第130話 グリフォンの翼を折る仕事

「シンさんごめんなさいね、よく分からないやり取りで戸惑ったでしょう、今回の事はシンさんを利用させて貰ったのよ」





「アストレア様、それはどういう事でしょうか?」


「簡単な話よ、オリバーは代々貴族が求めるお酒を造って来たの、お酒の出来にも自信があったのでしょうけど、ライバルが居ないのもあってすっかりグリフォンになってしまったの」



「、、、グリフォンですか?」



「そうよ、以前の私ならそれでも美味しいお酒を造って良くやった!と褒めていたのだけど、


シンさんがレシピ登録した料理を食べてショックだったわ、私が今まで美味しいと思っていた物は、実は全く美味しく無い物だと知ったのだから


違うわね、美味しく無いのではなくて、より美味しくする事が出来たのに、そんな事はスライム半分程も考えず現状に満足して無駄に時を浪費していたのよ


どんなに美味しいお肉もそのまま食べるより、塩をかけて食べた方がより美味しくなるように、


そしてシンさんは既にはるか先のステージにいる


私達は美味しくする為の努力をほとんどして来なかった、それをシンさんと出会って思い知らされたわ。


だから、より高みを目指す為にグリフォンになってしまったオリバーの翼を1度折る必要があったのよ」



ようするに、オリバーさんは調子に乗って天狗になっていた、という事だろう



「アストレア様、それにしても首を差し出すとか言い過ぎだと思いますよ、もし俺が首を欲したらどうしたんですか?」


「ん~、どうしたかしら(笑)でもシンさんは首なんて要らないでしょ?」


「勿論要りません、それはまあいいです


改めて聞きますけど、この酒の原料は教えて貰えないんですか?」


「そうねぇ、シンさんは既に分かってるみたいだけどそれでも知りたいの?」


「知りたいというより確認ですね。この酒を造れるという事は、この技術を応用して新たな調味料が造れると思うんです」


「あら?それはまたとんでもない話になってきたわね」



日本酒が造れるって事は麹菌を知ってるはず、知らなかったとしてもこれまでの酒造りの経験でなんとなく理解はしてると思う


麹菌があるなら味噌と醤油も造れる!どちらも材料を揃えて発酵させれば大丈夫だったような気がするんだよな、細かい所はスキルの「店」で本を探して教えればいいし



「お聞きしますが、ピスケス領に米は有りますか?」


「コメ?聞いた事無いわね、そういえばさっきも聞いていたけれど、それと調味料が関係あるのかしら?」



なんだと米は無いのか?!


だがまてよ、もしかして米も麦と認識されてるとか?見た目はなんとな~く似てるから充分可能性はあるなぁ、だとすると米を探しても見つからないよ(泣)


名前が分からんとなると直接探しに行くしか無いか、、、


あっ!


名前が分からないなら現物を見せれば良いじゃない♪


こんな時の為のチートスキルやん、スキルの「店」で米を購入、それと稲の写真が載ってる本も購入してと



「アストレア様、米は私が食べたくて探している物です。これが米なんですけどどうですか?」



俺はアストレア様に生米と稲の写真を見せる



「あら?とても綺麗な絵ね、これと全く同じかは分からないけれど領地にあるわよ、コメじゃなくてライスという名前だけど」


「は?、、、ライス、、、米ではなくライスですか?」


「ええ、昔からライスと呼ばれているけれど」



なんでライスやねん、米でええやろ!


そりゃあ米を探しても誰も知らないよ、しかもピスケス領にあるし、侮るなかれ灯台もと暗し!!



「えぇーと、何の話でしたっけ?」


「新しい調味料の話よ」


「そうでした、先ずライスは現物を確認したいですね、種類によっては即増産して欲しいですから。


調味料は大豆を使って味噌と、おでんにも使っていた醤油という物が造れます、味噌と醤油造りにはオリバーさんが必要です。


とまあ、こんな感じでしょうか」



「ふふふ、良いわね良いわね!やはりシンさんは楽しいわぁ♪無駄な説明も無いから話もスムーズだし

シンシア、聞いていたわね?」


「はい、奥様」



うぉい?!


びっくりしたなぁメイドさん居たのかよ。アストレア様と一緒に部屋に入って来るのは俺も見てたけど、今まで完全に気配を消してたから存在を忘れてたよ



「では領地におられる旦那様に連絡して諸々の手配をお願い」


「かしこまりました」



「アストレア様、ライスと調味料に関しては準備が出来てから後日改めて、という事でよろしいでしょうか?」


「理解が早くて助かるわ♪」


「これでアストレア様の用件は終わりですか?」


「そうね、予定外の収穫もあったし、シンさんには何かお礼をしたいのだけど」


「それならちょうど良かった、アストレア様にちょっとしたお願いがあります。」


「あらあら、シンさんからのお願いなんて珍しいわね、何かしら?」


「その前にニィナ、ミリーさんと、、、ウェンディさんを呼んで来てくれるか」


「かしこまりました」



「それじゃあ詳しい話は2人が来てからにしましょう」






つづく。

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