第113話 我が家に帰ろう♪
無事にケイトの闇の元凶である、ラウール・サグェを倒す事に成功した俺は野営地から少し入った森の中に居る
ここには俺とケイトと縄で縛ったラウールだけだ
ケイトの為にも今回のケジメはきっちり付けさせて貰う
「本当に良いのかケイト、見てて気持ちのいいもんじゃないぞ」
「構わないよ、ラウールから剣を抜いたんだ普通ならこのまま殺されても文句は言えない、でもダンナは殺さないでいてくれる、なんだかんだで子供の頃から知ってる奴が死ぬのは見たくないからさ
だから最後まで見届けるよ」
「そうか」
俺は縄で縛られているラウールの顔に落書きをする『キュキュッキュキュキュッ』と
こいつのようにプライドが高い奴には、肉体的な痛みより精神的な苦痛の方が効果があるだろう
『ペチペチ』
「ん~?、、、はっ?!貴様ぁーーー!!」
『カシャッ、、ジー、カシャッ、、ジー』
「えぇーと、ラウール君だったね、まずはコレ見てくれるかな」
「なっ?!ななななななななななんだそれはーー!!」
俺が見せたのはインスタントカメラで撮った、屈辱的な落書きをされたラウール君の写真だ
「見て分かると思うけど、これ魔道具なんだよ、ラウール君の凛々しい姿が写ってるだろ
一度しか言わないからよーく聞けよ」
「ボッ、ボクに舐めた口を聞くなーー!!」
「うるせぇよ、聞かないのは君の勝手だし、君が困っても俺は構わないよ、それでこの魔道具で出した、、、君の絵
これ簡単に複製出来るんだよ、千枚でも一万枚でも、それでね君には二度と俺達の視界に入らないで欲しいんだ、それさえ守ってくれれば君の事は忘れるよ
むしろ覚えていたくないから今すぐ忘れたいくらいだよ、もしそれを破ればこの絵を国中にバラ撒く」
「っ?!そっ、それだけは辞めてくれ!!」
「約束さえ守ってくれればやらないよ、それと俺を恨んで人質を取るとかも止めた方がいい、その時はこちらも手段を選んでいられないから、話し合いでは解決出来なくなる
君はオフューカス子爵と仲が良いみたいだ、あそこは保守派だから
サダルスウド侯爵に手紙を書いて頼むのもいいかも、オフューカス子爵と仲の良い馬鹿な冒険者に付きまとわれてるから助けて欲しいって、勿論この絵を添えてね
嘘だと思うなら侯爵様に聞くといいよ、池田屋商会会長のシンとはどういう関係なんだ?とね」
「ひぃっ(泣)ケイトそんな目でボクを見るなぁ!!」
「それは出来ない、あたしは今回の事を最後まで見届けなきゃ駄目なんだ」
「ラウール君、約束を守るっていうのは大切だよ、そうすれば君も俺もハッピーなんだ、それで約束は守ってくれるのかな?」
「守る!!もう二度とおまえ、、、あなた達には近付かない!だからその絵をバラ撒くのは止めてくれ!!」
「そうか、約束だよ。それじゃあ縄を切るから動くなよ『シュ』」
「ふぅー、、、この度は本当に申し訳ありませんでした」
「分かってくれたならいいよ、この絵は記念に1枚あげるよ」
「寛大な対応感謝致します、では失礼します!」
ラウール君は人が変わったように礼儀正しくお辞儀をしたあと、森の奥に行ってしまった
もしかしたらあの写真は死ぬより辛い事だったりするのだろうか?
しかし、途中からあきらかにラウール君の様子が変わったのが気になる、俺に負けた事が原因だろうか?良い意味での変化だといいが
あれを演技でやってるとしたら将来大物になるかもな
「ケイト、これで大丈夫かな?」
「大丈夫じゃないかな、いつの頃からかアイツはプライドの塊みたいになって、他人に頭を下げるのを異常に嫌がるようになったんだ、相手と刺し違えてでも頭は下げないくらいにね
それで何回か本当に死にかけてるし、幼い頃はあんな奴じゃなかったんだけど、もう会う事も無いよ」
「そうか」
「主様、お疲れ様でした」
「おう、みんなお待たせ、無事に終わったよ」
「グラフィアス商会の皆さんもお騒がせしました」
「いえいえ、実は私達もあの冒険者には困っていたんですよ、見ての通りあのような態度でしたし、今回の護衛役もAランクでの実績作りが目的で子爵様から強引に押し付けられたような物ですから」
「そう言って頂けると助かります、ですが何かお詫びをしなくては」
「ははは、本当にお気遣い無く、我々もグラフィアス商会の看板を背負ってますからな、この程度の事で詫びは不要です」
「うーん、でしたら私も商会を経営していますのでキャラバンシティに来た際にはお声掛け下さい、お互い利になる商売の話でもしましょう」
「それは良い!キャラバンシティに行く事があれば是非」
「よし!面倒事も片付いたし、もうやる事は1つしかないな」
「じゃあお腹減ったしご飯だね♪」
「ケイトよ、分かってないなぁ」
「全くケイト殿は、はぁ~」
「ケイトさん、今のは無いと思います」
「うん、無いーー!」
「ケイトさん、ここは新参者の私でも分かりますよ」
「ケイト、もっと大事な事があるでしょ?」
「えぇーー?!なんだよぉ、みんなは分かるのかよぉ」
「当たり前だろ、今やんなきゃいけない事は、我が家に帰る事だろ!
そんで女将さんにガゼル親方、オリビエさん、ミリーさん、仕方ないからウェンディさんも、あと商会で働いてるみんなも呼んで宴会だ!」
「うん♪」
「そうと決まれば、帰りは俺が運転するからケイトはみんなと一緒に後ろな、みんな乗り込めー、しゅっぱーつ」
「「「「「「おー!」」」」」」
「まままま、待って下さい!まだあなたのお名前も商会の名前も聞いてません」
「おっと、申し訳無いです、名乗るの直ぐ忘れるんですよね、俺は池田屋商会会長のシンと申します
それじゃあ改めて、しゅっぱーつ」
「「「「「「おー!」」」」」」
「ねぇダンナ、あの商人の人達なんか騒いでるみたいだけどいいの?」
「ケイトよ、今大事なのは何だ?」
「うーん、家に帰る事、、、だよね?」
「正解!分かってきたじゃないか♪」
「えへへ♪」
「さっさと我が家に帰るぞ!」
「「「「「「おー♪」」」」」」
心に芽生えた感情の、答えを知らぬ君がいる
初めて感じた喜びと不安をそっと胸にしまい
輝く瞳が見つめる先には、更に輝く人がいる
心の傷が癒える時
きっと答えも出るだろう
他人に興味が無い男、長倉真八
これは彼が人と繋がる温もりを
仲間達と共に、自らの心で感じ取って行く物語である。
第6章 完
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