第298話 1人目 その2

「ステフ様、悩みがあるなら言って下さいよ、俺達はお互いに助け合う『友』じゃないですか♪」


「ナガクラ君、、、うん!私達は『友』だもんね、まぁ今回はナガクラ君が持って来た問題だから最後まで付き合ってくれないと困るんだけどね」


「アハハ(汗)そっ、それで牡羊の宝珠は何か問題があるんですか?」


「問題というか、、、その前に何処で手に入れたか聞いて良いのかな?」


「浮島に行った時に手に入れた物です。浮島についてはアストレア様や親しい人は知ってる事ですけど、一応他言無用でお願いします。」


「浮島?!あぁ~、そう言えば前に姉様から『浮島にドラゴンは居ると思う?』って聞かれたなぁ、ドラゴンブレスの威力も知りたがってたっけ


その時はお酒飲んでたから単純に酔っぱらって冗談を言ってると思ってたけど、ナガクラ君が浮島に行ったのなら納得だよ」



おーい、アストレアさまー!


俺が浮島からドラゴンを連れて帰って来てたら、本気で馬鹿な貴族にドラゴンブレスを放つつもりだったんですね(汗)



「それで牡羊の宝珠ってどういう物なんですか?」


「がっかりするかもしれないけど、私が子供の頃に夜寝る前にお母様がよく話してくれた御伽話なんだよ、全部話すと長くなるから宝珠の所だけにするね


昔々、長く続いた争いを終わらせようと集まった12人の人族がいた、それぞれが持っていた12個の宝珠を創造神様に捧げる事で、特殊なチカラを授かり争いを終わらせた、っていう話で


そこに出て来る12人って言うのが王国十二家の初代当主達って事らしい、今となっては当時の事なんて誰も知らないし十二家のシンボルが描かれた宝珠も、子供を喜ばす為の創作だって言われてたんだけど


まさか本物が存在してたなんて驚いたよ、あはははは」



ステフ様の乾いた笑いがなんとも言えんが、やはり宝珠は12個揃うと願いが叶うとかそういうアイテムだったか


1度使うとまた集めないといけない所もよくある設定だよ。物語に出て来たら凄くワクワクするアイテムも実際に存在したら恐怖しかない


宝珠の奪い合いで血の雨が降るに決まってるんだから(汗)


そもそも宝珠は十二家の物だったみたいだし、また宝珠を手に入れたら持ち主に返して行こう。


だから『牡羊の宝珠』も持ち主に返しただけで、厄介払いなどでは絶対に無いんだ!



だけどさっきの御伽話で確認しておきたい気になるワードがあった



「ステフ様、御伽話では『創造神様』に宝珠を捧げたって言いましたよね『女神様』では無く」


「そうだけど何か気になるの?」


「今では女神像もあって『女神様』と呼んでる訳ですけど、創造神様が『女』だと根拠になったのは何だったのかなと思いまして、創造神様が光臨されたんでしょうか?」


「うーん、私が知る限り今年の夏にキャラバンシティに光臨された以外には記録としては無いと思うよ


教会に女神像があるからじゃない?」



「教会はバルゴ王国建国以前から存在していたんですか?」


「それは難しい質問だね、組織として教会が設立されたのは建国からずっと後の事で、それ以前は金を持ってる人が勝手に建てるのが普通だったらしくて記録もほとんど残って無いんだよ


ちなみに教会は神殿が管理してるから詳しい事が知りたいなら、王都の神殿に行ってみたらどうかな?」




ここで神殿が出て来るのかよ!


『神殿』『教会』『女神像』なんだかキナ臭くなって来たじゃないか


もし創造神様が光臨されたら絶対に記録に残るよな、むしろ神様をこの目で見たって周りに自慢するだろ


そういう記録が無いのにどうして創造神様を女として教会に女神像を設置したのか?


設置したのが神殿だと言う事なら怪しい匂いがプンプンして来るじゃあないか!


キャラバンシティに帰ったらミリーさんに聞いてみよう、眠れる森になら教会が設立された当時の事を直接知ってるエルフも居るかもしれん


創造神様に聞く手もあるけど、あんまり細かい事は気にしない性格っぽいから望み薄だよ(悲)


神殿の企みが単純に私腹を肥やしたいって事なら良いんだけど、国の乗っ取りだとか転覆だとかしたら面倒しかない!


まあこの数百年、神殿が表立って何かをした記録は無いっぽいから私腹を肥やしているだけの可能性が高いんだけど


今直ぐ何か起きる訳じゃないだろうし、地道に調べるしかないか。




「神殿については追々考えます。それじゃあそろそろ行きますね、短い間でしたがお世話になりました、凄く楽しかったですよ♪」


「私も楽しかったよナガクラ君♪次に会う時までに無手も訓練しておくから楽しみにしててよ!」



おーいステフ様、俺はただの商人って事を忘れてやしませんかね?


手合わせよりお互いが儲かる話をしようよー(泣)



「タノシミニシテマスネー。よし!みんな乗り込めー」


「「「「「「おー!」」」」」」



いつものように俺の収納から出したトゥクトゥク風に改造した自転車にみんなが乗り込む



「しゅっぱーつ!」


『チリンチリン♪』


「「「「「さようならー!」」」」」




ステフ様と辺境伯家で働く皆さんに見送られ


ゲオルグ・サダルスウド侯爵の待つサウスビーチに向けて俺達を乗せたトゥクトゥク自転車は軽快に走り出す♪



王国十二家から記念すべき1人目の仲間であり俺の大切な『友』


ステファニー・フォン・アリエス辺境伯


また会う日まで元気で!



「ほなまたなぁー♪」








季節は秋


天気は快晴


共に旅する仲間も居る


季節良し、天気良し、仲間良し


三方良しの旅は


いよいよ後半戦へ。






つづく。

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