第6章 新たなる旅立ち

第75話 旅立ち/しばしの別れ

今日はいよいよレシピ登録の為に他の領主の街に行く


この国の大きな街と街の間隔はだいたい馬車で5~7日程度の距離で


その間に村があったり宿場町がある、勿論町や村も何も無くて野営地だけの場所ってのも多い


馬車なら1日で15~20キロ進むけど、俺のトゥクトゥク風に改造した荷台付き電動アシスト自転車なら1日で次の大きな街まで行けるけど


せっかくだから2~3日かけてゆっくり行こうと思っている


途中で米や砂糖の原料となるテンサイやサトウキビを探す為だ


もし見つかればピスケス伯爵を通して、その土地の領主に砂糖を作らせる手筈になっていて、俺は砂糖作りのアドバイザーとして報酬を貰うんだ♪


と言ってもスキルの「店」で買った本の知識をそのまんま教えるだけだがな(笑)





さてと、街の南門まで徒歩でやって来た


さすがに街の中で自転車は邪魔だし目立つからな


だけどやけに人が多くないか?ってあれはウチの商会の従業員と奴隷達だよ、しかも、、、



「シン殿ぉ~~♪」



おぅふ、何故ウェンディさんが



「おはようございますウェンディさん、朝からどうしたんですか?」


「お見送りに来たに決まってるじゃないですかぁ~♪ミリアリア様は残念ながら仕事で来れなかったんですけど


池田屋商会の人達にお願いされて皆さんを連れて来たのは私なんですよぉ」


「それはどうもありがとうございます」


「えっへん♪シン殿もっと私を褒めてもいいんですよぉ~♪」


「あぁはい、えらいえらい」


「ちょっ、シン殿ぉ~なんか私の扱いが雑ですぅ~(泣)」



ウェンディさんの相手をしてると時間がかかるから、これぐらいにして



「皆も忙しいのに来てくれてありがとうな」


「ご主人様、どうか、どうか無事に帰って来て下さい」



この世界の旅はそれなりに危険を伴うが、そんなに深刻そうな顔をしなくてもいいと思う


特に本店で働いてる奴隷達がこの世の終わりか?!って表情で俺を見てるんだもの



ギルドに作った俺の口座にはかなりの金が入っている


万が一俺に何かあったらそれを使って皆の面倒を見てもららえるようにミリーさんにはお願いしている


それに池田屋商会の商売自体は既に俺が居なくてもなんとかやっていける筈だ


その為に可能な限りこの街で買える物で出来る事を選んだのだから





「皆そんなに心配しなくても大丈夫だよ」


「ご主人様、我ら奴隷から渡したい物があるのですが、受け取って頂けるでしょうか?」


「俺に?勿論喜んで受け取るよ」


「ありがとうございます、我ら皆で作りました拙い出来ですがどうぞお受取り下さい」



そう言って何かを渡して来たのは、猫耳の獣人で名前はたしかミーナだったな


最初名前を聞いたとき「ミーニャ」って言ってたんだけど、「ニャ」の発音だけやけに気合いが入っていたから


猫獣人特有の「ナ」を「ニャ」って言ってしまうんじゃないかと思ったら正解だった



「ありがとう、これはえぇーとミサンガ?」



俺が受け取ったのは糸で編まれたまさしくミサンガっぽい腕輪だった、編み込まれた幾何学模様が格好いいじゃないか♪


しかもみんなの分もある、どうやら獣人族と人族の女の奴隷達が協力して作ったらしい



「あっ、あの、ミサンガかどうかは分かりませんが、我ら獣人族に伝わる伝統的にゃお守りににゃります、それでその腕輪は本来女性から男性に贈る物でして、、、」



なんだろう、腕輪を渡してくれた猫耳のミーナが真っ赤な顔でモジモジしているのだが


まあ普通は恋人とか旦那に贈る物だろうから照れてるだけかな?



「主様お耳を、私から説明致します」


「おっおう」


「ゴニョゴニョゴニョゴニョ・・・という訳です」



ニィナに説明されたが予想通り恋人とか旦那に贈る物だった、更に自分の耳とか尻尾の獣部分の毛を織り込むのだとか


それぐらい俺の事を想っている証として作ってくれたらしい、そりゃあ照れもするか


若干奴隷達の想いが重い気がするけれど、気持ちは充分伝わったし素直に嬉しい



「みんなありがとうな、大事にするよ」


「ごじゅじんざま゛、本当にどう゛がごぶじでぇ~(泣)」



あぁ~、ミーナが泣いちゃったよ(汗)



「あー!また旦那が女を泣かしてるぅ~」


「ケイト?!言い方、言い方が悪いから!」



「ふふっ、会長さんが帰って来ないと泣く女が更に増えますよ」



製麺所のママさん達も見送りに来てくれたのか


だが俺は二十歳を過ぎた女の涙を信用出来なくなった悲しきおっさんなのだ


だからそんな話を、、、ってここには二十歳以下の女性もけっこういたな(汗)



「そんなに心配しなくてもちゃんと帰って来ますよ、これ以上泣かれると男にも泣かれそうですから」


「たしかに、結局会長さんは皆に優しいから」



そうなんだ、さっきから奴隷の男達も泣きそうな顔をしてる、男に泣かれても全く嬉しくない!



「それじゃあそろそろ行こうか、みんな乗り込めー!、、、しゅっぱーつ♪」


「「「「「おー!」」」」」



「「「「「ご主人様ー、いってらっしゃいませーーーー!!」」」」」





見送ってくれるのは嬉しいのだが、泣きながら手を振られると


俺達はこれから戦地に送られるんじゃないかとちょい複雑な気持ちになる




でも最初の街からの旅立ちって異世界小説だと、本格的な物語の始まりって感じでワクワクするな♪





天気は快晴


気の合う仲間と旨い飯に旨い酒


それさえあれば世はこともなし!ってな♪






つづく。

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