第76話 キャンプ地

「丘を越え行こうよ~、口笛ふきつ~つ~


フフ~フ フ~フ フフ~フフ♪


ララ ララ スミレ」


「わんわん♪」



「ララ ララ カスミ」


「ぴょっ、ぴょんぴょん」


「ラララ 歌声あわせよ旅は楽しい~♪」




トゥクトゥク風に改造した電動アシスト付き自転車で旅に出た俺達は現在街道をノロノロと移動中


街の近くは人も馬車も多くてスピードが出せない為、暇潰しに歌を教えたら思いのほかウケた♪


気分的には女子高生の修学旅行だと思ってたんだけど


これじゃあ小学生の遠足だな(笑)




それにしても馬車ってのは遅いんだな、カッポカッポとのんびりして和むけどあれで何日も旅をするとかちょっと無理だ


けど意外だったのは俺達が乗ってるトゥクトゥク風の乗り物はそれほど注目されてない


中には驚いてる人もいたけど、外国製の珍しい馬車という認識っぽい


やはり魔法がある世界だと初めて見る物に対する耐性があるんかな?




キャラバンシティの南門からしばらく行くと大きな川があり、この川を越えると他の貴族の領地になる


そして俺達が向かってるサウスビーチの街は更に幾つかの領地を越えて行かなければならない



サウスビーチの街は、王国十二家、保守派筆頭アクエリアス公爵の影響下にある、サダルスウド侯爵領の領都なのだが


情報量が多くてややこしいわ!



ちなみにピスケス伯爵は中立派で、派閥の筆頭は法の番人ライブラ公爵



今回の目的はサダルスウド侯爵領でのレシピ登録、及び保守派に対しての牽制と友好関係の構築なんだそう


牽制しといて友好関係が成り立つのかは知らんが、中立派のピスケス伯爵の御用商会となった池田屋商会が間に入る事で可能らしい


とまあ貴族に関して色々とミリーさんやアストレア様から説明されたけど、俺は今まで通り好きに商売をすればいいのだとか


面倒な貴族に対しては、ピスケス伯爵家の御用商会という事を盾にすれば王族であっても無理は出来ないって話だ



まあそもそも俺に貴族と高度な駆け引きとか無理だし、相手が良い奴なら商売するし、嫌な奴なら断るまでだ




「ケイトそろそろ人も少なくなってきたしスピード出していいぞ」


「あいよ~」



俺はトゥクトゥク自転車の荷台のタイヤに付けたモーターを起動させ、スピードメーターを確認する


6、、、8、、10、、19、、23キロか、様子見で軽く走ってるわりに良いスピードだな


モーターもまだ余力は充分だし、目標の30キロは軽くいきそうだ



今日は初日だからペースはかなりゆったりしている、バッテリーの減り具合いとかその他に不具合が無いか確かめながらだから仕方ない


タイヤはノーパンクタイヤに交換済みだしそうそう問題は起きないだろう


だから今日は早めに野営地に行ってキャンプだ!


ちょうど他に2組の商隊がいる野営地があったから、俺達もそこでキャンプする事にした


テントは組み立てたまま収納してあるからそのまま出して、ペグを打てば設営完了!



「皆集まれー、ここを我々のキャンプ地とする!」


「ダンナ、わざわざ確認しなくても分かってるよ」



みんなは少し微妙な表情だけどいいんだ、ひとりの時にこんなセリフ言っても虚しいだけだからな


念願のセリフが言えて俺は満足でござる♪




さあ、飯の準備をしよう


今日のメニューはハンバーガーなんだけど


その前にキャンプと言えばやっぱ火起こしだよな


ほぐした麻紐にマグネシウムの粉をかけてからメタルマッチで着火『シュボッ』


よし、1発で成功だ♪


あとは火を大きくしてから炭を投入しておけばそのうち炭にも火がつく


ハンバーガーの肉は仕込んで来たから焼くだけで良い


炭火で両面をさっと焼いたら鉄板に移動させてチェダーチーズをたんまり乗っけて蓋して蒸し焼きにする


パンにカラシマヨネーズを塗って、レタス、肉、トマトソース、刻んだタマネギ、パンを乗せて完成♪



良いねぇ、凄くシンプルな見た目だけど凄く旨そうだ♪


元世界だとハンバーガー専門店に行くとシンプルなハンバーガーって意外と無い事も多いんだよな



「みんなー、飯出来たぞー」


「今日の飯は肉サンド?」


「これはハンバーガーって言うんだ、カラシマヨネーズはお好みで使ってくれ、それじゃあ、いただきます」


「「「「「いただきます!」」」」」



旨い!


ハンバーガーと言えばこの程よい高さがいいんだ


専門店の食べ易さを無視した背の高過ぎるハンバーガーも旨いんだけど、俺は苦手だ




飯を食べたら次は風呂


野営だからと言って風呂に入らないという選択肢など無い!



風呂は我が家の物をそのまま持って来たから、周囲に目隠し用の板を並べれば完成だ、みんなが先に入ってるあいだ俺は見張りをする


さすがに他の商隊の連中から凄い目で見られてるけど、気にしない気にしない(笑)




「はぁ~、まさか野営で風呂まで入れるとはなぁ、もうダンナが居ない生活とか考えられないよ」


「ケイトは一生俺と暮らすつもりかよ」


「そのつもりだけど駄目なの?お嬢と他のみんなは一緒に暮らすんだろ?」


「そりゃあメリルはまだ成人してないし、ニィナ、カスミ、スミレは奴隷だから俺が面倒を見る責任があるだろ」


「あたしだけ仲間外れは嫌だよぉ(泣)」


「ケイト泣くなよ、追い出すとか言ってないだろ」


「うん」




はぁ~


ケイトって見た目より繊細なところがあるんだよな


そして若干闇が見えるのが気になる、冒険者をやってりゃ色々あるんだろうけど


でも細かい所に気が付くし気配りも出来る、記憶力も悪くないし見た目も良いと思う


なかなかの良い女なんだから男でも作って、、、


ケイトは男嫌いだったな


俺も男なんだけどなぁ、しょうがない良い酒飲ませて励ましてやるか






つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る