第173話 ウィスキー試飲会
「「「かんぱい」」」
くぅーー!
やっぱ俺にはストレートのウィスキーはちとキツイ、それにアルコール臭も強いから余計にキツイ
オリビエさんはドワーフだから普通に飲んでるのは当然として、ニィナも普通に飲んでるんだよな
ここには、俺とニィナとオリビエさんの3人しか居ない
ひっそりと地下室に集い酒を酌み交わすなんて、どっかの秘密結社みたいで格好良いな♪
今俺達3人が居るのは、ドワーフに販売するビールを保管していたり
ワインやウィスキーを熟成させる為に作った製麺所の地下室、その隅にある8畳程の小部屋だ
ここには酒の試作品や麹菌、レンネット、青カビ等が置いてあり、主に菌の研究室として使っている
特にチーズ作りに欠かせないレンネットはいくらあっても足りないくらいだから、素人だけどなんとか増やそうと試行錯誤の最中だ
幸いな事に必要な機材はスキルの「店」で調達出来たし、っていうかそもそもレンネットもスキルの「店」に売ってたから、今はそれを使ってチーズを作ってるんだけどな(笑)
とにかくレンネットが無いと他の場所で色んな種類のチーズが作れないから普及出来ない
レンネットは子牛の胃袋から取れるらしいんだけど、それだと大量の子牛が必要だから、最悪の場合この国から子牛が消えてしまいかねないので
代替品として微生物レンネットという物を研究中だ
カビから生成されるレンネットで、タンク培養で大量生産が可能らしいが・・・
とりあえず素人には難易度が高い事は理解した!
そういうのを勉強した転生者を探した方が早い気がするけど、まあ今すぐ必要な訳ではないし、この国にも専門家が居るかもしれんしな
気長に行こう!
そして、何故この地下室で俺達3人だけでウィスキーを飲んでいるかというと
それは約5ヶ月前に仕込んだウィスキーが今どうなっているのか確認する為だ。
蒸留装置を使ってみたい!という理由だけで、酒場のエールを蒸留して造ったなんちゃってウィスキー
俺の個人的な趣味で造ったから量も少なく、熟成してる間に蒸発して更に量が減った為、試飲はこの3人だけになった
試飲してみての感想は、まだ7ヶ月ほど熟成させる事を踏まえれば、悪くは無いと思う
まだまだアルコール臭が強いし美味しくは無い、使ってる樽も新品だから香りも微妙だけど、将来の可能性を感じさせてくれるには充分だと思う
「オリビエさんはこのウィスキーどう思いますか?まだ熟成途中でウィスキーと呼ぶには程遠い味ですけど」
「確かにウィスキーと呼ぶにはまだ早過ぎるけれど、この時点で既にドワーフの火酒を越えているのは確かね」
えぇー?!
マジかよ、火酒ってこのなんちゃってウィスキー以下の味なのか、ちょっとだけ火酒を楽しみにしてたからショックだなぁ(悲)
「オリビエさんの言う通りウィスキーとしてはまだまだですが、このガツンと来る飲み応えは好きな人も居るのではないでしょうか?」
「ウチの旦那なら喜びそうね、里のドワーフにも好きそうなのが居るから、このまま売り出しても良いくらいよ」
「流石にそれは、、、納得のいかない酒を売るのは商人として許されませんので」
「ふふふ、目先の儲けに飛び付かないシンさんのそういう所が、私達ドワーフを引き付けるのよ♪
それにこのまま売ってしまうと美味しいウィスキーが造れなくなってしまうもの、そんな事は私が絶対にさせないわ!」
良かったー!
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけど、このまま売った方が楽に儲かるのになぁ、って思ってたよ(笑)
「シンさん、聞いて良いのか分からないけれど、この部屋には気になる物が沢山あって興味がそそられるのだけど」
オリビエさんの言う通り、この部屋には酒と菌以外にも色々と試している事がある
イカの塩辛と生ハムもそのひとつだ、生ハムは天井から吊るしてるから気になるだろうな(笑)
両方熟成の必要があるから、この部屋でほぼ放置してるだけだが、順調?だと思う
次が電気
製麺所の屋上にソーラーパネルを設置してバッテリーを充電、そこからこの部屋の灯りを付けている
現状では他に電気を使う事はあまり無いけど、あっても困らないからな
色々とオーバーテクノロジーな物が散乱してるけど、魔道具と言い張れば大丈夫なはず!
でもここはイカの塩辛を試食してお茶を濁そう♪
仕込んでいた数種類の果実酒もちょうど飲み頃だしな
「オリビエさん、とりあえず試作中の塩辛っていう酒に合う料理食べませんか?試飲したい果実酒もある事ですし」
「そう言われては飲まない訳にはいかないわね♪」
「「「かんぱい♪」」」
昼からこっそり集まって酒を飲むとか駄目人間まっしぐらな気がするけど
これは仕事も兼ねてる試飲だから問題無い!
これはお酒を飲む立派なお仕事なのです。
つづく。
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