第148話 集う仲間達
「何度言われてもレシピは譲れませんよ」
「ぐぬぬぬぬ!伯爵家の御用商会だからといい気になりおって、もうよい!」
『バタン!』
今日もレシピを寄越せと言ってきた何処かの貴族の使い(自称)を追い返す
未登録のレシピが欲しくて池田屋商会に来る貴族の使いや商人は少なくないが
ウチがピスケス伯爵家の御用商会だから基本的には低姿勢で礼儀を弁えた人が多い
言葉こそ丁寧だけど
レシピを寄越せ!っていう無言の圧力は凄いけどな(笑)
それでもちゃんと話は聞いてくれるし、断れば素直に帰ってくれる。
領地の特産品で一緒に儲けませんか?くらい言ってくれれば俺もレシピを考えてあげるんだけど、残念ながらそういうのは未だにゼロだ
そして困るのはウチが貴族の御用商会だと知らない人達で、さっきの貴族の使い(自称)もそうだけど
とにかくレシピを寄越せの一点張りで、断れば、あの公爵様や、あそこの伯爵様が許さんぞ!なんて脅しはよくある
『あの』とか『あそこ』って何処やねん!
そういう輩にはちゃんとウチがピスケス伯爵家の御用商会だと教えてやるのだが、信用せず喚きちらす奴も居るので、その時はニィナがキレて殴り飛ばす。
だからさっきの奴は命拾いしたと言えるだろう
まったく、ニィナの仕事を増やす奴が多くて困るぜ
『コンコン、ガチャ』
「ご主人様、失礼します。」
「どうしたミーナ?」
部屋に入って来たのは、主に本店で働いている猫耳獣人のミーナ
ちなみにミーナは商会で働いている奴隷達のリーダー的存在でもあり、「ナ」を「ニャ」と言ってしまうお茶目な女性だ♪
「ご主人様に報告がございます。
2~3日前から商会の周りを牛を連れてうろつく怪しい2人組が目撃されてます。」
「牛を連れてるとは珍しいな、商会に嫌がらせでもしにきたのかな?」
「それが、商会の周りをしばらくうろついたら帰るそうです。他にも宿屋と製麺所でも目撃されていますが、どちらもしばらくうろついてから帰ったそうです。」
「うーむ、余所の商会の偵察かな?」
「そうかもしれません、一度居合わせた者が何か御用ですか?と尋ねたらしいのですが、こんにゃに大きい商会を見たのは初めてで珍しくて眺めていただけだと答えて帰ったそうです。
何かをされた訳ではありませんので、それ以上こちらが引き留める事も出来ず、申し訳ありません。」
「ミーナが謝る事じゃないよ、とりあえず警戒だけはして様子見だな」
「かしこまりました。」
「ミーナ、あなたが言っているのはあの2人ではありませんか?」
窓の外を見ていたニィナがそれっぽい2人を見つけたようだ、ミーナと一緒に俺も窓の外を見る
居た!
確かに牛を連れた2人組で、牛も2頭だ、あの大きさなら子牛かな?
遠くて分かりにくいけど落ち込んでるように見える
「2人組の背格好は目撃した者の報告と一致します。それに街中で牛を連れて歩く者は珍しいので間違い無いと思われます。」
「よし、ミーナあの2人引き留めて連れて来てくれ、客として丁重にな!」
「はい!」
牛を連れて来るとかどうせどっかの商会の嫌がらせだろう、まだ被害は無いけど牛糞をばら蒔かれる前に警告しておくべきだな
「ご主人様、あの2人を応接室に案内しました。」
ほどなくしてミーナが呼びに来たので俺とニィナは応接室に向かう、まったく商会の経営を頑張るほどに面倒が増えて嫌になるぜ
「お待たせしました、わざわざ来て頂いて申し訳、、、って怪しい2人組はライラとアリアだったのかよ!久しぶりだな♪」
応接室に居たのはオフューカス子爵領の、とある山村で出会ったライラとアリアという双子の兄と妹
牛の世話とテキーランという酒の原料になる植物を育てる為に俺が商会にスカウトした2人だ
「シンさん?!こっここここの度は、おおお招き頂きありがとうございましゅ!」
あっ!
噛んだ(笑)
改めて2人を見ると、ライラとアリアは何故か背筋をピンと伸ばして直立不動だ、そして顔色も少し悪い
やはりこの世界で旅をするというのは過酷な事なのかもしれん
「2人とも、もしかして疲れてるか?」
「いえ大丈夫です!まさかシンさんがこれほど大きな商会に所属してるとは思いませんでしたので、あの時は無礼な振る舞いをして申し訳ありませんでした!」
「ん?特に無礼は無かったと思うけど、まあいいや、2人とも座ってお茶飲んで寛いでくれよ、アリアもあれから傷は問題ないか?」
「はい!シンさんに治療して頂いたお陰で傷跡も無く綺麗に治りました。あの時の御恩は生涯忘れません!」
「治療の対価は貰ったんだから気にしないでいいよ。そんな事より2~3日前に来てたんだろ?どうして商会に来なかったんだ?」
「まさか池田屋商会がピスケス伯爵様の御用商会とは知らず、俺達のような平民が入って良いのか分からなかったので、外で待ってたらシンさんに出会えるかもと考えました。」
「なるほど、確かに商会は一般の人には入り難いか、それよりもっと気楽に話してくれよ」
「そっそんな失礼な事は出来ません!」
困ったなぁ、ずっとこの調子だと凄く疲れるのだが
「あのう、シンさん宜しいでしょうか?」
「どうしたアリア」
「私達は本当に池田屋商会で雇って頂けるのでしょうか?」
「勿論だよ、牛のミルクを使って新しい商品を作る予定だから、2人にはその責任者として働いて貰う予定だよ」
「せっ責任者?!シンさん俺達が責任者なんてとんでも無いですよ、学も無い村出身の平民なんて、ここの会長様が許すはずありません(汗)」
「あれ?言ってなかったか、池田屋商会の会長は俺だから問題無いよ」
「え?」
「「えぇーーーーーーーーーー!!」」
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。