閑話 夫婦の会話

side:レヴァティ・フォン・ピスケス伯爵




朝、目を覚ますと



ッ?!


ふぅ~(汗)


あぶなかった、もう少しで声を出してしまう所だった


隣で寝ている妻の寝顔を見て、驚いて声を出す夫など即離婚されてしまうわ!



最近のアストレアは、キャラバンシティで朝食を食べてからこちらに戻って来るのが日課だったからな


久方ぶりに同じベッドで寝ていたのをすっかり失念していた。



しかし


こうしてアストレアの寝顔を見ていると、まだまだ少女のようなあどけなさが残る可愛いらしい女性なのだがなぁ


馬鹿な貴族を排除するのに、本気でドラゴンブレスを使おうと考えているのだから


私でさえ背筋が凍る思いだ(汗)



おや?


可愛い妻が起きたか



「おはようございます旦那様」


「あぁ、おはようアストレアよく眠れたかい?」


「はい、ぐっすりと♪もしかして旦那様は眠れなかったのかしら?」


「いや、よく眠れたけれどアストレアの寝顔が可愛くて、つい見とれていただけだよ」


「あら♪これからはもう少しこちらで寝るようにしますね」


「それには及ばないよ、今はシン殿達と義を深める事に専念した方が良いだろう」


「はい、旦那様の御心のままに。でも、我が家の料理人にシンさんの料理を教えるまでですから」


「以前からアストレアが計画していた事だったね、しかし我が家の料理人は頑固だからなぁ、平民の料理など作らんと思うが」


「ふふっ、そこは良いプランがありますから問題無いと思います。」


「プラン?」


「プランBです♪」



むむっ!


プランBとはいったい、、、


しかし、アストレアがあのような笑顔をする時は、詳しいことを知らぬ方が良いのかもしれない



「うむ、何やら面白い事になりそうだから楽しみにしているよ」


「ええ、任せて!」



「そうそう、シン殿は旅に出たそうだな、目的はアリエス辺境伯に会う為だとか。先代と違って現当主のステファニーはなかなかクセのある娘だが、シン殿は大丈夫だろうか?」


「心配ありませんよ、シンさんはクセのある相手の方が上手く対応出来ますから。


逆に、素直に頭を下げてくる相手には弱いでしょうね(笑)」



「ん?相手から頭を下げてくれるなら、優位に話が進められると思うが」


「シンさんは優しい人ですから頭を下げて頼まれれば邪険には出来ないのよ、そこが私も気に入ってるんですけどね♪」


「なるほど、他派閥の貴族からすればシン殿は勢いだけの小童(こわっぱ)という認識だからな、分かりやすい弱味の1つや2つある方が自然だろう


他派閥の貴族にはシン殿の事を『金の成る木』程度の認識でいて貰わねば困る」


「そうね、シンさんは神に愛された人ですから♪」


「シン殿が言うには『創造神』だったな、シン殿には益々我がピスケス領に来て貰いたいのだが


それよりも、池田屋商会が大きくなり過ぎて、シン殿にちょっかいを出す馬鹿が増えるだろうから、ここは思いきってアルテミスを呼び戻してシン殿の所に行かせてみるか?」


「あらあら♪騒ぎになりますよ(笑)」


「構わんだろう、この国もアークトゥルス伯爵も将来がいささか不安だからな」


「そこをなんとかするのが旦那様の御役目でございますよ」



「分かってはいるが、それこそ『神』の助言が欲しい所だ。


アルテミスにしても、自身の才覚で生きる道を見付ける方がいかようになろうとも納得出来るはず。それに向こうはあまり上手く行っていないのだろ?」


「政略結婚で仲の良い夫婦が居るなら見てみたいですけど、我が家の為になるのなら、あの子は喜んでシンさんの所に行くでしょうね」


「その前に、私も1度シン殿に挨拶くらいはしたいが駄目か?」


「年内には会えると思いますから、御祝いの品を用意して待っていましょう。」


「祝いと言うとシン殿が?」


「うふふ、さてどうかしら♪」


「そうか!なら立派な物にしてやらねばならんな、アルテミスがシン殿を気に入った時の為にも色々と前例を作っておかねば!」


「あらあら、気が早いですよ(笑)」


「無駄にはならんのだから良いだろう、そうと決まればアークトゥルス伯爵に会って話をしてくる!」


「手加減してあげて下さいね」


「勿論だ、シン殿より私の方が優しいという事を証明してみせる!」


「もう、シンさんに対抗意識を燃やしてもしょうがないでしょう(笑)」



アストレアには笑われてしまったが、将来義理の息子になるかもしれん相手に負けてはおれん!


義理とはいえ、父の偉大さを思い知るが良い


ふわぁっはっはっはっ♪



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る