第138話 異世界の年末
『ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ』
「ねぇおにいちゃん、これってどれくらいやればいいの?」
「難しい質問だなぁ、やればやるほど滑らかになって食感は良くなるんだけど、、、」
「じゃあ、まだまだだね!」
そう言うとメリルは俄然気合いを入れてすりこぎを動かし始めた
現在、俺とメリルは細かく切ったメルルーサという魚をすり鉢に入れて身を滑らかにしている
この身を使って蒲鉾を作るんだ!
ついさっき冒険者が1mくらいの立派なメルルーサを直接俺に売りに来たので買い取ったからだけど
近くの川で捕れたらしく、綺麗な白身の魚だったからちょうど良いやって事で蒲鉾に挑戦している
たまに居るんだよな
普通なら売れない物も俺なら買うんじゃないかってよく分からない物を持って来る人、実際買ってるんだけどさ(笑)
メルルーサもちゃんと鑑定して『美味』って出たのを確認して買ったよ。
何故蒲鉾を作ってるのか
それは今が年末だからだ。この国は年末も年始も何かをするという習慣が無いせいで、今が年末だという事も最近たまたま知ったんだ
年末だって聞いたら元日本人としては仕事納めをして、新年の準備をしたいじゃないか!
だから最低限の仕事はしつつ、10日ほどちまちま新年の準備をしているという訳だ
出来た物は収納のスキルに入れておけば時間停止させて保存しておけるしな
明日が今年最後の日だから今日を含めて数日間、宿以外の商会の業務を休みにしようとしたら
ミリーさんに「国を滅亡させたいのですか?」
と言われてしまった、商会の業務を休むだけで何故国が滅亡するのかさっぱり分からんが
あの時のミリーさんはマジで怖くて脇汗が止まらなかった(汗)
震える声でなんとかミリーさんに、国は滅亡させたくありません!と言ったら、じゃあ通常通りでお願いしますとにこやかに言われた
その時の笑顔は凄く怖かったです(泣)
そんな事もあったけど、嬉しい事もあった
それは餅米が手に入ったから新年は餅つきが出来るんだ♪
ピスケス領から米のサンプルが送られて来たのだが、餅米は酒造りには使わないらしく
家畜の餌以外に利用法がなく余ってるからと、無料で大量の餅米を入手する事が出来た
おそらく、おはぎ以外の餅米を使った料理を期待しての事だろう、でも餅米って餅以外の料理は何があるんだ?
そこで、餅米の下準備をしているお藤さんに相談したら、カオマンガイを作ってくれる事になった
『カオマンガイ』って何?
鳥肉を使ったエスニック料理らしいんだけど、エスニック料理が何なのかが分からん!
出来上がりを楽しみにしておこう。
「ねぇダンナァ、こっちはこれでいいの?スゲェ粘るんだけど」
「ケイトご苦労さん、自然薯はそういうもんだから大丈夫だよ、悪くならないように収納に仕舞っておくな」
ケイトに頼んですりおろして貰っていた自然薯は、冒険者に依頼して採って来て貰った物だ
自然薯に傷が付いたり折れたりしたら買い取り価格を下げるって言ったら、1本掘るのに4~5時間かかったらしい
なんか無茶言ったみたいでごめんなさい(汗)
申し訳無いから報酬にスキルの「店」で買った激安ワインを1本あげたら飛び上がって喜んでた
俺の扱う商品は特別な物ばかりだって噂になってるから、もしかしたら転売して儲けるのかもしれんけど、そこはまあ御自由に。
新年に向けての事前準備はこんなもんかな、後はお藤さんとカスミに任せておけば大丈夫だろ
『コンコン』
「ご主人様、ミーニャです!」
珍しいなミーナが我が家に来るなんて
「今開けるよー、、、『ガチャ』いらっしゃいミーナ」
「突然の訪問申し訳ございません、商会にアルヴェロヴェールと名乗る方が来られて、ご主人様にお会いしたいと言っているのですがどうしましょう」
アルヴェロヴェール?
えらい長い名前の奴だな
「うーん、用件は聞いてない?」
「名前を伝えれば分かると仰って、サウスビーチの元商業ギルドマスターらしいです」
サウスビーチの商業ギルド・・・
アルか!
すっかり忘れてたぜ(笑)
しかし元って言ったよな、マジでギルマスを辞めてこっちに来るとは思わなかった
冗談とか言わなそうな奴ではあったけどな
「分かった、今から商会に行くよ」
「では私は戻って伝えて参ります!」
そう言うと走り出したミーナはあっという間に見えなくなってしまった、さすが獣人、身体能力がスゲェな
「ねぇおにいちゃん、わたしも一緒に行っちゃ駄目かな?」
「駄目じゃないけど、今から会うのは凄く面倒な奴だからなぁ」
「ふふっ、サウスビーチでおにいちゃんが面倒くさくて疲れる奴に会ったって愚痴ってた人でしょ?
だったらわたしも会うべきだと思うの、来年からわたしも商会の副会長になるんだし」
「うーんそれもそうか、悪い奴ではないからな、じゃあ一緒に行くか」
「やったぁ♪」
来年からメリルは池田屋商会の副会長に正式に就任する事になったんだ、メリルは来年成人するらしくそれに合わせた
仕事は主に俺の補佐だから今までとあまり変わらない、これまで通り自由に頑張ってくれれば良い
「メリル、ニィナ行こうか」
「おにいちゃん自転車で行くの?3人は乗れなさそうだけど」
「心配無用だメリル、こんな事もあろうかと用意はしてたんだ、よいしょっと」
俺は収納からバイクのシートを取り出す
スキルの「店」にはバイクその物は売って無いけど何故か各種パーツは売ってた、バイクのマフラーも売っててそれだけでどうしろというのか分からんが
そのお陰でバイクのシートが買えたから感謝だ、このシートを自転車の荷台に取り付ければ2人座る事が可能だ!少しうしろが出っ張るけど仕方ないな
「ニィナ運転は任せた、メリルは俺とニィナの間だな」
「うん、よいしょっと」
「では出発致します」
『チリンチリン♪シャコ、シャコ、シャコシャコ、シャコ、シャコ、シャコ、シャコ』
いざ!
面倒くさい男、アルの元へ!!
つづく。
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