第168話 風呂上がりのひととき

『シュポッ、トクトクトクトク』


「女将さん、どうぞ」


「ふふっ、これが噂のビールってやつかい、楽しみにしてたんだよ♪それじゃあ」


「「「かんぱい♪」」」


「んぐんぐんぐ、ぷはぁーー♪こいつは最高だね♪」




女将さんは大ジョッキに注いだビールを一気に飲み干し、ご満悦だ♪


何気に女将さんはビールを飲むのが今日が初めてなんだよな


女将さんとお酒飲む時はなんとなくワインばかりだったから仕方無い


勿論以前からビールの存在は教えてたんだけど、酒場のエールのイメージがあって飲みたいと思わなかったらしい


風呂上がりのビールは最高だって、ケイトが言ってるのを聞いたらしく


「ケイトの嬢ちゃんが言うなら間違いない!」って事で一緒にビールを飲んでいる


それは良いんだけど、ケイトってどんなイメージを持たれているんだろう?


ケイトっぽいと言えば、ぽいか(笑)




そんな訳で現在


我が家のリビングで俺とニィナと女将さんの3人だけで風呂上がりのビールを飲んでいる♪


他のみんなは絶賛入浴中。


ちなみに風呂の数は増やしている。エルフの研修生コニーとフラニーが来て人数が増えたし、我が家の裏庭に住んでるニックとスナック専用の風呂も必要だろうしな




風呂を増やした理由は他にもある、冬の間に我が家には少しだけ変化があったからだ


それは女将さん、イセガミさん、リリーが毎日我が家の風呂に入りに来るようになった事だ


きっかけはイセガミさんが冬の間に風呂に入れない事にストレスを感じていて、我慢していたけどついに限界になり


俺に土下座までして毎日風呂に入らせて欲しいとお願いして来たからだ


俺としては風呂ぐらい何時でもウエルカムだったけど、他人の家の風呂を借りるって普通は凄く気を使って借りにくいよな


イセガミさんも何処にも風呂が無いなら我慢も出来たんだろうけど、我が家には立派?と言えるか分からんけど


外国製の大きい家庭用プールにお湯を張った風呂があるし、イセガミさんも数回入った事がある


普通は大量のお湯を沸かすのが大変過ぎて風呂なんて設置しても使え無いんだけど、俺は無駄にmpが多いから火魔法を使ってお湯を沸かせる


今はリリーが居て火魔法も使えるから、女将さんの所にもプール風呂を設置してあげれば良かったなと反省して、プール風呂を設置しようと思ったら、客に見られると面倒になるからと見送られている



そういう事が冬の間にあり、今ではイセガミさんも我が家に気軽に来るようになった


味噌汁が恋しくなったのも理由のひとつかもしれないけど、そこは解決の兆しがある



つい最近アストレア様から試作品の、味噌、醤油、日本酒が送られてきた


どれもこんな短期間で出来る物では無いんだけど、この世界はリアルに神様の御力でどうにかしてくれる事がある


運が良ければ、神様の御力により味噌が1日で完成する事もあるかもしれない。今回も少なからず神様のお陰だろうと思う。


何故なら、創造神様にお供えをした時にやんわりお願いしておいたからな♪


もしかしたら豊穣神や大地神なんかが居て力を貸して下さったのかもしれないけど、お供え等が必要ならそのうち向こうから声をかけてくださるだろう



肝心の味噌、醤油、日本酒の味だけど、、、今後に期待しよう。


悪くは無かったけど良くも無かった、やはり雑味が問題なんだよ


この国の人は雑味という概念が無いっぽいからな、そこは経験して覚えるしかない




「ふんふんふ~ん、ふふっふ~ん♪ふっふふ~ん♪」



おっ!


あの調子外れの鼻唄は、ケイトが風呂から出てきたか、謎のメロディーだけどケイトのオリジナルなのかな?



「あぁーー!!みんなでビール飲んでるー!酷いよダンナァ(泣)」



さっきまで御機嫌だったケイトは今は涙目になって凄く落ち込んでしまった、感情の変化がジェットコースターみたいなやつだな


忘れてたけどケイトは過去のトラウマが原因で、仲間外れにされるのを嫌がるんだよな、最近かなり改善されたと思ってたんだけど、そう簡単にはいかないか



「なんだいなんだい、良い女はそんな事で騒ぐもんじゃないよ、ビールは沢山あるんだから」


「ヘレンさんの言う通りです。ケイト殿は子供では無いのですから、少し騒ぎ過ぎです。」


「えぇー、だってぇ、うぅぅぅ」


「ケイト悪かったよ、次からはちゃんと待っててやるから、ビールを睨んで唸るなよ」


「わふっ?」


「ああ、リリーの事じゃ無いから心配しなくていいよ」



スミレに抱えられて風呂から出てきたリリーが、自分の事を言われてると思って首をかしげていたので誤解しないように説明しておく



「はいはい、ケイトちゃんもいつまでも拗ねてないで、井戸にワインとデザートを冷やしてるから取ってきてちょうだい」


「ワインとデザート?!行って来まぁす♪」



お藤さんからワインとデザートと聞いて、あっという間に立ち直ったケイトは元気に走って行ってしまった、まったく忙しいやつだ(笑)



「ただいま~♪」



はやっ!


さっき行ったと思ったら一瞬で戻って来たよ、これがAランク冒険者の実力というものか?!


そして、ケイトが井戸から持ってきたのは白ワインとわらび餅だった



「お藤さん、いつの間にわらび餅作ってたんですか?」


「今日が休日だった商会の甘味部門の子達に手伝って貰ったの、新しいお菓子だって言ったら喜んで手伝ってくれたから助かったわ♪」



なるほど、ウチの商会の従業員は休日でもやる事が無くて暇だからって、こっそり仕込みとか手伝ってるからなぁ(笑)



それに、冬の間お藤さんは暇潰しも兼ねて料理に使う片栗粉とかコーンスターチを自分で作ってたから


ワラビ粉もその中のひとつだったみたいだ


まさかこの世界で手作りのわらび餅が食べられるとは思わんかったな、元世界じゃ高級品で手が出せなかったもんなぁ



それにしても、我が家のみんなはわらび餅を見るのも食べるのも初めてのはずなんだけど、、、何の疑問も抵抗も無く普通に食べてるよ


美味しそうに食べてるから良いんだけどね。



エルフの研修生コニーとフラニーも普通にわらび餅食べてるけど


我が家の食生活が人族の『普通』と勘違いされると困るんだけどなぁ、でも頼んできたのはミリーさんだし、俺に責任は無い!




あっ!


スミレとリリーの口の周りが、わらび餅に付いてる『きな粉』でえらい事になってるよ(笑)


これはおしぼりが必要だな、いつでも使えるように収納に入れてたと思うんだけど、、、



っておーい!


ケイトまで口の周りを『きな粉』まみれにさせるんじゃありません



まったく、世話のかかる娘が多くて忙しいぜ



毎日騒がしいし、エルフの研修生とか色々やる事が増えて大変だけど


今日も我が家は平和だねぇ♪






つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る