第152話 池田屋商会下着騒動 その2

どういう訳か突然商会に下着を求めて貴族のお嬢様方が殺到しているという報告を受けた


紹介状を持っている方限定ではあるが、商会では下着を販売しているのだから客として貴族が来ても何も問題無い



しかし


1度に12人も来るとか嫌な予感しかしない



だってここは


『テンプレな異世界』なのだから・・・









「ふふふ、成る程そう来ましたか♪」


「おいアル、呑気にお茶飲んでるけども、何か知ってるんじゃないだろうな?」


「おや?私が何を知っていると言うのですか」


「そりゃあ、貴族のお嬢様方が商会に殺到してる理由だよ」


「下着を求めて来た以外の理由があるとは思えませんが♪」



うーむ、アルの言う通りなんだけど、アルがこんなに良い笑顔の時は何かあるってのが最早テンプレ展開なんだよ!



「アルの顔には他にも何かあるって書いてるように俺には見えるけどな」


「あはははは、そうですか私の顔に書いてありましたか、それなら今度からシンさんに会うのは顔を洗ってからにしないといけませんね♪」



ぬぉぉぉ、面倒くせぇー!


こんな時に俺との会話を楽しんでどうすんねん!



「アル、流石に本店の従業員だけに貴族の相手をさせるのは可哀相だろ」


「えぇ、私もシンさんの困った顔が見れたので満足です♪次は驚いた顔が見たいですねぇ」



くっ!


アルの本音はやはりそっちだったか!






「さて、戯れも程々にして本題に入りましょうか、とは言え私も何か知ってる訳ではありませんよ、ですが推測は出来ます。


下着の購入にはアストレア様の紹介状が必要です、紹介状を持っている方がこんな早い時間に商会にやって来るでしょうか?


答えは否です。


紹介状を持っているなら先触れを出して本人は後からゆっくり来れば良いのですから。となると現在商会に来ている貴族の方々は紹介状を持って無い可能性が高いですね


しかも12人という団体さんです。私の予想ではどうせ下着を売って貰えないなら、一か八か一致団結して無言の圧力をかけに来た


といった所でしょうか、そう考えると12人も貴族の娘さんが来た事に納得がいきます。」



なるほど


スゲェ当たってると思うけど、そうなると誰が下着は売れないと断ってお引き取り願うんだ?


俺だよ(泣)




「忘れてたけど、商会に待たせてるパール男爵家の使いも今回の事に関わってるのかな?」


「それは無いでしょう。きちんと手順を踏んでますし、男爵令嬢が来るのは昼頃の予定ですから。」


「分かった、とにかく商会に向かいながら穏便に帰って頂く方法を考えよう」




ーーーーーーーーーーーーーーー




足取りが重いながらも急いで池田屋商会の本店にやって来た


するとそこでは


貴族のお茶会が開催されていた


比喩でも小粋なブリティッシュジョークでもなく、本店のロビーでお茶会が行われている


貴族のお嬢さん達が飲んでるのは、俺が来客用にスキルの「店」で買ったそれなりの値段の紅茶だ


紅茶の味に感動したのか話に華が咲いてとても盛り上がっている



それはいいのだが


当然ここにはお付きのメイドと護衛も居る、本店の従業員も合わせると50人以上がロビーにひしめき合っていて


どーすんのこれ?


穏便に済む未来が見えないのだけど


とりあえずここはアルに任せて、、、



っておーい!


何を申し訳なさそうな顔して俺を見てんだよ、こんな時こそ優秀な所を見せる場面だろ!


などと俺がアルに無言の抗議をしていると、こちらに気付いた金髪で縦巻きロールのこれぞ貴族のお嬢さんって感じの人がやって来た



「あら?あなたはもしかして池田屋商会の会長さんかしら、私はラフレシア子爵家の、ラフィネル・ラフレシアと申します。どうぞお見知りおきを」


「申し遅れました、私は池田屋商会会長、シン・ナガクラと申します。


ラフレシア子爵家の御嬢様に我が商会に来て頂けるなど大変光栄な事ですが、見ての通りここは主に穀物を扱っておりますので、御嬢様が求めるような物は無いと思うのですが」



ここで下着の話題をあえてしない事によって、『紹介状が無いなら一切相手にしませんよ』


というメッセージを込めてみたのだが、果たして伝わるだろうか?



「ふふふ、今話題の下着を扱っている池田屋商会なら、下着の他に何か素晴らしい品があると思って本日は参りましたの。」



むむむ?


下着を求めて来たんじゃないのか?




「そうでしたか、残念ながら下着は紹介状が無いとお売りする事は出来ませんが、ごゆっくりどうぞ」


「勿論そうさせて貰うわ、出して頂いたお茶がとても美味しくてこれだけでも会話が弾んで退屈しませんから、何時まででも居られますわ。ねぇ皆さん」


「えぇ、ラフィネル様の仰る通りですわ、このお茶凄く美味しいです♪下着は残念でしたけど、このお茶は商品では無いのかしら?」

「下着を着るとお胸の形が綺麗になると噂ですけど、紹介状を持っていませんから諦めますわ」

「池田屋商会の下着はとても着心地が良いと聞いてますのに、本当に残念です。」

「下着にはとても興味がありますけど、池田屋商会は料理も美味しいと聞いてますわ♪」




こっ、これは?!


縦巻きロールのラフィネル嬢に気を取られている間に、俺達は貴族のお嬢さん達に囲まれているではないか!


妙に『下着』を強調して話をしてるから変だと思ったけど、これか!


これが貴族の圧力か!!



言葉では下着は求めて無いと言いつつ、どうにかして下着を売れ!っていう圧が凄いわ!!


しかもぐるっと周りを囲まれてるから既に退路は無い



これがミリーさんが常々言ってた貴族の圧力か!そりゃあ頭を抱えたくもなるよ




だがしかし


こんな時こそ優秀な男の出番、頼むぞアル



っておーい!


俺の隣に居る優秀な男は何かを悟ったような顔をして、神に祈りを捧げてるんやけど・・・



その優秀な頭脳いつ使うの?


今やろ!!


なにを神様に頼っとんねん!!



誰か助けてぇー(泣)







「あらあらあら、皆で集まってとっても楽しそうねぇ♪」




こっ、この声は?!


ざわついていたロビーが一瞬にして静になり、声の聞こえた方を皆が見る



商会の扉を開けて入ってくるあの御方は・・・






つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る