第297話 1人目

「ナガクラ様、本当にもう行っちまうんですか?」


「予定が詰まってるんでゆっくりはしてられないんですよ、セルジオのとっつぁんもレシピを見て美味しい料理が作れるように頑張って下さいよ」


「ガッテン承知でさぁ!次にナガクラ様に会う時には、腰を抜かすぐれぇ旨い料理を作ってみせやすぜ!」



相変わらずノリと勢いだけは良いんだよなぁ、こういうの嫌いじゃないけどな♪



「ナガクラ様、旅の御無事を祈っております。」


「ケーニッヒさんありがとう、そしてごめんなさい。レシピのせいでこれから凄く忙しくなると思うので先に謝っておきます。」


「ナガクラ様、謝罪は不要で御座います。アリエス辺境伯領の繁栄に繋がる事ならば、どれほど忙しくなろうとも至上の喜びにございます。


ただ、、、コーヒーという黒い色の茶はとても良い香りと味で御座いました♪」


「それは良かった、コーヒーは色々な楽しみ方があるので詳細を書いて後日送りますね」


「楽しみにしております。」



ふふっ、ケーニッヒさんも意外とお茶目さんだったか


この数日で俺のやり方に慣れたらしく「コーヒーのお礼は充分にさせて頂きます。」って感じで俺に向かってウィンクをしている


普通のおじさんだったら鳥肌物だけど、ケーニッヒさんは渋いオジさんだから全然問題無い♪


優秀な執事のケーニッヒさんなら俺の求める事も正しく理解しているだろうし、過不足無いコーヒーのお礼が期待出来るだろう。


お互い平等に利益を得られるウィンウィンな関係バンザイだ♪




「おーいナガクラくーん、お待たせー!」



もう少し長引くかと思ったんだけど、意外と早くステフ様とケトゥス君が戻って来た。



「ナガクラ殿、先程は大変失礼な態度と発言をしてしまい申し訳ありませんでした。」


「謝罪は既にジュリアさんから受け取っているので俺としては既に終わった話です。なので俺に謝罪は不要です。あとはジュリアさん次第という事になるのかな?」


「・・・え゛っ?!」



ジュリアさんの名前を出した途端にケトゥス君がフリーズしてしまった。


ステフ様よりジュリアさんの方が恐いという事は無いと思うのだが


さすがに直属の部下に頭が上がらなくなると困るとか色々あるんだろうな、今回はステフ様が直接関わってるから尚更だ


これを機にしっかり反省して下さいよ♪



「隊長、そのままではナガクラ様に失礼ですよ。」


「はっ、はい(汗)」



ふふっ、今のジュリアさんはとても良い笑顔をしている、ケトゥス君は当分の間ジュリアさんの尻に敷かれるんだろうな(笑)



「ステフ様、私達はそろそろ出発しようと思いますが、その前にコレどうぞ」


「え?コレって、、、やったぁー♪」



俺がステフ様に渡したのは海上自衛隊の夏用と冬用の制服で、おまけで戦闘服も入れてある



「サイズは少し大きいかもしれませんので直してお使い下さい」


「ありがとう、凄く嬉しいけど私だけ貰ってばっかりなのは、、、」


「それなら『貸し』にしとくからいずれ倍にして返してくれれば良いよ」


「勿論そのつもりだけど、、、ナガクラ君?」


「俺達はもう『友』なんだから、あんまり細かい事は無しで行こうや!」


「うん♪大切な『友』だもんね、10倍返しにしてあげるから首を洗って待っててよね♪」


「おう!、、、ふふっ」


「ぷっ、、、」


「「あはははははは♪」」




「あぁ~、笑い過ぎて腹痛いわ(泣)ステフ様、友情の証にコレ受け取ってよ、ほいっと!」


「おっと!」



俺がステフ様に投げて渡したのは、浮島に行った時に景品で貰った『牡羊の宝珠』


珠の中に牡羊の絵が描かれている硝子っぽい素材の綺麗な珠、鑑定してみても何も分からなかった物だけど


逆にこんなに分かりやすい意味あり気なアイテムも他には無いだろう、どうせ12個集めたら何かが起こるに決まってるんだよ


だってここは『テンプレな異世界』なんだから!



創造神様ならそういうの好きだろうし絶対にやるだろ、となると何もしなくても俺の元に12個の宝珠が集まる可能性大だ!


トラブルの原因になりそうな物を自分で持ってるなんて危険過ぎる


それなら友情の証にステフ様が持っている方が良いだろう、1ヶ所に12個集まらなきゃ問題無いはず・・・


本当に大丈夫だよな?




「コレ凄く綺麗な玉だけど水晶かな、、、え?中に描かれてるのって牡羊だよね、もしかして牡羊の宝珠?!」


「そうですけど、牡羊の宝珠って有名な物なんですか?」


「有名というかなんというか、、、偽物は見た事あるけど本物が存在するのかどうかも謎だったんだけど、ナガクラ君のその反応だと本物なんだよね」


「本物なのは保障しますよ、証拠は無いですけど」


「証拠は無くても、スルッとマルッとドラゴンの髭ほども疑う余地が無いくらいに本物だって事が何故か分かってしまうんだけど


まさか本物が存在するなんて、、、」




なんとなくだけど、牡羊の宝珠もステフ様に反応してうっすら光ってるような気もする


そして


何故かステフ様が頭を抱えてしまっているのだが


俺は大切な『友』を見捨てたりは絶対にしない


たとえチート能力を使う事になろうとも、どんな悩みもズバッとスパッと綺麗に解決してみせーる!






つづく。


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