しいけれど、エモンズ商会のタコヤーさんにプレゼントしたトゥクトゥク自転車で運べる荷物には限りがあるからなぁ


単純にトゥクトゥク自転車を増やす方法もあるけど、それをするとエモンズ商会だけめちゃめちゃ儲かって、他の商会との格差が一気に広がってしまう。


急激な変化はトラブルに繋がるから、トゥクトゥク自転車を増やすのはまだしたくない。


となると、頼れるのは魔道具しか無い。



「ナタリアさんは荷物が沢山入る魔道具って知りませんか?」


「マジックバッグの事かな?確かにあれば運べる荷物が増やせるけど、上級ダンジョンでしか手に入らない超レアアイテムらしいよ。

マジックバッグが欲しいなら高ランクの冒険者に頼むしか無いけど、マジックバッグを買い取る権利は貴族が独占してるから、今からだと10年待ちとかかな?」



あぁ~


やっぱ便利なアイテムはそうなるよなぁ。


俺がマジックバッグを取りにダンジョンに行けば早いんだろうけど、わざわざ危険な場所に行くなんて絶対に無い!


だがしかし、俺にはダンジョン以外でマジックバッグが存在する場所の心当たりがある。


それは全12個ある勇者の試練だ!


残念ながら第一の試練がある浮島には無かったけど、まだヨウコさんが管理している第九の試練がある。


第九の試練はクリアしてないから、クリア報酬でマジックバッグがあるかもしれない!



「とりあえず家に帰ってヨウコさんに相談かな」


「なるほど、その手がありましたね♪」


「ん?よく分からないけど良い報告を待ってるよ♪」


「あまり期待はしないで欲しいんですけど(汗)マジでそろそろ行かないと駄目なんで、ナタリアさんお元気で!」


「ああ、とても有意義な時間だったよ♪ナガクラ君とニィナさんも元気でね」


「「さようなら~」」


チリンチリン♪





ぶぃーーんっ、と


全力で自転車を走らせてニックとレイチェルさんが待つ商業ギルド前に到着。



「ニック、レイチェルさん、お待たせ!」


「おっ、おう。とりあえずコレ飲んで落ち着けよアニキ。ニィナさんの分もあるんでどうぞ」


「気が利くじゃないかニック」


「ありがとうニック君♪」


「こっ、これくらいは普通だって(照)」



ニックがこんな気配りをするようになるなんて、初めて出会った時は考えもしなかったよ(笑)


とりあえずニックが渡してくれたドリンクを飲もう、グビッ、、ふむふむ、甘くて美味しい♪


独特の甘味にミルクも入ってて黒糖ラテっぽいな


サウスビーチで黒糖ラテが飲めるとは思わんかったけど、これってまさか元世界からの転生者が作ったんじゃないだろうな?



「なぁニック、このドリンク何処で買ったんだ?」


「えーっと、そっそそそその辺の店で買ったけど(汗)」



何故かニックのリアクションが変だけど、今は気にしている場合じゃない!



「美味しかったから是非作ってる所を見たいんだ。店まで案内してくれ」


「マジで美味しかったのか?」


「ああ、美味しかったぞ。黒糖をドリンクに使うとは、これを作った奴はなかなかやりおる!」


「そっ、そうか(照)」


「ふふふっ、良かったねニック君♪昨日も夜遅くまで考えてたもんね」


「ちょっ、レイチェルさん、そういうのは言わなくて良いから(汗)」



むむっ!


ニックとレイチェルさんの会話を聞く限り、この黒糖ラテを作ったのは、、、



「まさかこのドリンクはニックが作ったのか?」


「作ったって言っても、屋台で売ってたお茶とミルクと黒糖を混ぜただけだし、もっと苦味があっても良いかなって思うんだよなぁ」


「そうですか?私はこのままで充分美味しいですけど」


「ですよねニィナさん!私も苦味は要らないってニック君に言ったんだけど、どうしても苦味は欲しいって言うんですよ」



へぇー


ニックも色々と考えてるんだなぁ。


今の俺は子供の成長を喜ぶ父親の気分だよ。



「黒糖ドリンクは帰ってから色んな種類を試作すれば良いんだし、とりあえず我が家に帰ろう。」


「「「はーい」」」



「じゃあニィナ、運転は頼んだ!」


「お任せ下さい」


チリンチリン♪



軽快に走り出したトゥクトゥク自転車だけど、俺は運転しているニィナに小声で話しかける



「ニィナ、帰りもゆっくりでお願いします。」


「ふふっ、旦那様はニック君に甘いんだから。」



ニィナには笑われてしまったけれど、俺は恋愛レベルが中二の朴念仁だ


たとえニックとレイチェルさんが、こっそり手を繋いでトゥクトゥク自転車の荷台に乗っていても、何も思う所は無い。


だがしかし


このままでは背後から漂う甘い雰囲気で胸焼けしそうだから、ニィナと見廻組の今後についての相談でもしますかね。






つづく。

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