第172話 今は春べと咲くやもふもふ
「ん~、、、にゅ~、、、、、ん~、、、ん~、、、」
俺は今、我が家のリビングで自分の尻尾を追いかけながらその場でくるくるまわるスミレを見ている
テレビ番組のおもしろ動物映像で1回は必ず流れる、犬が自分の尻尾を追いかけるやつだ
しかし、あれって自分の尻尾を追いかけて遊んでるんだよな?その場でくるくるまわるスミレは全然楽しく無さそうだ
右にくるくる、左にくるくるしながら唸ってるし
「スミレー、くるくるまわってどうした?」
「ご主人さま、、、尻尾、、、変(泣)」
あぁ、スミレが涙目になってしまった!
何だろう、ダニか?
それは無いか、スミレは毎日お風呂に入ってるし。虫に刺されて痒いのか?
「スミレ、尻尾触ってええか?」
「うん」
うーむ、見た感じいつものもふもふ尻尾なんだけどな
あっ?!
スミレの尻尾から毛がごっそり抜けてしまった
マジかよ、ストレスが原因か?
病気じゃ無いよな、どうしよう(汗)
「スミレにダンナァ、何して遊んでるのぉ?」
「ケイト!良いところに来た、スミレの尻尾の毛が抜けちゃって、獣人の身体に詳しい奴知らないか?」
「毛が?どれどれ、、、ダンナこりゃ換毛だね」
「カンモウ?何だそれは?病気じゃ無いんだよな!」
「ダッ、ダンナ?!近い、顔が近いよ、大丈夫だから、獣人は春になったら冬毛が抜けて夏毛になるんだよ、最近温かくなったからね
それにスミレはまだ幼いから初めての換毛なんじゃない?」
「そうなのスミレ?」
「んー、分かんない」
あぁー、スミレの耳がぺしょんとしちゃったよ
「スミレ大丈夫やから、初めては皆分からんもんやから(汗)」
とりあえず抜け毛をなんとかしなければ、通販番組で動物の抜け毛専用のブラシを見た事あるから、スキルの「店」にもあると思うんだよな
あったあった、『ペットの抜け毛にお困りの方の強い味方、毛と~るブラシR』商品名が少し気になるけど今はどうでもいい
ポチっとな
よし!
「スミレこっちおいで」
「うん」
このブラシで尻尾を優しく撫でるようにブラッシング『サッ、サッ、サッ』っと
おおっ!
ごっそり毛がくっついて来たよ
「スミレどうや?」
スミレが尻尾をブンブン振って確かめてる
「うん、大丈夫!ありがとうご主人さま~♪」
ほっ
たいした事じゃなくて良かったぜ、あとでカスミのうさぎ耳もブラッシングしてあげよう
でもなぁ、夏毛になってスミレのもふもふ尻尾が随分とスマートになってしまった
毛が短くなって新触感のもふもふを楽しめるからこれはこれで良いか♪スマートなもふもふ尻尾で
スマもふ尻尾だな♪
ーーーーーーーーーーーーー
「おーい、ミーナ居るか~?」
「にゃ?!ご主人様いらっしゃいませ、どうかされましたか?」
スミレの抜け毛問題を解決した俺はそのまま商会の本店にやって来た
ウチの商会は獣人も沢山働いていて、スミレと同じ犬耳獣人も居るから換毛とやらで大変かなと思いブラシの差し入れに来たんだ
「春になると獣人は冬毛から夏毛に変わるって聞いて、皆はどうなのかなと思ってさ」
「はい、確かに最近温かくにゃって来ましたから、抜け毛は多いです。」
「やっぱそうか、実はさっきスミレが初めての換毛だったみたいでさ、獣人って大変なんだな」
「にゃるほど、スミレさんは毛が多いですから獣人の中でも抜け毛が多いんだと思います。ここだとマックスが抜け毛が多くて手入れが大変だと言ってました」
「へぇー、それでさ抜け毛用のブラシ持って来たからブラッシングしてあげるよ」
「え?!ご主人様にブラッシングをして頂けるのですか?」
「おう、遠慮は要らないよ、ブラシの使い心地も聞きたいからさ、後ろ向いて尻尾出してくれ」
「はい♪でっ、では宜しくお願い致します。」
「任せろ」
おぉ!
ミーナの尻尾は太くてしっかりしてるんだな、毛も短いし猫というより虎っぽいか?
「んにゃ?!」
「ごめん、痛かったか?」
「いえ、大丈夫です。」
「そうか、じゃあブラッシングするぞ、サッ、サッ、サッ、と」
「ごろごろごろ♪ごろごろごろごろごろ♪」
なんかミーナがごろごろ言ってるけど、猫って顎の下とか喉を撫でられるとごろごろ言うんじゃなかったか?
まあミーナは猫では無いし、ブラッシングが気持ち良いって事なんだろう
「ごろごろごろごろ♪ごろごろごろごろごろごろごろごろ♪」
「ミー姉さ~ん、お昼一緒に食べよう、、、あっ!ご主人様じゃん♪こんにちは、ニィナ様もこんにちは、っていうか姉さんブラッシングしてもらってて、それってマジ最高じゃん♪」
俺がミーナをブラッシングしている所に来て羨ましそうにしているのは、本店で働いているキツネ耳獣人のスージィー
金髪でルーズソックスが似合いそうな、ひと昔前のギャルっぽい子だ、良い子なんだけど
おっさんはギャル恐怖症だからちょっと苦手なんだよな(汗)
そういえば他の従業員も集まって来ちゃったよ、しかも気になるのが少し離れた所で犬耳獣人のマックスが、もじもじしてこっちを見ているのだが
マックスもブラッシングして欲しいんだろうか?
本店の従業員とは仕事以外であまりコミュニケーションをとってないんだよな、花見では一緒に酒を飲んだりもしたけど、それぐらいだもんなぁ
「スージィー、マックス、ブラッシングしてあげるからこっちおいで」
「やったぁ♪ヤバイわ、ウチのご主人様素敵過ぎじゃね♪」
スージィーは素直に喜んでるけどマックスは遠慮してるのかな?
だがマックスよ、尻尾がブンブン振れてて喜んでるのがバレバレだぞ(笑)
「マックス早くこっちに来いよ」
「そうだよマックス、あんた抜け毛が大変だって言ってたじゃん、遠慮してたらマジ後悔するって」
「はい♪」
嬉しそうだなマックス
だがしかし
俺は男にブラッシングしてやる趣味は無い!んだけどマックスは10歳だからギリギリ男の子という事にしといてやろう
そんな俺達のやり取りを人族の従業員達は微笑ましく見ているけれど
たまにはこんな日も必要だろう
つづく。
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