第351話 母は強く優しく柔らかい存在

畑での後片付けがあると言うオリビエさんとドワーフの皆さんと別れ、1人で池田屋商会に戻って来た。



本来なら


お藤お母さんや女将さん、ミリーさんにウェンディさん、アストレア様、等々に帰って来た報告をしに行きたいんだけど


人数が多過ぎて全員の所に行くだけで日が暮れてしまうわ!



気の合う知り合いが多い事には何の不満も無いけれど、こういう時は大変だなと改めて思う


俺は元世界では人付き合いが下手だったし、今も人付き合いが上手いとは言えないけど(汗)


友達や知り合いも少ない人生だったから余計にそう思う。




「あらぁ~♪会長さんじゃないのぉ~帰って来てたんですねぇ~♪」


「えっ?!どこどこ?」「会長さんなら特別サービスしてあげちゃう♪」「きゃー!私会長さん初めて見たけど良い男じゃん♪」



あ゛っ(汗)


あと10歩で商会の中に入れるという所で、娼館とキャラバクラっぽい酒場で働いている女性達に囲まれてしまった


なんやかんやあって娼館とキャラバクラも池田屋商会が支援してしているせいで、目の前の色気ムンムンの女性達も池田屋商会の従業員みたいになっている


どうやら宴会に参加する為に来たみたいだけど、、、



「あんたら会長を狙うのは構わないけど、揉め事を起こしたら即追い出すからね」


「「「「ババア?!」」」」


「チッ!せっかくのチャンスが、、、じゃあ会長さんまたあとで♪」


「「「またねぇ~♪」」」


「あっ、はい、またあとで。」


「まったく、あんたが留守の間は静かで平和だったのに帰って来た途端にこれだから嫌になっちまうねぇ」


「助かったよベス!それにしてもババアって呼ばれてるんだな(笑)」


「老いぼれババアなのは間違い無いからね、あんたも元気そうで何よりだ」


「ベスも元気そうで良かった♪まっ、お互い馬鹿な金持ち相手にたんまり稼ぐのはこれからだから、具合が悪くなってる暇なんて無いけどな」


「当然だ!馬鹿な客には事欠かないからね、ふふっ」


「ぷぷっ」


「「ふわぁっはっはっはっはっ♪」」



ベスと悪巧み感満載の会話も久しぶりだと楽しさ倍増だよ♪




「そうそう、サウスビーチの薬師ギルドでナタリアさんって人に会ったけどベスの知り合いなんだろ?」


「あぁ、懐かしい名前だ。」


「ん?ベスの弟子だったって聞いたけど意外とあっさりした反応だな」


「あの子が元気にしてるならそれで良いんだよ」


「そっか、、、実はナタリアさんと話をした流れで俺の薬草の知識はベスに教えて貰った事になってるから話を合わせて欲しいんだけど」


「いっひっひっひっ、そいつぁ高く付くよ♪」


「分かってるって、後日ちゃんとお礼はするから今日は宴会を楽しんでくれ」


「勿論楽しませて貰うさ♪だけど、あたしもあんたの知識の豊富さには興味がある、近いうちにじっくり話したいねぇ」


「大抵は本で読んだだけなんだけど、情報交換って事でお互い相手が知りたい事を交互に話すってどうだ?」


「お礼は飲んだ事無い酒が良いねぇ♪」


「分かってるって、おまけでベスが食べた事無い料理も付けるよ」


「商談成立だ!そうと決まればこんな所でちんたらしてる場合じゃない、今日は前祝いにたんまり飲むよぉー!」




はぁ~


俺の周りに居る女性ってどうしてこんなにパワフルな人ばかりなんだろう?


ご機嫌に商会に入って行くベスの後ろ姿は、高齢者の仲間入りをしている年齢にはとても見えない


池田屋商会は圧倒的に女性従業員が多いんだけど、20~30年後には皆ベスやオリビエさんみたいにならないよな?


頼りになる従業員は大歓迎だから良いんだけど、、、


とっ、とにかく俺も頑張ろう(汗)




さてと


俺も宴会の準備を手伝いに行きますか



『ガチャ』


「ただいま~、、、スンスン♪」



商会の扉を開けると甘辛い良い匂いが充満している


この匂いはすき焼きかな?



「ごじゅじんざばぁ~、おがえりなざいまぜぇ~(泣)」



おわっ?!


猫耳獣人のミーナが涙と鼻水で顔をグショグショにしながら出迎えてくれた


出迎えは凄く嬉しいけど鼻水がね、汚いとかそういうのは全然思わないけど服がびしょびしょになるのはちょっと、、、


まあ今日は仕方ないか



「はいはい、ミーナ泣かないの、そろそろ換毛の季節だろ?今度ブラッシングしてあげるから」


「ズズー、、、はい、楽しみです♪」


「あぁ!ミー姉さんだけ良いなぁ」


「勿論スージィーも含めて全員ブラッシングするから」


「「「「「やったぁーー!!」」」」」



まったく、帰って来ただけで大騒ぎし過ぎなんだよ


こういうの嫌いじゃないけどな!



「シンさんお帰りなさい、早く近くで顔を見せてちょうだい♪」


「お藤お母さんただいま、、、やっぱり今回も?」


「勿論よ♪」



商会でお藤お母さんが俺の帰りを待っててくれたのは嬉しいんだけど、両手を広げてのウエルカムポーズは恒例のアレなんだろうなぁ


従業員の皆に温かく見守られながらなのはかなり恥ずかしいんだけど、それは今更か



「はい、どうぞ」


「ふふっ、えい!」


『ぎゅうぅぅ♪』



うん、お藤お母さんの胸の柔らかさが1番落ち着くよ


それにお藤お母さんは優しいから綺麗な花畑も見えない♪


だけど花畑が見えた方が楽なのではなかろうか?



「ぷはぁっ、はぁ、、、改めてお母さんただいま」


「はい、お帰りなさい♪シンさんもみんなも元気に帰って来てくれて嬉しいわ、それにシンさんは少し男前になったかしら?」


「ん~、分からないけど色々と経験したから?」


「子供の成長を見るのってこんなに楽しいのねぇ、出来れば次は孫の顔が見たいわ♪」


「えっと、その前に結婚しないと駄目なんだけど(汗)」


「急かすつもりは無いけれど、相手を待たせ過ぎるのは良くないと私は思うの」


「その事でお母さんに相談があるんだけど」


「あら♪可愛い我が子からの相談ならお母さん張り切っちゃう♪さあ行くわよ!」


「えっ、あのっ、後日で良いんだけど」


「駄目駄目!」



ひぃぃぃ


誰かたすけ、、、


くっ!


分かっちゃいたけどここには俺とお母さんの会話に割って入れる猛者は居ない


それは良いんだけど


お母さーん自分で歩くから引きずるのは


やーめぇーてぇー(泣)






つづく。

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