第169話 畑に苗を植えよう♪

「オリビエさんもういいんですかね?」


「ええ、あとはシンさんのタイミングで構わないわよ」


「それじゃあ行きます。さーいーしょーの、いっぽーん!」




「「「「「ウォーーー!!」」」」」


「「「「「ウォ!ウォ!ウォ!ウォ!」」」」」


『ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!』


「「「「「ウォ!ウォ!ウォ!ウォ!」」」」」


『ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!』



おおっ!


掛け声と共に足を踏み鳴らすのがドワーフ流の盛り上がり方か!



今日はドワーフ達にとって待ちに待った、ワイン用の畑にブドウの苗を植える日だ


何故か最初の1本を俺が植えなきゃいけない事になってたけど、盛り上がってるからまあいいや



冬の終わり頃にドワーフが次々やって来たと思ったら、キャラバンシティの拡張予定の土地にあっという間に家を建ててしまった


同時に街の石壁作りも開始され既に半分ほど壁が出来ている、そして畑の2割ほどを壁の内側に、残りの8割を壁の外側に作る予定らしいんだけど


目の前に広がる畑はめちゃめちゃ広いんだけど、これで2割なの?


サッカースタジアムが何個も入る大きさだけど、本当にこれで良いの?


俺は指示されるままに苗を用意しただけで、一切手伝わなくて良いって言われてるけど


更にウィスキー用の大麦畑も作る予定だし


これはあれやな、本気で考えたらあかんやつや(汗)



とりあえず苗植えの続きだな、俺に割り当てられたのは学校の25メートルプール1個分くらいの広さだ


我が家のみんなも居るしこれくらいならなんとかなりそうだ



しかし


周りを見渡すと凄い数のドワーフだな、改めて見てみるとこの世界のドワーフってのは人族と比べて多少小柄って事以外はあんまり違いは無いように見える


男性はもれなく物凄い筋肉をしてはいるけど、女性は普通の体型が多い


筋肉ムッキムキの女性も数人居たけれど、ぽっちゃりさんや、モデル体型の女性も居てますます人族との見分けが難しい


そんな筋肉ムキムキのおっさん達が、横1列に並んで迅速かつ丁寧に苗を植えてる姿ってのは、なかなかにシュールだ



「それじゃあ、俺達も頑張って苗を植えよう!」


「「「「「「おー!」」」」」」




ーーーーーーーーーーーー



畑に苗も植え終わり、現在はウチの従業員達が夕食の準備中。


バーベキューにしたから幾つかのグループに別れて好きに焼いて食べて貰うようにした、ドワーフなんだから当然酒も必要だろうと思ったんだけど


何故かオリビエさんに酒を出すのは少し待って欲しいと言われてしまった。


ドワーフが酒を飲まないとか、今日で世界が滅亡するのだろうか?



今は世界の滅亡よりも


腰が痛い(泣)



慣れない畑作業をすると腰の負担が凄まじいわ、マジで農家さんには感謝だよ


とりあえず自分に回復魔法を使って腰を癒そう。


ありがとう回復魔法、ありがとう創造神様♪



「あら?シンさんは畑作業が苦手だったの?」


「苦手と言いますか、趣味程度の小さい畑でしか作業した事無いんですよね」


「ワハハハハ!そうかそうか、意外とお前さんにも苦手なもんが多くて安心したぞ!


お前さんは何でも出来ちまうイメージだったからな(笑)


だが、畑作業などビールを美味しく飲む為の準備運動だと思えばなんて事はないじゃろ!


ガハハハハハハハ♪」




ははは、相変わらず考え方が酒中心なんだよなぁ、仕事終わりの1杯が最高なのは同意するけど




『ドタドタドタドタ!』


「ガゼル!オリビエ!こんな所におったんか!わざわざ来てやったというのに、そんなヒョロッちい人族と話しとる場合か!」



なになになに?!


急にドタドタ走って来たスキンヘッドで髭もじゃのおっさん?おじいちゃん?


ある程度年をとったドワーフの違いが俺には分からないんだけど


とても貫禄のあるドワーフがやって来て偉そうな態度でこちらを睨んでいる(汗)



「いいえ長老、シンさんと話をする事は我々ドワーフにとって最優先であり最重要事項です。それを邪魔する事は長老であっても許しません。」


「オリビエ、ワシはお前達の為を思って仕方なく来てやったんだぞ!ドワーフの火酒より旨い酒を造るなど、人族がオリハルコンを加工するより難しい事だというのにだ!」


「私は1度も長老に来て欲しいと言った覚えはありませんが」


「里のドワーフ達を引き抜いたお前達に、他の長老達が怒って二度と火酒は売らんと言うておったのを、ワシが説得してあの場を収めてやったというのに」


「お言葉ですけど、火酒は不要だとはっきりと申し上げたはずですよ。」


「ワシらドワーフにとって火酒がどれほど大事かはお前達も承知のはず、それでも不要と申すか?」


「ええ、あんな古代の遺物は要りません!」


「ふん!ヒヨッ子が生意気を言いよる、火酒を造る苦労も知らんくせに」


「言いましたね?本当に美味しいお酒を造るのが、どれほど苦労するのか知ろうともしない、クソジジイが!」


「なんじゃと?!小娘が調子に乗りおって!!」


「一騎討ちです!クソジジイ、貴方に一騎討ちを申し込みます!」


「っ?!、、、面白い!して方法は?」


「ここに居るシンさんが出すお酒を、ジジイが飲んで美味しいと認めれば私の勝ち!不味ければジジイの勝ち!返答は如何に」


「承知した!何を賭ける?」


「ジジイが勝てば、私達は里に帰ります。その後は煮るなり焼くなりご自由に!私が勝てばシンさんに謝罪を要求します!」


「相分かった!」





「という事でシンさん、あのクソジジイと一騎討ち頑張ってね♪」



なっ?!


なんじゃそりゃーーーー!!






つづく。

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