第158話 愛と宿命と自転車 その2

「初めましてミリアリア様、私はさすらいの虎獣人、アカ・トラサンダーと申します。」


「あたしはクロ・トラサンダーです。」



「えぇーっと、シン君これはどう」「トラサンダーです♪」


「こっちはケイトさんよね?」


「あっ、あたしはクロ・トラサンダーです(汗)」


「はぁ、名前はどうでもいいわ、あなたの事だから訳アリなんでしょうけど。」




そうなんです、訳アリなんですよミリーさん!


俺はオフューカス子爵に復讐する為にケイトと商業ギルドに来ている


ケイトには事情を話して協力して貰っているけど、我が家のみんなには今回の復讐については内緒にしている


みんな色々と察してそうではあるけど、子供のうちから復讐なんて物に関わらせる訳にはいかんからな



ちなみにニィナは我が家で謹慎中だ、オフューカスやお付きの人達に顔を知られているのもあるけど、オフューカスに会ったら我を忘れて何をするか分からんからな


個人的にはそれでもいいんだけど街の中だと流石に問題になるから、まずは出来るだけ血を流さない復讐方法って事で商業ギルドに来ている


ミリーさんにはバレバレだけど、プロレス用の虎マスクを被って久しぶりのトラサンダーになってみた♪


全ての罪はトラサンダーに!ってやつだ





「それにしてもトラサンダーと言えば少し前にオフューカス子爵領で指名手配されてるんだけど、罪状が貴族への不敬という事で、どうせくだらない理由で不敬だと喚いてるだけだから


無視していいとアストレア様が仰らなかったら捕まえなきゃいけない所よ」


「ほぉ、それはアストレア様に感謝をしないといけませんね♪」


「ふふふ、本当はトラサンダーさんに構ってる暇が無いというのが本音なのよ。最近オフューカス子爵領からの難民が助けを求めて周辺の領地に逃げ込む騒動が頻発してるの


砂糖の利権で儲けてるはずなのに、そんな事が起こるなんて異常よ


だから、中立派の貴族はアストレア様の提案によって子爵領との取り引きを一時的に制限して様子見をしてるのよ」



「領地がそのような状況でオフューカス子爵はキャラバンシティに視察に来ているのですか?そんな事をしている場合ではないと思うのですが」


「私の個人的な意見だけど、なりふり構って居られなくなったんじゃないかしら?」


「うーむ、何やらキナ臭くなっているのですね」


「トラサンダーさんは何か知っていそうだけど、、、今は追及しないでおくわ」




ミリーさんはやっぱり鋭いなぁ、確かに俺はオフューカス子爵がなりふり構って居られなくなった事情を知っている


知ってる、、、でいいのか?


実は俺もなんとなくしか分かっていなかったりするんだけどな(笑)



数日前


オフューカス子爵について色々書かれた手紙が俺宛に届いた。


その手紙の差出人は『侯爵』だったのだけど


名前は無くただ『侯爵』とだけ書かれていた、あえて名前を伏せている理由については触れないのが正解だろう


そして俺個人に手紙を送ってくる『侯爵』といえばサウスビーチのあの人しか心当たりが無い


その手紙にはオフューカス子爵家の黒い噂について本腰を入れて調べるというものだった


具体的には、無許可の人身売買、誘拐、偽銀貨の製造、禁止魔法の使用、捕虜協定違反、暴行、恐喝、詐欺、横領、等々の疑いアリだそうでって



疑いだけでどんだけあんねん!


疑いもこんだけあったら真っ黒やろ!


今まで誰も調べんかったんか?


それとも砂糖の利権で護られとったんか?


なんにしても砂糖の利権は無くなるけどな(笑)



それで手紙にはオフューカスの黒い噂については絶対に手出し無用!とご丁寧に忠告付きだったよ


その他にも色々書いてあったけど、もし砂糖について知っている事があるなら根回しは済んでいるから、俺の好きにしていいそうです。


これは砂糖を普及させろって事なのか?



そして手紙の最後には


『追伸。上手く事が運んだ暁には酒と美容品を送って頂きたい。ゲオルグ。』



っておーい!


ゲオルグ様、名前書いたらあかんやん!わざわざ名前伏せた意味無くなっとるがな!!


酒と美容品なら言われんでも送りますやん!


とまあ、ツッコミ所満載の手紙ではあったけど言いたい事は理解した。


そして、手紙の内容からオフューカスはクソ野郎だという事も分かった






「それで、トラサンダーさんは本日はどのようなご用件なのかしら?」


「手紙を送って頂きたくて、よいしょっと、コレです。」



俺が収納から取り出したのは、スキルの「店」で購入した和紙で出来た高級感漂う封筒12枚


これにはそれぞれ同じ内容の手紙と写真が入れてある


砂糖の製法と原料となる植物の写真だ




「これは、紙なのかしら?随分綺麗な見た目と独特な手触りね」


「特殊な作り方をしていますが紙ですね。それで送り先は王国十二家です。


一応手紙の写しもあるので確認して下さい。」


「・・・はぁ~」



あれー?


またまたミリーさんが頭を抱えてしまっているのだが、手紙を送るぐらいで問題は起きないと思うんだけどな




「えぇーと、シン君」「トラサンダーです♪」


「はいはい、トラサンダーさんね。王国十二家にこの手紙を送るという事がどういう事になるか分かっているのかしら?」


「勿論ですよ。だからこそわざわざ商業ギルドを通して手紙を送るんです。普通に送っても読まれず棄てられてしまいますからね、商業ギルドを通せば誰にも読まれず棄てられる事は無くなるでしょうし


この手紙が持つ意味が分からないような人は、王国十二家で働いてたりはしないと信じてますから。」


「それにしたって、このタイミングで砂糖の製法を王国十二家に送るなんて、オフューカス子爵家を潰すつもりなのかしら?」


「物騒な事を言わないで下さいよ、私はただ知ってる知識を教えるだけで、そんな事で子爵家が潰れるはずが無いじゃありませんか(笑)」


「あなたと子爵家にどんな因縁があるのか聞かないけれど、くれぐれも無茶はしないで頂戴ね」


「勿論ですよ、心配して頂いてありがとうございます。」









子爵家が潰れるかどうかは知ったこっちゃない




ニィナが泣いていた




俺は絶対に奴等を許さん!



まずは俺が奴等を社会的に抹殺してくれる


そして最終的にどうするかはニィナに任せる事にしている


たとえそれが奴等の血で手を赤く染める事になろうとも・・・






つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る