第81話 交渉

『ウィンウィンウィンで皆ハッピー大作戦』を実行するにあたり、この村の怪我人と病人をどうにかしないといけない



この計画は村の人達にキャラバンシティの近くに移住してもらって、牛の飼育とテキーランの栽培をしてもらうというものだ


移住先の土地は俺とドワーフの親方さんで、アストレア様にお願いすればどうにかなると思う


この国は何処も土地の広さに対して人口が少ないから、移住は歓迎されているからだ


勿論それは自分達で稼ぐ手段があるのが前提で、難民などは基本的に受け入れていない



怪我人や病人は移動が困難で移住出来ないって言われると困るから、怪我と病気を治療する代わりに移住してもらうように交渉するつもりだ


そもそも治療費は無いだろうし、どちらか一方だけが得をする関係なんて即破綻してしまうからな、お互い得る物が必要なんだ



俺には創造神様から貰った回復魔法があるから、生きてさえいればどうにか出来るんじゃないかと思う


ただし、回復魔法なんてホイホイ使うと確実に騒ぎになるだろうから、その辺は考える必要がある



そして今は村の中を散歩してると見せかけて、こっそり村人達を鑑定してまわっている


鑑定結果は


足の怪我1名


脚気7名


風邪1名



足の怪我が化膿して危険な奴が1名いるけど残りは栄養不足が原因だ


これなら怪我人以外は栄養のあるものを食べさせれば問題無いはずだから、薬と称してサプリメントを渡すだけでも良いかもしれない



とりあえず最初に会った村人の男に交渉してみるかな



「おーいあんたは、、、名前聞いてなかったな(笑)俺はシンって言うんだよろしく」


「色々驚き過ぎて俺もすっかり名乗るのを忘れてたよ、俺はライラだよろしくな」


「それでさ、単刀直入に言うけど村人の怪我と病気を治すから村ごと移住して欲しいんだ」


「は?、、、はぁっ?!待ってくれ、あんた本当は俺を驚き死にさせる為に来たんじゃないだろうな?」


「これは至って真面目な取り引きだよ、俺が欲しいのはあの牛とテキーランと、それらを世話する人なんだ、俺ならこの2つの品で儲ける事が出来る!


それに牛のミルクも悪くなる前に届けられる距離に、街か村があれば今より売れるだろ?」


「それはそうだけど」


「じゃあこうしよう、今から一番状態の悪い怪我人を治療する。治療が成功したら移住の件本気で考えてくれないか?」


「マジかよ、、、だけどそれだと移住をしてもしなくてもシンさんは大損だろ」


「俺は商人だぜ、損する事なんてするかよ


だけどそうだな、怪我人の治療費だけは貰うよ、ミルクとテキーランを2~3本でいいよ、あとは結果を確認してから決めてくれ。じゃあ後でな」


「おっ、おぅ、、、」





さっそくニィナと怪我人がいる家にやって来たのだが、怪我の影響か強めに揺さぶっても呻くだけで目を覚ます様子は無い



「それじゃあ怪我人が眠ってる間にさっさと治療するか、ニィナ頼んだぞ」


「はっ、お任せを!」


「まず足の傷口を少しだけ切開して膿を出そう」


「はい」


『シュッ』



おぅふ(汗)


ニィナが馴れた手付きで傷口を切開すと


思ったより出血が少ないのは良いけどなかなか厳しいビジュアルだな、切開して膿が出たら生理食塩水で綺麗に洗い流す。


回復魔法があるのに何故傷口をわざわざ切開しているのかというと


怪我が治っても足の中に膿が残ったまま、なんて事が起こらないようにだ


回復魔法で怪我を治す事に膿を消し去る事が含まれているのか分からないから念の為だ



そしたらいよいよ回復魔法を使う、、、呪文とか知らないんだけど大丈夫かな?


俺は頭の中で傷が治るイメージをして、傷口に手をかざす


すると傷口がほわっと光って綺麗に治っていた


これぞ本物のチート能力!



とりあえず傷のあった場所にガーゼをあてて足に包帯を巻いておこう、魔法では無くあくまで治療で治った事にしておかないとな


1週間くらい包帯を取るなって言っておけば、ギリギリごまかせるか?


とりあえずライラに報告に行こう




「おーい、ライラー!」


「シンさん、もう終わったのか?!」


「ああ、もう大丈夫だよ、痛みは無いだろうけど1週間くらいは包帯はそのままで無理もさせるなよ」


「分かった、ありがとう感謝するよ」


「じゃあ他の事は明日、改めて話すって事でいいか?」


「そうしてくると助かるよ、今日は色々ありすぎて疲れちまったよ」


「なんかすまんな、ゆっくり休んでくれ」





さてと


俺は今日の夕食を作らないと、治療の間に他のみんなには野営の準備をしてもらっていたからそろそろ腹ペコだろうな(笑)



「みんな準備ありがとう。本日はここを我々のキャンプ地とする!」






つづく。

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