第222話 『雨』それはおっさん達の希望の光

「それでは皆さん、かんぱい♪」


「「「「かんぱーい♪」」」」



『ザーーーーーーーーーーーー』



昨日ブドウの収穫も無事に終わり、今日から雨季に突入したキャラバンシティは絶賛ドシャ降り中で、街全体が休日モードになっている


雨の中で出来る仕事は極端に少ないし行商人もやって来ない


街に居る商人達も商品を雨に塗らしたくないから雨季の間は仕事を休む


結果として雨の中を出歩いても何もやる事が無く無駄に腹が減るだけなので、キャラバンシティはさながらゴーストタウンと化している。


特に貧困層の人達には地獄の10日間なのだとか。


雨季が終わるまでは仕事が無いからほぼ食事せず我慢するしかなく、野宿してる人達にとって雨の大変さは言わずもがなだろう。


一応雨季の間だけ料金後払いでテントの貸し出しをしているけど、残念ながら利用者は少ない


そんなこんなで


これが毎年の恒例行事になってるって言うんだから、雨季の間の経済損失を考えたら為政者は頭を抱える所なんだろうな


だがしかし


我が池田屋商会は雨季なんて関係無く忙しい!


天気に関係無く牛の乳搾りは毎日やるから、乳製品部門は変わらず忙しいし


こども園の屋台はさすがに休みだけど、その分保存食を作ったりコサージュやお洒落小物作りに人をまわして


日頃の品薄状態解消と在庫作りに励んでいる。



ニック、スナック、アンさんなんかは雨なんてものともせず、今日も元気にクレープ販売に出掛けて行った


一応雨避けのテントを建ててクレープを販売するらしいけど、売れるのだろうか?


まあ無理せず頑張って欲しい。



そんな感じで今は雨季真っ只中だけど


キャラバンシティを代表するおっさん達からの熱い要望に応えて、俺は趣味の屋台を出している(笑)


目の前のカウンターに座っている1人目のおっさんは、俺の屋台の常連でもある門兵のロブさん


酒にはあまり強く無いのか、久しぶりの酒だからなのか、最初のかんぱいのビールを飲んだだけでほろ酔いになっているけど


俺に浮島の存在を教えてくれた気の良いおっさんだ♪



2人目のおっさんは、優秀だけど面倒くさい男のアル


アルは年齢も見た目も『おっさん』ってイメージでは無いけど、俺の屋台の常連はもれなくおっさんになるルールだ(笑)


初めて会った時のアルのイメージは、仕事が大好きな仕事馬鹿だと思ってたんだけど、一緒に仕事をしてみるとプライベートもキッチリ楽しむ奴だった


だからこそ、趣味でやってる俺の屋台を凄く楽しみにしているし


日頃から個人的に資金と人手を出すから、毎日営業してくれってわりとうるさく言って来るんだけど


そうすると趣味では無くなるから断っている、だからなのか今日のアルはニコニコしながら静かに酒を飲んでいる


面倒くさい事を言わなければ良い奴なんだよぁ(笑)



3人目のおっさんは新メンバーのジャックおじいちゃん


おじいちゃんなのに『おっさん』の仲間入りをしている異例の存在だけど、見た目は充分おっさんだから問題無い


ジャックおじいちゃんはドワーフの里の長老で凄く偉いドワーフなんだけど、スミレと一緒に居ると顔の筋肉がゆるんで、急に普通のおじいちゃんになるのはご愛敬♪



4人目、最後のおっさんはガゼル親方。


奥さんのオリビエさんを愛していて仲も凄く良い♪


でも、完全にオリビエさんの尻に敷かれているのが見ていてなんとも言えない気持ちになるんだけど


その事をガゼル親方は全く気にしていないし、むしろ胸を張って堂々とオリビエさんの尻に敷かれている


男としての器の違いを魅せてくれる、尊敬すべき素晴らしいおっさんだ!



目の前に居る愉快なおっさん達と定期的に集まって酒を飲むのが、俺の新しい楽しみになっている。



「シャクシャクシャク、なぁお前さん、きゅうりの漬け物も旨いがツマミがこれだけって事は無いんじゃろ?見た所おでんは無いようじゃが」


「そうですね、今日は新作料理を食べて貰おうと思いまして」



ガゼル親方の言うように今日はおでんは無い、そろそろ他の料理を出したいのもあるけど


おでんの具材になっていない野菜農家から池田屋商会に苦情が来たからだ


おでんの具材になってるのと、そうでない野菜とでは需要が全く違うんだとか。



そんな文句言われても知らんがな!


って感じなんだけど


ほっといて不満を溜め込まれるのも色々と問題になりそうだから、今日は特にしつこく文句を言って来る、ナスとネギ農家の為に色々と料理を作ってみた


ナスとネギも勿論おでんに入れて良いんだけど、既におでんの具といえばコレっていうのが固まっちゃって、新しい具材を入れても『アレンジおでん』としか見なされない


まあそのうち、各地で特色を出したご当地おでんが作られるのも時間の問題だろうから、それまでの辛抱かな



今日作ったナスとネギ料理は


焼きナス、ナスの煮浸し、豚肉とナスのしょうが焼き


お好み焼風のネギ焼き、焼き鳥のネギマ串、刻みネギたっぷりの冷奴、ナスとネギのピザ


簡単に作れる料理はこれくらいしか思い付かなかった



さあさあ!


おっさん達の楽しい時間はこれからだ(笑)






つづく。

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