第209話 レサト・グラフィアス

開けたままにした商会の扉から馬車が止まるのが見えた。


だけど公爵家のお嬢様が乗ってるわりには護衛が少ないような気がする


それにスコーピオン公爵家の紋の他にも見覚えのある紋が描かれていて、俺はあの紋を何処かで見たような気がするんだけど、、、



商会の前に止まった馬車から最初に護衛らしき男が出て来た。商会の出入り口を警備している見廻組を見て警戒しているようだ


隣に居るニィナをそっと見るけど全く反応無し


見廻組で充分対応可能か


まあニィナが反応するのはAランク以上の冒険者とか、ケイトと同等以上の実力を持った奴だろうからそんな奴がゴロゴロ居たら困る!


ニィナが鍛えた見廻組は、個々の戦闘力はギリギリBランク冒険者程度らしいけど、集団で相手を制圧する戦法だから、Aランク冒険者でも2~3人ならどうにか出来る


そもそも鍛えたからって短期間で全員Bランク冒険者相当の実力になるって、どんな鍛え方しとんねん!


池田屋商会の防衛能力が上がって嬉しいけども




さて、護衛に続いて馬車から下りて来たのは30歳くらいの男


あの男、何処かで会ったような、、、


俺が誰だったか思い出そうとしている間に、男は護衛と共に商会の扉をくぐり俺の前にやって来た



「おおっ!シン殿、やはり貴方だったか久し振りだな」


「あっ?!思い出した、あなたはグラフィアス商会の、、、えぇーと名前聞いてませんでしたね(汗)」


「あはははは、あの時は名乗らせて貰えずシン殿達は行ってしまわれたからな」


「あの時は急いでいましたので失礼致しました。改めて、私が池田屋商会会長のシン・ナガクラと申します。」


「今度はこちらもきちんと名乗らせて貰うよ、私はグラフィアス商会会長のレサト・グラフィアスです。まあシン殿と会った時はまだ会長では無かったのですがね(笑)」




俺とグラフィアス商会の出会いは


昨年サウスビーチに行った帰り道で偶然遭遇したケイトの闇の元凶、ラウール・サグェが護衛していた商会だ


あの時は色々迷惑をかけてしまったので、キャラバンシティに来たらお互い利になる商売の話でもしようと言って別れたんだよな



「レサト殿、つかぬ事をお聞きしますが、馬車にスコーピオン公爵家の紋があるということは、レサト殿は公爵家の方なのでしょうか?」


「いやいや、ただの御用商会だよ。ペトルーシュカ様が池田屋商会の会長とお見合いをすると聞いて、シン殿の事を思い出してね


ペトルーシュカ様の荷運び役として同行させて貰ったんだ。」


「そうなのですね、私は商会の会長をやってはいますが商人としては若輩者、未だ勉強中の身ですから以前お会いした時もグラフィアス商会がスコーピオン公爵家の御用商会とは知らず、失礼な対応をしてしまい申し訳ありませんでした。」



「気にしないでくれ、御用商会と言っても公爵領の周辺でしか知られていないのだから


それに引き替え池田屋商会は今や王国中に名が知れ渡るほどの大商会ですからな、以前した約束もあるし商売の取引が出来れば公爵領にとっては莫大な利になると思って来たのですよ♪」


「あの時はグラフィアス商会が公爵家の御用商会とは知りませんでしたから、レサト殿が欲しがるような物があると良いのですが」


「ははは、欲しい物なら幾らでもあるよ、まずシン殿や従業員が着ている服だな、こんなデザインの服は見た事が無い


商会の警備をしている者達もそうだ、全員かなりの実力者なのだろう?それもあれほどの数を揃えるとは恐れ入ったよ。


私の護衛が1対1でなんとか勝てるかどうかの相手ばかりだと嘆いていたからね(笑)」


「そっ、そうですか、ハハハ(汗)」



レサト殿の隣で顔色を悪くしてばつが悪そうにしている護衛さん、なんか申し訳ない。



「おっと、大事な話を忘れていたよ、ペトルーシュカ様なのだがいったん宿に入って、身なりを整えてからこちらに来られるそうだ


少しばかり時間がかかると思う、それまでゆっくり話せないだろうか?」


「喜んで♪おーいアル、ペトルーシュカお嬢様が来られるまでここを任せて良いか?」


「かしこまりました。」




むむむ、何故かアルがニヤニヤして俺を見ているのだが、こんな時まで面倒くささを発揮しないで欲しい



「アル、何か問題か?」


「いえいえ、シンさんがグラフィアス商会の会長とお知り合いだったとは、人脈までも私の想像の斜め上を行く事に喜びが溢れてしまいました♪」


「レサト殿とは本当に偶然知り合っただけだよ」


「ふふふ、私はシンさんが言う偶然にとても興味をそそられるのですよ、偶然だけで大商会の会長にまでなったシンさんの隅々までね♪


レサト殿との事は是非後で詳しく教えて頂きたいですねぇ♪」



「はいはい、後でちゃんと教えてやるからここは頼んだぞ」


「かしこまりました♪」



はぁ~、最近は忙しくてアルに会う機会も減ってたんだけど、その分面倒くささがパワーアップしている気がするよ(悲)




「レサト殿お待たせしました、私の部屋に参りましょう。」


「シン殿、あの御方はサダルスウド侯爵領の領都、サウスビーチの商業ギルドマスター、アルヴェロヴェール様に見えるのですが、、、」


「ええ、仰る通りです。もしかして知り合いでしたか?良ければ同席させますけど」


「おっ、お気持ちだけで結構です!アルヴェロヴェール様に私ごときの為に、お時間を頂くなどと失礼な事は出来ません!」


「いやいや、商業ギルドのマスターだった頃ならいざ知らず、今はマスターでは無いんですから、そこまで遠慮しなくても良いと思いますよ」


「むむむ、シン殿のその反応からするとご存知無い?それも仕方無いのか、この街はミリアリア様が居るし、南部地方とは管轄が違うし、、、」





レサト殿がなにやらブツブツ言い出したのだけど、優秀だけど面倒くさい男のアルは実は凄い奴だったのではなかろうか?


優秀だから凄いのは当然なんだけど、、、



そこはかとなく


面倒くさい予感がするぅーー(泣)






つづく。

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