第262話 とある秋の日のアストレア様とおっさんとなんやかんや
朝、目が覚めて窓を開けると
雲ひとつ無い秋晴れで、最高に気持ちが良い♪
窓から部屋に優しく入り込んだ秋風を目一杯吸い込み、ふぅ~っと一息に吐き出し
朝陽に照らされた街並みを眺めながら秋の予定を考える
『未来への希望畑』に植えたウィスキー用の作物の収穫ももうすぐだなぁ、などとのんびり考えていると
我が家の前の道の向こうから、ピスケス伯爵家の紋を掲げたリヤカー付きの自転車の一団がやって来るのが見えた
馬に乗った護衛に囲まれたその一団は我が家の前で停車する。
アストレア様御一行の、御成ぁ~りぃ~、ってところか(笑)
元々頻繁にピスケス領とキャラバンシティを行ったり来たりしていたアストレア様だけど
俺がトゥクトゥク風に改造した電動アシスト付き自転車をプレゼントしてからは、午前中はピスケス領で仕事をして午後からキャラバンシティに来るとかは最早日常の出来事となっている
アストレア様があまりにも自転車を気に入って追加で2台売って欲しいと言われたくらいだ。
勿論無料でプレゼントしたし、ついでにバッテリー充電用に小型のソーラーパネルもおまけしといた
毎回交換用のバッテリーを用意するのが面倒だったのは内緒だけどな(笑)
そんなこんなで、最近は一緒に連れてくるメイドさんの人数と運べる荷物が増えて、アストレア様は益々ご機嫌だ♪
しかし
昨日は夕方にピスケス領に帰ったはずなのに、今朝も夜明けの開門に合わせてキャラバンシティに来るとか、恐ろしいほどのバイタリティだな(汗)
護衛の人やお付きのメイドさん達は大変だろうなぁ、完全に他人事なので同情はしないけど、原因を作ったのは俺だという自覚はある!
だからお詫びとして、朝食にカツサンドとパウンドケーキでも差し入れておこう。
アストレア様にプレゼントした自転車を見ると、荷台部分を幌馬車のように布で覆う独自のカスタムを施していてなかなか良いじゃないか!
あれは是非真似しよう。キャンプの時に張るタープを使えば軽いし雨も凌げるしで、ちょうど良いだろう
っていうか呑気に見てる場合じゃなかった、お出迎えをしなければ!
俺は未だに気持ち良さそうに寝ているみんなを起こさないように静かに部屋を出て、急いで1階に降りて行く
お藤さん、コニー、フラニーの3人は既に起きていて朝食の準備をしてくれている
「お藤さん、おはようございます。コニー、フラニーもおはよう」
「シンさんおはよう」
「「シン殿おはようございまぁ~す♪」」
「今朝はスミレちゃんと一緒じゃないの?」
「ええ、スミレはまだ寝てます。アストレア様が来られたのでお茶の準備をお願いします!俺はお出迎えに行きますので」
「それは大変、フラニーちゃんお湯沸かしてくれる?」
「はーい」
『コンコン』
おっと、もう来たか
「直ぐ開けますので少々お待ちを!、、、『ガチャ』お待たせしました」
「シン殿おはようございます。早朝から申し訳ありません、アストレア様がどうしてもと仰られましたので」
「シンさんおはよう♪」
ドアを開けるとメイドのシンシアさんとアストレア様が居たのだが
アストレア様はとても素敵な笑顔でご機嫌みたいだけれど、シンシアさんを始め護衛とメイドの皆さんは分かりやすく疲れている
これはカツサンドどパウンドケーキだけじゃ足りないだろうから、エナジードリンクも追加だ!
「アストレア様おはようございます!シンシアさんもおはようございます。こんな早朝に来られるという事は何か急用でしょうか?」
「う~ん、急用と言えば急用かしら?どうしてもシンさんの家で朝食が食べたくなって来ちゃったわ♪
夕食は何度か頂いたけれど、朝食はどんなのか気になったら眠れなくなっちゃって、これも年のせいかしらねぇ」
「そっ、そうですか。行動力があるのはまだまだ若い証拠だと思いますけど、とにかく家の中へどうぞ
護衛の皆さんも一緒に、、、と言いたいのですがさすがに全員は家に入れませんので、裏庭で良ければそこで朝食と、食後にはお茶とお菓子もお出し出来ますが」
「それじゃあここはシンさんに甘えさせて貰いましょうか、アーサー聞いていたわね?ご近所迷惑にならないように速やかに移動しなさい」
「はっ!」
今回の護衛の責任者なのだろう、アーサーと呼ばれた30代前半くらいのシュッとした金髪のイケメンが、馬と護衛の皆さんを引き連れて静かに移動していくのだが
アストレア様とシンシアさんが家の中に入った途端
一緒に来ているメイドさん達の中には声を出さずに泣いて喜んでる人も居たり、護衛の皆さんはガッツポーズをしながら俺に熱い視線を向けて来るが
男にそんな目で見られても全然嬉しくない!
皆さん相当お疲れなのね
出来るだけ話を長引かせるから、朝食くらいはたくさん食べてゆっくりして欲しい
だからそこの護衛の男共
汗臭いから感謝のハグをしようと俺に近付くんじゃねぇー(泣)
つづく。
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