閑話 クレア
side:クレア
私は池田屋商会会長のシンさんにスカウトされて、、、で良いのかな?
私が作って売っていた『つくね串』をシンさんが気に入って、作り方を教える代わりに池田屋商会で働く事になった。
サウスビーチの商業ギルド職員であるアカリさんが言うには、池田屋商会は安心して働ける事にかけては、王国で1~2を争うほどの超優良商会だから死んでも働き続けろ!
っていうアドバイスを貰ったけど、その時の私にはその意味が全く分からなかった。
そもそもスラムで暮らしていた私には、サウスビーチの商会の事すら詳しく知らなかったんだから仕方ないよね。
でも
直ぐに池田屋商会の凄さを知る事になった。
サウスビーチにシンさんが迎えに来てくれて、キャラバンシティに向かう日の朝に待ち合わせ場所に行ったら
何故か領主様御一家と一緒に行く事になっていた。
池田屋商会は貴族とも取り引きをしている立派な商会だと言うことは聞いていたから、領主様が一緒でも普通の事なのかもしれないけれど
『王国の盾』と呼ばれている領主様と親しげに談笑しているシンさんが普通で無い事は私にだって分かる簡単な事だ。
でもここまでは『普通』に凄い人の話で、キャラバンシティに向かう為に用意されていた馬の居ない馬車?にアカリさんと一緒に乗せられて、いざ出発すると
いつの間にかキャラバンシティに到着していた。
普通はどんなに早くても5日はかかると言われている距離を、朝に出発して昼前に到着するという意味の分からない出来事に
私とアカリさんはお互いの頬を力一杯引っ張り合い、夢で無い事を確認しなければならなかった。
お陰でまだ頬が痛いけど(泣)
この時点でシンさんが普通で無い事が充分過ぎるほどに理解出来たんだけど、池田屋商会の本店と呼ばれている立派な建物に来て私は認識を改めた。
実はシンさんは国王様の隠し子とか他国の王族とかで、勉強の為にお忍びで商会をやっているのだと!
だって貴族様のお屋敷と言われた方が納得してしまうほど立派な建物が、商会の本店だと言われて誰が信じるだろう?
しかも本店の中に入ると、貴族のお嬢様と思われる人達がお茶を飲みながら、従業員と談笑している姿があちこちで見られる
もしかしてここは本当に貴族様のお屋敷で、今は『お茶会』の真最中なのでは?
「お待たせ、あなたがご主人様の連れて来た新しい従業員のクレアさんで良いの?」
「はっ、はい!よろしくお願いします!」
私に声をかけて来たのは、金の髪色で大きな耳とふさふさの尻尾がある獣人のお姉さんだった。
従業員の纏め役が来るまでここで待っててと言うとシンさんは家に帰ってしまって、どんな人が来るのか凄く不安だったけど
とても優しそうな雰囲気がある獣人さんで良かった♪
「それじゃあ自己紹介から行こうか、あたしは本店で従業員の纏め役をしている狐耳獣人のスージィーだよ。纏め役は他にミー姉さんって言う猫耳獣人が居るんだけど、夕食の時にでも紹介するね。
えっと、クレアさんにはとりあえず読み書き計算を覚えさせて欲しいってご主人様から聞いてるけど、間違い無い?」
「えっと、多分そうだと思います。成人するまでは勉強が優先だと聞いてますから」
「オッケー♪そしたらクレアさんの部屋に案内するね、今日はゆっくり休んで明日から本格的に商会の事を教えるから。そうそう、従業員なら食堂でおやつが無料で貰えるから、お腹が空いてるなら行ってみると良いよ」
「はい、後で行ってみます。」
「ここがクレアさんの部屋だよ。それじゃあごゆっくり~」
スージィーさんに案内されて部屋に来たけど、本当に私はここを使って良いんだろうか?
2段ベッドがあるから2人部屋なんだろうけど、商会の戦力にならない私はてっきり大部屋で雑魚寝だと思っていたからだ
『ガチャ』
「はぁ~、疲れたぁ~(悲)」
「アカリさん?」
「なんだ、部屋はクレアさんと相部屋なんだ、よろしくね♪」
部屋に入って来たのは池田屋商会の面接を受けにサウスビーチから一緒に来たアカリさんだった。
「よろしくお願いします。っていう事はアカリさんも池田屋商会で働けるんですか?」
「うん、働けるというか既に働かされてクタクタだけどね(笑)ねぇ、おやつ食べに行こうよ、従業員は無料だって言ってたし」
「はい♪」
◇ ◇ ◇
「「美味しい~♪」」
なっ、なんなのこの食べ物は!
アカリさんと一緒に食堂に来て『イチゴのカスタードクリームタルト』というおやつを貰って食べたんだけど
器の部分がサクッとしていて甘くてこれだけで充分過ぎるくらいなのに
イチゴと黄色いソース?が合わさると、甘くて酸っぱくてすんごい美味しい!
「ねぇ、クレアさん。このお菓子って買おうと思ったら幾らするのかな?」
「えっと、街で砂糖を使ってる甘いお菓子が売ってるのを見た事が無いので、、、」
「そうなんだよ、普通は売って無いお菓子が無料で食べられる池田屋商会ってなんなのよぉー!」
「でも、池田屋商会は安心して働ける所だってアカリさんも言ってましたよね?」
「うん、それに間違いは無いんだけど、、、まっ、安心して働けて美味しいお菓子が食べれるんなら良いか♪考えたって池田屋商会以上に好条件の職場なんて無いしね」
「私は商会の事とか仕事の事とか分からないんですけど、会長のシンさんに恩を返す為にも頑張って働きます!」
「お互いがんばろうね♪」
「はい♪」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。