閑話 気付く者 その2

side:フリードリヒ・ヴァン・レオ男爵




「お父様、キャラバンシティの池田屋商会会長が結婚式をしたのはご存知ですか?」


「勿論知っているぞ」



娘のクローディアが大事な話があるからと聞いてみれば、美容品の話題で持ちきりの池田屋商会か


まったく女というのはどうしてそこまで美容品にこだわるのか理解出来ん、他家の事は知らんが我が家の妻や娘は美容品など不要だろうに



「そうですかご存知でしたか、それならゲオルグ様の御家族が結婚式に出席したのも当然ご存知の筈。にも関わらずレオ男爵家が招待されなかったのはお父様の怠慢と言う事で宜しいですか?」


「ちょっと待ちなさいクローディア。ゲオルグとは付き合いが長いのは確かだが、派閥も違うしそもそも我が家は池田屋商会と付き合いが無いのだ、結婚式に招待される筈が無かろう」


「ではお母様にも同じ説明をお願いします。池田屋商会と懇意になれるチャンスを逃したのは、お父様が池田屋商会に興味が無いせいだと、私からは伝えておきますので」



「ディアナに話をする前に私の話を聞きなさい」


「『聞きなさい』、ですって?」


「あっ、いや(汗)話をしたいので少しだけ時間を頂きたい。」


「少しだけでしたら」



ほっ


私とディアナで他の十ニ家と対等以上に渡り合えるようにクローディアを育てて来たとはいえ、眼光が怖過ぎる!


レオ男爵家の次期当主としては頼もしい限りなのだが、相手を威圧する以外の穏便な手段も教えるべきだったか(汗)



「結婚式に関しては強引に出席する手もあったが、相手が平民である以上は我々が強く出れば脅迫と捉えられてしまう。クローディアとて池田屋商会を力で従えたい訳では無かろう?」


「勿論です。私は池田屋商会と末永く仲良くしたいだけなんですから」


「ならばもう少しだけ待て。ジェミニ辺境伯と神殿が連絡を取り合っているという情報もある、何を企んでいるのか知らんが十ニ家の均衡が崩れる事は避けたい」


「ジェミニ辺境伯ですか、代替わりした頃から良い噂は聞きませんね。しかし、我がレオ男爵家の牙に貫けぬ物など存在しません!ですよねお父様♪」


「無論だ!まぁそういう訳でジェミニ辺境伯から目を離せん。池田屋の会長にはスコーピオンの娘が嫁ぐ事も決まっているから、嫁いだ後に鷹派筆頭として挨拶をするという名目で我が家に招くつもりだ。」


「あら♪十ニ家から、スコーピオン、ピスケス、アリエス、そしてレオの四家が池田屋商会に集まるなら、いっそ神殿を潰してしまっても良いのではないですか?」



「ジェミニ辺境伯の事もある、今はあまり派手に動くべきでは無い、『今は』な♪」


「お父様に考えがあるのならこれ以上の口出しは致しません。話は変わるのですけど、最近お茶会でムスカ侯爵の態度が鬱陶しいので殴って良いですか?良いですよね!」


「はぁ~、あの馬鹿か。どうしてもと言うなら全力で殴って構わんが、奴は眠れる森のエルフと仲が悪いと評判になって以降皆が避けているから焦っているのだろう。放っておいてもピスケス伯爵夫人のアストレアに潰される気もするが」


「アストレア様が潰して下さるなら私が邪魔をする事は出来ませんね。代わりとしてムスカ侯爵の腰巾着であるグリード男爵に剣の稽古を申し込んで、ボコボコにして参ります!」


「うむ、全力を出して来るのだぞ!」


「はい♪」



やはり娘の笑顔というのは良いものだな♪


妻のディアナにも笑顔になって欲しいから手頃な馬鹿を探して潰しておくか!



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