第300話 その対価は求めていません。

「それでね、ナガクラ君の豊富な知識は何処で得たのか気になるっていうか、せめて薬草の知識だけでも教えてくれないかなぁって。ちなみに対価として払えるなるような大金は持って無いから、私みたいなおばさんで良ければ一晩くらいな」「ヤン先生」


「なっ、何かなニィナさん」


「主様は優しい御方ですので対価に関してはお気になさらず。」


「流石に対価も無しに教えて貰う訳にはいかないよ、知識は財産なんだから。払える対価が自分の身体しか無い私が言っても説得力は無いだろうけど」


「どうしてもと仰るのでしたら主様の事は記憶から消して出会わなかった事にして下さい。」


「おいおい、私は対価を払うって言ってるだけなのにどうしてそういう話になるのさ?」


「ヤン先生、対価の事はどうかお気になさらず。」


「しかしだねニィナさん」


「お・気・に・な・さ・ら・ず。」


「っ?!、、、うん!分かった、分かりました!今回は気にせず御好意に甘えます(汗)」


「御理解頂けて幸いです♪」




おーい


ニィナさんにヤン先生、こんな狭い場所で言い争いは止めてよー(泣)


ニィナも容赦なくヤン先生に素敵な笑顔を見せるんじゃありません!


ヤン先生もまだまだ若くて綺麗なんだから、おばさんなんて言っちゃ勿体無いです!


それに、この国だと対価として身体で支払うのは普通の事なのかもしれないけれど、安売りせずにもっと自分を大事にして下さいよ。


それが良い女の条件の1つなんだからさ♪




「主様、という事ですのでヤン先生に薬草の知識を教授して下さい。」


「『という事』がどういう事かはさっぱり分からないけど、俺はあくまで食材として色々な植物を知ってるだけで、その中のどれが薬草なのかは知らないんだよ


なのでヤン先生の期待には応えられそうも無いのですが」


「でもナガクラ君が梅干しって言ってた梅の実の塩漬けは知ってたよね?」


「そうですね、豆板醤もピクルスも保存食として美味しいですから売れば儲かる商品になるだろうな、という商人目線で知っていたに過ぎませんよ」


「そっ、そんなぁ~(悲)」




ヤン先生には申し訳無いけど、俺に薬草の知識は無い!


だがしかし


ヤン先生が言ってる『薬草』って、病気や怪我の治療に使う『薬』という意味ではなくて


不足している栄養素を効率よく摂取する為の『サプリメント』的な役割をする食材全般の事なのではなかろうか


本当に『薬』として使える植物も含まれてはいるのだろうけど、どちらかと言えば


鉄分が不足しているならホウレン草を食べるとか、ビタミンB1が不足しているなら豚肉を食べる、みたいな感じで『植物』に限定してないのでは?


ホウレン草も貧血を改善する『薬草』と言われればそうだし、栄養素についてはまだまだ研究中で詳しく分かってない可能性は充分にある



「ヤン先生『栄養』って言葉は知ってますか?」


「エイヨー?」



やっぱり知らないのねー


ミリーさんも栄養なんて知らなかったからもしやと思ったけど、薬師でも知らないとなるとこれから色々と面倒くさい事になる予感しかしないよ(泣)


こんな時はスキルの「店」に頼るしかない!何かないか、、、


あった!



「ヤン先生、とりあえずコレ読んで勉強して下さい。質問はその後で受け付けますから」


「本?」



俺がスキルの「店」で見付けたのは幼稚園児や小学生向けの栄養について書かれた


『えいようまんてんマン』というタイトルの絵本だ


内容としてはホウレン草を食べたら筋肉ムキムキになる水夫の話と似たような感じかな


『えいようまんてんマン』が片寄った食事をするとチカラが出なくて悪い奴を倒せないから


近所の人達が協力して食材を集めてバランスの良い食事を提供して、悪い奴等をこらしめるっていう内容だ


子供向けの絵本だけど教科書の側面もあるから『栄養』については分かりやすく楽しく詳しく書かれている



「ナガクラ君、これはもしかして秘伝書なのでは?!」


「いえ、ただの絵本ですけど」


「これを読むと私が長年疑問だった事の答えが書いてあるんだよ!どうして肉ばかり食べていては駄目なのか、どうして貴族の女性に立ちくらみをする人が多いのか


それらの答えが全部ここに書いてあるんだけど、何処かの貴族から盗み出して来た訳じゃないよね?」


「恐ろしい事を言わないで下さいよ、俺の産まれた育った所では子供にバランスの良い食事の大切さを教えるのは普通の事だっただけですから」


「そう言えばナガクラ君は外国の産まれだったっけ、それならナガクラ君の産まれた国に行けばもっと詳しい事が分かるって事じゃない?」


「あぁ~、それはちょっと無理かもです。産まれた国は小さな島国なんですけど、子供の頃に国を出たので詳しい場所は分からないんですよね、それに本当に小さな島国なので今頃はリヴァイアサンに沈められてるかも」


「なっ?!、、、しかし国が本当に沈められていたら私よりナガクラ君の方がショックだろうから、ここで私の方が悔しがる訳には、、、」



ヤン先生がブツブツ言いながら葛藤しているみたいだけど


国の話は以前お藤お母さんと一緒に考えた設定です、なので本当に申し訳ない!




「ダンナァ、そろそろお昼ご飯の時間だよぉ~」


「それじゃあ適当な場所に停めてご飯食べよう」


「あいよ~♪」




ヤン先生と話していたらあっという間に時間が経過していたようだ


本当は昼前にサウスビーチに着く予定だったんだけど、増えた1人分の重量が思いのほか影響したな


運転しているケイトの体力は問題無いみたいだけど、モーターの負担が大きかったか?


貴重なデータはきちんとメモして今後に活かさねば!


それはいったん置いといて、お昼ご飯は久し振りのアレにしよう♪






つづく。


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