第139話 異世界の年末 その2

サウスビーチの元商業ギルドマスター、面倒な男アルヴェロヴェールこと通称アルに会う為に池田屋商会本店にやって来た




「お待たせ、久し振りだなアル」


「お久し振りですシンさん、お変わりないようで良かったです。


そちらの素敵な2人のレディは初めましてですね、私はアルヴェロヴェールと申します。気軽にアルとお呼び下さい。名前を伺ってもよろしいですか?」


「初めまして、池田屋商会副会長のメリルと申します。」


「護衛のニィナです。」


「ほぉほぉ、この方が副会長ですか、流石シンさん!護衛を含め商会の下働きの者まで優秀そうな人材が沢山居ましたし、羨ましいですねぇ」


「褒めても何も出ないぞ。しかし、本当にギルマスを辞めて来るとは、こっちでは何の仕事をするんだ?」


「池田屋商会は人手不足と聞いていますし、キャラバンシティは発展途上の街ですから人材派遣業をしてみようかと」


「そりゃ良い♪出来れば冒険者を優先して使って欲しいな、この街の冒険者ギルドは再開される見込みが無くてさ、仕事の無い冒険者が多いんだよ。


それでさ、サウスビーチでは断った手前言いにくいんだけど、人材派遣業をしつつで良いからウチの商会で働かないか?」


「そうですねぇ、お断りします♪」


「ですよねー。」



「むむむ、驚かないのですか?シンさんの驚く顔が見られるチャンスだと思ったのですが(悲)」


「ははは、そりゃあ俺がアルの立場でも1度は断るよ。ほらなメリル、面倒くさい男だろ?」


「うん、凄く面倒だね、でもウチの商会には居ないタイプだし頭は良いんでしょ?だったら絶対働いて欲しい!」


「ふふふ、副会長にそう言われると嬉しいですねぇ♪しかし、褒められても私が商会で働くメリットにはなりませんからねぇ」



そんな事を言いつつ、アルは凄く嬉しそうにニヤニヤしながら俺を見てくる


男に見つめられても嬉しく無い!


ただ、アルの性格を考えれば何かメリットが欲しい訳じゃなく、俺との会話を楽しんでる感じかな



「残念ながら、アルが商会で働くメリットは無い!」


「ふふっ、あはははは、やっぱりシンさんは面白いです!そんなあなただからこそ私は一緒に働きたいと思ったんですよ♪


しかし、私が池田屋商会で働くにはきっかけと言いますか、最後のひと押しが欲しいですねぇ」



またアルが嬉しそうに俺を見てるけども、まったく何がそんなに嬉しいんだか



「ひと押しって言われてもなぁ、すぐには思い付かないからとりあえずお茶でも飲もうか、ニィナお茶の準備は任せていいか?」


「お任せ下さい」


「お茶にはお菓子が要るよなぁ、スイートポテトでいいか」



収納からスイートポテト3種類を取り出しテーブルに並べて行く



「スイートポテトとは何でしょう?」


「スイートポテトは芋のお菓子だな、遠慮せず食べてくれ」


「それでは、あーんっ、、、もぐもぐもぐもぐ、うん、うん♪もぐもぐもぐもぐふふふ♪もぐもぐもぐもぐ」



ニヤニヤしながらバクバク食べる姿はとても気持ち悪いぞアル!



「スイートポテトは気に入って貰えたか?」


「ええ、王都でもそうそう食べられないくらい美味しいです!!それにとても甘い♪使ってるのは一般的な砂糖ですか?なんとなく砂糖では無いような気がするのですが」



へぇ~、スイートポテトは砂糖を使って無いんだけど、初めて食べるのによく分かったな、アルは味覚も優秀だったか



「それは砂糖じゃなくて材料の芋そのものの甘さだよ」


「なんと?!砂糖と果物以外でこれほど甘い物があるなんて、、、分かりました喜んで池田屋商会で働かせて頂きます。」


「おいおい、そんなんで決めていいのかよ、働いてくれるのは嬉しいけどさ」


「シンさん、それは本気で言っていますか?シンさんはスイートポテトの価値を正しく理解するべきです!メリルさん、シンさんはいつもこうなのでしょうか?」


「だいたいこんな感じです、おにいちゃ、、、会長は頼りない所があるけど私がちゃんと補佐してますから」


「なるほど、シンさんの足りない所はちゃんとフォローする体制は出来ていると、すると商会に足りないのは人手とそれを管理する人、といった所でしょうか」


「わあ!凄いね、おにいちゃん!アルさんどうして分かるんですか?」


「メリルさん、これはとても簡単な事ですよ、池田屋商会にはメリルさんやニィナさんを含め優秀な人材が沢山居るのに人手不足です、ならそういう仕事をする人が居ない、もしくは少ないと考えるのは当然の事なんですよ」


「そうなんだ、凄く勉強になります!」


「うーむ、これはとても基本的な事なのですけど、、、シンさんこういう事は教えてないのですか?」



「えぇーと、俺は元々一人で気楽に商売をしたかっただけだから、商会経営の基本とか詳しくは知らないんだよ、今の商会もたまたま会長になった感じだしな(笑)」


「・・・ふふっ、ふわぁっははははははははははは♪」



おいおい、アルのやつニヤニヤの次は爆笑かよ、ますます面倒くささに磨きがかかってるな(汗)



「アル大丈夫か?」


「勿論大丈夫です、私も周りから散々ぶっ飛ん出るなどと言われて来ましたが、シンさんが私以上にぶっ飛んでいたとは♪


これを笑わずに居られるでしょうか?


答えは否!


これはもう池田屋商会の為に命をかけて頑張らねばなりませんね、楽しくなって来ましたよ!


シンさん!残りのスイートポテトは全部食べても構いませんか?」


「あっ、ああ(汗)」


「美味しい物を食べてエネルギーの補給をしないと、良い仕事が出来ませんからね♪もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」






「ねぇ、おにいちゃん」



メリルがアルに聞こえないように小さな声でそっと俺に話かけて来た



「どうしたの?」


「あの人と居ると凄く疲れるんだけど」


「私もお嬢様と同意見です。」



ニィナ怖い、目が怖いからぁーー(汗)



アルが優秀なのは間違い無いんだけど、それ以外がなぁ


その後


疲れたきった2人を自転車の後ろに乗せて帰る途中俺は考える


美味しいお菓子を沢山作るから今後もアルの相手は2人に任せようと(笑)






つづく。

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