第155話 ホタテと真珠 その2

パール男爵令嬢ミルキー様の社交界デビューを最高の物とするべく


戸惑うアクロアイト様とミルキー様には申し訳無いけど、説明してると時間がかかるので質問等は無視してガンガン事を進める



我が家から呼び寄せた、お藤さん、メリル、カスミの3人による


ミルキー様シンデレラ化計画始動!



急いで駆け付けてくれたお藤さんは、事態がよく分かっていないながらもタイプの違うドレスを幾つか持って来てくれており


その中から選んだのが


身体のラインが出る黒いドレスだった!


元世界の知識がある俺とお藤さんにはお馴染みのドレスだけど、この国だとかなり斬新なデザインになるだろう


基本的に肌を露出させる習慣の無いこの国の貴族に、膝から下だけだが足が露出してるドレスが受け入れられるかどうかなんだけど、、、



「あらあらまあまあ♪シンさん、あのドレスは素晴らしいわぁ、これだから私はシンさんの事を離したくないの♪『ぎゅぅぅぅぅ』」


「よりょこんでいひゃだけて何よりでひゅ。」



相変わらずアストレア様の胸圧はとても苦しいけど、今日は大丈夫!


何故なら横から抱きしめられているから、ギリギリ息が出来るんだ!


本当にギリギリだけど、息が出来るだけで充分でございます。


アストレア様の反応から肌の露出は問題無さそうだ



「ところでシンさん、あのドレスは私にも売って頂けるのかしら?」


「それは勿論お売りしますけど、お茶会等で着るのは出来ればミルキー様の社交界デビューが終わってからにして頂きたいです」


「理由を聞いてもいいかしら」


「勿論です。私はこの国の美的感覚に風穴を開けてやろうかと思いまして。それには伯爵家より男爵令嬢という肩書きの方がインパクトがあるんですよ」




そう!


この国の美的感覚が俺は好きでは無い


今朝も商会に来ていたラフィネル様のように、目鼻立ちはぱっちりくっきり、髪は巻き巻きの盛り盛りで、服装もフリフリのヒラヒラのフッワフワが最高とされている


それが悪い訳ではないけれど、ミルキー様のように地味な見た目の女性はブサイクというけしからん考えがある、それを変えたい


俺の好みは地味な見た目の女性なんだ!


多様性を許容する社会ってのは大事だと思う、まあウチの商会で扱うドレスとコサージュの宣伝がメインだったりするんだけどな(笑)



「シンさんの感覚が他人と違うのは分かっていたけれど、ドレスでさえもこの国の物とは全然違うのねぇ、これは後でじっくりお話しする必要があるわね♪」


「ソウデスネ(汗)えっと、アストレア様は真珠はどう思いますか?」


「真珠というと、あの白っぽくて丸いのよね?うーん、綺麗だけど輝きも少ないし何より小さいわね」


「それでは、あの真珠が今より大きければどうですか?」


「あら?と言う事は大きく出来るのね♪」


「知識だけで実践した事は無いですけどね、真珠が採れる貝は色々と利用出来るので駄目でも無駄にはならないかと」



真珠が採れる貝に限らず貝は利用価値が高い、貝殻は焼いて石灰を作れば色々使えるし


身はそのまま食べても良し、干して出汁を取っても良し、保存食としても良し!



「ふふふ、次々出てくるその知識本当に最高よ♪私行って来るわ!」


「え?」


「アクロアイトさぁ~ん、少しいいかしらぁ~♪」


「アストレア様?!」



アクロアイト様はいきなり声をかけられてビックリしちゃってるよ、アストレア様から紹介状を貰ってるんだから面識はあるんだろうけど、そこまで親しくは無いのかな?


そしてアストレア様は今のうちに、パール男爵家をこちら側に引き入れるつもりらしいな


真珠の価値が高くなるかは分からんけど、真珠が採れるような場所なら、他の魚介類にも期待が出来るだろうから今から仲良くしておいて損は無い


俺としてはホタテがほぼ無料でゲット出来ただけで充分だ、他は普通に売って貰えればいいしな




「皆様お待たせ致しました。ミルキー様の準備が整いました。」



お?


どうやらミルキー様の方も完成したらしいな、果たしてどうなっているかな



「お母様、どうでしょうか?」


「っ?!あなた本当にミルキーなの?実は別人に入れ替わっている訳では無いのよね?


すっかり見違えて綺麗に、、、うぬぬぬぬ!我が娘とはいえ女としての私のプライドがぁ~(泣)」


「お母様!!今は私の事を素直に褒めて下さいまし!」




アクロアイト様の気持ちも分からなくはない、ミルキー様にはファンデーションとリップだけとはいえ、この国には無い化粧品を使っているんだから


黒いドレスも良く似合っている、年齢的に黒はどうかなと思ったけど、年相応の可愛らしさも残しつつ、程好く大人っぽい


こういうのは俺では無理だったから、お藤さんに感謝やな♪



そして黒いドレスに、真珠を模した白いプラスチックの玉を沢山付けたコサージュが良いアクセントになってる


あの白い玉は男爵領に帰ったら本物の真珠に交換してもらう予定だ



今の貴族の美的感覚からは真逆を行く見た目だけど、確実に目立ちはするだろうな



社交界デビューの日が何時なのかは知らないけれど、とても楽しみだ♪






つづく。

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