第120話 邂逅

「それじゃあミーナ、豚カツは任せたからよろしくな」


「かしこまりました、ご主人様の名ゃに恥じぬ、最高の豚カツを揚げてみせます!!」


「きっ、期待してるよ」


「はい♪」



ガゼル親方の工房を後にした俺とニィナは、そのまま池田屋商会の本店に来てカツサンド販売について話をしたところだ


豚カツを揚げるのは猫耳獣人のミーナにお願いした。最高の豚カツは揚げて欲しいけど、適度にチカラを抜いて頑張って貰いたい





「それじゃあ帰るか、安全運転でお願いな」


「お任せ下さい!」


『チリンチリン♪シャコ、シャコ、シャコ、シャコ、シャコ、シャコ』



なんとなくニィナが自転車を漕ぎたそうだったから乗せてみたら、難なく乗ってしまった


くっ!


俺の子供の頃のあの苦労は何だったのか(泣)




「あっ!会長お帰りーー♪」


「おう、ただいまー!」


「おーい、会長ぉー!また何か依頼してくれよなーーー!」


「気が向いたらなぁ~」




ニィナが自転車にすんなり乗れた事に少しだけ落ち込みつつ、自転車の後ろに乗って我が家に帰る途中


暇な冒険者達に声をかけられる度に曖昧な返事をしてやり過ごす


未だにこの街の冒険者ギルドは閉鎖中で、仕事の無い冒険者が昼間からウロウロしてるんだ



実績と信頼のある冒険者は商会から直接依頼を貰えるけど、新人はそういう訳には行かない


仕事の無い奴が増えると治安が悪くなるから、俺も森に自生している野菜を探す依頼を出した事がある


でもそれだけじゃなぁ、ウチの露店とか孤児院に出来る行列の整理に雇うか?


こういうのは領主の仕事なんだけどいつになったら後任が決まるのやら、次にアストレア様に会ったら強めに催促してみよう!







今日の俺の仕事も終わって我が家に帰って来た


スンスン、良い匂いがする♪


家から漂ってくる料理の匂いってどうしてこんなに美味しそうなんだろう


俺はガキの頃マンションに住んでたから、夕方になると周りの家から色んな匂いがしてそれが混ざると場合によってはカオスな匂いになってたなぁ(笑)




「ただいまー♪」


「ただいま戻りました」


「シンさん、ニィナちゃんもおかえりなさい♪」


「お藤さん、今日は唐揚げですか♪」


「それとナポリタンね、みんなのリクエストを聞いた結果、うどんと中華麺も使ってるんだけど組み合わせとしてはやっぱり変かしら?」


「大丈夫ですよ我が家じゃそれが普通なんで、ナポリタンにケチャップライスを乗せるとかだったら嫌ですけど(笑)」


「ふふ、流石にそれは嫌ね(笑)あら、ニィナちゃん唐揚げを見つめてどうしたの?」


「カラアゲ、という物を初めて見たので、何かなと思いまして」


「そうなの?唐揚げは鳥肉に衣を付けて揚げた物よ」



そういえば唐揚げは作って無かったか、何故か異世界小説だとよく出てくるんだよな、あとカレーも多い


カレーはメリルと2人で宿に泊まってた時に食べたきりだし、久し振りに作るか!


この国だとスパイスは薬だから薬屋に行って探してみようかな、でも普通の家のカレーも好きなんだよなぁ







「お藤さーん、開けてぇ~」


「ちょっと待っててー!」



厨房の裏口からスミレの声が聞こえる



「お藤さん、俺が開けるからそのまま料理してて下さい」


「そう?じゃあお願いね」


「スミレ今開けるよー『ガチャ』・・・犬?!」




俺が裏口のドアを開けると、そこには白い毛の犬になったスミレが居た・・・



「ご主人さま~?」



おっ、おお!


びっくりしたなぁ、スミレが白い犬になってたんじゃなくて、白い犬をスミレが抱えていただけだった



「スミレその犬どうしたん?」


「えっとね、ご主人さまに会いに来たんだって」


「ん?その犬が、俺に、会いに来た・・・?」


「わん♪」


「そうだよ、って何で犬の言葉が分かんねん!」


「わふっ」


「鑑定をしたら分かるって?ほんまかいな、とにかく鑑定っと」



名前 フェンリル(仮)



種族 神獣



使命 伊勢神幸子の守護/シンの保護




出た!


あぁ~、神獣なのね


伝説のフェンリルにしては可愛いらしいのが来たな♪


神獣って言えば神様の使徒的なやつだったよな


それで使命が伊勢神幸子の守護、神獣がわざわざ守護するんだから、この人が創造神様の言ってた『あの子』って事なんだろうな


伊勢神さんは守護だけど、俺は保護ってどういう事?


俺が伊勢神さんを保護するんだよな?その上で俺を保護してくれるって事か?



「あのですね、俺はフェンリルさんに保護して貰えるという事でいいのでしょうか?」


「わふっ」


「それが使命だから任せて。そうですか、これからよろしくお願いします。」


「わん♪」






つづく。

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