第252話 合同慰霊祭
キャラバンシティの夏も折り返し地点を通過して、そろそろ終盤戦という今日この頃
『流行り病予防大作戦』のお陰か、今年はまだ流行り病(熱中症)で亡くなった人は出ておらず、とても喜ばしいんだけど
街を行き交う人々の中には冴えない表情をしている人がチラホラ見られる。
キャラバンシティ周辺の地域では毎年夏になると、故人を偲ぶ習慣があるのだが
この国は兵士か冒険者になる人の割合が多い事もあり、任務や仕事中に亡くなる人が毎年かなりの人数いる
冒険者だとソロで山に入る事も多く、その際に魔物や盗賊に襲われたり、怪我をして動けなくなり発見されずそのまま、、、って事も多々ある
そのように亡くなった人のほとんどが身寄りが無かったり、平民だと金が無いから葬式が出来ずお墓すら無いのが当たり前。
元世界で誰かが言ってたけど「葬式は生きてる人の為にする。」ってのは
大切な人が亡くなったのに葬式すら出来ない街の住人達を見てるとまさにその通りなのかなと思う。
という事で、夏のお花見大会の代わりに葬式とかその他色々をまとめて、『合同慰霊祭』をやってみる事にした。
でも俺は湿っぽいのは嫌だから夏祭りも一緒にやって、真面目に楽しいイベントにしたい!
そんなこんなで主催者として『合同慰霊祭』の開催宣言をする為に、メイン会場となっている教会横の空地にやって来ている。
メイン会場から朝市をしている中央広場まで、ウチの商会の屋台を中心に色んな屋台が出てて既にかなりの賑わいだ♪
たまにぼったくり感満載の怪しげな屋台もあるけど、ギリギリ怒られないグレーゾーンを攻めてる感じなんだよな
主催者としては取り締まるか悩むけど、まあ苦情が来たら考えよう。
祭りと言ったら提灯!
提灯1個ずつに小さいソーラーパネルとバッテリーとセンサーが付いてて、昼間に充電して日が暮れたら自動で点灯するやつをスキルの「店」から大量に購入しといた♪
慰霊祭と夏祭りの本番は日が暮れてからだから、この日の為に街の人達にも協力して貰って家の軒先とか色んな所に提灯を沢山付けたから、皆驚いてくれると良いな
「シンさーん♪こっちよーーー!」
メイン会場の脇には、ガゼル親方が夏のお花見大会用に植えたヒマワリが綺麗に咲いていて
ヒマワリの前の一等地にオリビエさんと工房の皆さんが陣取っていて、準備万端いつでも酒盛りオッケーみたいだ(笑)
「オリビエさん、親方こんにちは、本番は日が暮れてからなんですけど、もう飲むんですか?」
「おう!勿論じゃ、だから早う開催宣言をして欲しいんじゃが」
「えぇーと、正午からなんでもう少し待ってて下さいね」
「むぅ、、お前さんの宣言無しでは盛り上がらんからな、ここは我慢するとしよう。」
「ねぇシンさん、今日はニィナさんしか来ていないみたいだけど、メリルさんや他の方は来ないのかしら?」
「慰霊祭本番に向けて色々と準備があるのでそれに合わせて来る予定ですね。俺とニィナも会場を見回ったら一端帰ります。」
「あら♪なんだか分からないけど本番を楽しみにしてるわね」
「しかし、合同慰霊祭とは良う考えたな、慰霊祭など普通は王都の騎士団の為にしかせんものなんじゃが
平民の為に慰霊祭をするとは、お前さんらしいわい♪
しかもだ、花見大会と一緒に行う事で盛り上がるし、街の皆も参加しやすいのがええ!」
「喜んで貰えるなら良いんですけど、慰霊祭を俺の勝手な我儘で楽しいイベントにしちゃって、遺族の方達の気持ちを考えると悪い事したかなぁ、と思うんですよね」
「ん?そんな事を気にしとるのか、たしかにお前さんのやる事を皆が喜ぶ訳では無いじゃろう
中には腹が立って文句を言いたい奴もおるかもしれん、じゃがな、そんな奴等は無視して構わん!
そもそも、慰霊祭はお前さんが金を出して個人的にやっとるのを厚意で自由に参加出来るようにしとるだけで、ワシも含めた他の奴等は便乗して勝手に楽しんどるに過ぎん
より良くする為の意見を言うならともかく、文句など言う資格は誰にも無い」
「それにねシンさん
兵士や冒険者になった人の中には、任務や仕事中に消息が分からなくなって生死不明のままになっている人も多いの
そういう人達の家族や友人達の中には、いつか帰って来ると信じてずっと待ってる人も居るわ
大切な人がいつか帰って来ると信じて待ち続けるという選択をしたのなら、それは尊重するべきだと思う
合同慰霊祭をキッカケに、死を受け入れて生きていくという選択肢も必要だと思う、どちらの選択が正解かなんて誰にも分からない
でもね
どちらの選択肢を選んだとしても、生きていくには凄くパワーが必要だと思うの
美味しいお酒を沢山飲まなきゃパワーなんて全然出ないんだから!
その人達の為にも、この合同慰霊祭は楽しくあるべきだと思うの
だってお酒は楽しい方が沢山飲めるでしょ♪」
オリビエさん、凄く良い事を言ってたはずなのに、最後らへんドワーフにしか無理ですやん
他種族がドワーフみたいにお酒を飲んでもパワー出ませんからね!
「おい、大変じゃ!もうすぐ正午になるぞ(汗)」
「はいはい、、、それでは会場にお集まりの皆さんお待たせ致しました、ただいまより合同慰霊祭の開催を宣言します。
かんぱーい!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
つづく。
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