第247話 お食事処

さてと


制服問題も解決したところで改めて甘味屋リリーの店内を見る


ドーナツを並べる為の棚があり、トングとトレイも置かれている



店内には椅子とテーブルが置かれているから


そのまま店内で食べるか、持ち帰るかが選べるらしい、元世界にあったドーナツ店そのまんまのシステムなのには驚く


でも飲み物が水と紅茶しかないのは寂しいよな、コーヒー豆はまだ見た事無いけど何処かにあるだろ


『米』がこっちじゃ『ライス』だったみたいに、違う名前で栽培されてる可能性はあるけど、行商人にサンプルを渡せばなんとかなりそうだ



俺はケーキを食べる時はブラックコーヒーを飲むのが好きなんだけど、あの苦味は受け入れて貰えるだろうか?


とりあえずカフェオレの提供から始めてみるか。




《ドーナツメニュー》


砂糖ドーナツ


小豆餡ドーナツ


芋餡ドーナツ


カスタードクリームドーナツ




俺は表面に砂糖をまぶしただけのシンプルなドーナツを教えただけなんだけど、当たり前のように生地であんこを包んだ、アンドーナツもあるのは


ニックとスナックの成長を感じられて、ちょっと感動だな♪



そして


たい焼きは注文を受けてから焼くシステムっぽい、たい焼きは焼き立てが美味しいし焼いてる所を表通りから見えるようにして集客を狙う作戦か!




《たい焼きメニュー》


小豆餡


芋餡


カスタードクリーム


イチゴジャム


ベーコン&チーズ





とりあえず、ドーナツもたい焼きも無難なメニューで良かったよ、でも内容がほぼ同じなのは少し気になる


まあ同じ小豆餡でも、和菓子と洋菓子で食べ比べて違いを楽しんで貰えれば、相乗効果で売り上げがアップするかもしれんけど


それを狙ってやってるのなら特別ボーナスもんだよ♪



「せっかく来たんだし、みんなでたい焼き食べて帰ろうか。まずは小豆餡食べたいひと~」


「「「「「「「「は~い」」」」」」」」



全員やな、一応他のも聞いとくか



「芋餡のひと~」


「「「「「「「「は~い」」」」」」」」



むむむ、この流れは嫌な予感がする(汗)



「カスタードクリームのひと」


「「「「「「「「は~い」」」」」」」」


「待て待てーい!全員全種類食べる気じゃないだろうな?」


「でもダンナァ、全種類食べたいじゃんかぁ~、ブーブー!」


「ブーブー言っても駄目、ケイトは良いけどスミレは全種類食べたら晩御飯食べられなくなっちゃうから1個だけにしとこうな」


「、、、うん」



ぐはぁっ!!


スミレが凄く悲しそうな顔をしてしまった、しかし全種類はどう考えても食べ過ぎだ



「会長、たい焼きだけじゃなくてドーナツも食べて下さいよぉ、頑張って練習したんですからぁ~!」


「はいはい、分かったから、表面に砂糖をまぶしただけのシンプルな『砂糖ドーナツ』と『小豆餡』のたい焼きを人数分頼むよ。他の種類は後日ちゃんと食べるから」



「それじゃあ、おにいちゃん次はこっち来て♪」


「あの、メリルさん?今からドーナツ食べるんだけど」


「ちゃんと食べられるから心配しないで、とにかくこっちこっち」


「おっ、おう」



何故かメリルに腕を引かれて店の外に出る、壁沿いにぐるっと甘味屋の裏側へ、するとそこには真新しい建物があり


スージィーがたこ焼きを焼いているじゃないか!さっきまで甘味屋に居たよな?


何この店?!



よく見れば店構えも甘味屋にそっくりだし、店名も『お食事処リリー』だし


ここも池田屋商会が経営してんのか?



「ふふふ、どうやら驚いてくれたみたいね♪」


「やったねオリビエさん♪」



俺が驚き戸惑い、スージィーにどういう事だと目で訴えている間に、メリルはオリビエさんとハイタッチを交わしていた


2人ともめっちゃ楽しそうやからええねんけど、オリビエさんがここに居るって事は、この店がメリルが責任者になってる飲食店だろう



そしてお食事処と甘味屋は中で繋がってるっぽい


最初からこっちでたこ焼きを焼いてたスージィーを、アンさんが呼び出してまた戻ったって事か



それにしても袖をまくって腕を出しながらたこ焼きを焼く、ギャルっぽい見た目のスージィーはとても男前だな


ギャルって、たこ焼きとか焼きそばを焼くのが上手いイメージがある、元世界の夏祭りの屋台も、いかつい顔のおっさんが金魚すくいとか射的を担当してて


バイトのギャルが鉄板で焼きそばを焼いてるイメージなんだよな(笑)



「改めてシンさんいらっしゃい、驚かせたくて秘密にしてたんだけど上手くいって良かったわ♪」


「そりゃあ驚きますよ、まさか甘味屋と繋げるとは予想外でした」


「その方が色々と手間が省けるでしょ?それにアストレア様が来られた時には甘味も欲しいから、ちょうど良いのよ


これからは、ここで会合を開く事もあるからよろしくね♪」


「あっ、はい了解です。」




後日


メリルから『お食事処リリー』に関する書類を見せられた


それによると営業は昼前から日暮れまでで、日が暮れてからは毎日ドワーフが貸し切る契約になっていた


そこは問題無い、元々はオリビエさんが美味しい料理をいつでも自由に食べられるようにって言い出した飲食店だから


問題なのはドワーフが店を貸し切る為の契約金だ。1年契約で元世界だとなかなかの豪邸が買える額が書いてあるんだけど、、、



とは言え、とは言えですよ(汗)


ドワーフって石壁作りが得意だし、街を拡張したり、川に橋を掛けたり、国とか領主から公共事業的な仕事も請け負ってるらしいから金は持ってるんだろう


個人じゃなく、あくまでドワーフ族としてだろうけど


そのような金を店を貸し切る為に使って良いのだろうか?



とりあえずこの契約書は机の引き出しにそっと仕舞って、ドワーフの為に酒に合う料理でも考えよう。






つづく。

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