第47話 後悔などあろう筈が無い!
朝、目が覚めて窓の外を見ると今日もいつもと変わらぬ朝日が見える
最後のピースとなる美容品を送った貴族からの連絡は未だに無い
だがしかし
いつまでも待っているわけにはいかないから、今ある手札でアメジスト商会のクソジジイに引導を渡してやる!
部屋を出るといつものように、ニィナ、カスミ、スミレが並んで待っていたので挨拶する
「みんなおはよう」
「「「おはようございます!」」」
1階の厨房に行き朝食のメニューを考える、毎日作ると同じのばっかりになるんだよなぁ
朝だからさっぱりと冷やし中華なんてどうだろう
「主様、外が騒がしゅうございます」
「またか?!」
俺は急いで外を見に行く
すると近所の住民がゴミ?のような物や石やら木やらを持って走っている
中には丸太を引きずる奴までいたが何だろう?
みんななんとなく嬉しそうにも見える、祭りか?と思い
様子を見に来たケイトとメリルを見るがどうやら違うみたいだ
「よし、ついて行って確かめよう」
で行こうとしたらスミレが椅子に座って寝ていた、そりゃあ夜が明けて間もないから仕方ない
置いてくわけにも行かないから、スミレを抱っこしてみんなが走って行く方に行ってみる
「あっ」
「「「「あっ」」」」
俺達は揃って間抜けな声を出してしまった
それも仕方ない事だと思う、だってみんなが向かっていたのはアメジスト商会だった
からだ
しかも、持ってきたゴミやら石やら木を何事か叫びながらアメジスト商会の建物に向かって投げ込んでいるんだもの
丸太を引きずってた奴は何人かで協力して、丸太をぶつけて扉を壊そうとしている
これはいったいどういう事なのよ?
「あんたたちも来てたのかい」
「女将さん、これはどういう状況なんですか?」
「アメジスト商会の従業員が反乱を起こしたってとこだろうね、最近は白パンを賃金の代わりにしてたらしいからね」
「ん?、、、白パンって高級品ですよね?」
「そりゃあ、あたしらじゃ買えない値段だけど、日持ちしないし転売出来ないし白パン1個じゃ腹は膨れないしさ
それに最近穀物の値上げでみんな不満が溜まってたんだろうね、従業員と商店主の家族や知り合いが結託したみたいだ
まあ中には関係無い奴も混ざってるけど(笑)」
「シン殿ぉ~!」
「ウェンディさんじゃないですか、ウェンディさんも見に来たんですか?」
「ええ勿論です。やはりこうなりましたか」
「何か知ってるんですか?」
「知っていると言いますか、実は我等の里もあの商会とは以前から取引をしていたのです。
ですがシン殿の事もあり独自に調べて里の者と話し合った結果、取引中止の決定が下されたのです。」
「そのような事になっていたとは、、、」
「あら?シンさんも来てたのね、おはよう」
声をかけられ振り返ると、工房の親方でドワーフのガゼルさんと、奥さんのオリビエさんが並んで歩いて来た
「おはようございます、お2人も見物ですか?」
「おぅ、見物っちゅーかウチの若いもんがはりきっちまってなぁ」
はりきる?とはどういう事かさっぱり分からず困惑していると
ドワーフの一団がやって来てアメジスト商会の壁を壊し始めた
「親方さん!あれは何してんですか?!」
「いや~、あいつら最近孤児院で売り出したポップコーンにハマっててなぁ
お前さんが差し入れる酒に合うもんで、仕事終わりの楽しみにしとるんだわ
それがだ
最近小麦なんかが値上げされて孤児院が困ってるって言うじゃねぇか、こらぁ許せねぇってんでこの騒ぎよ
まったくお前さんも水くせぇぞ、相談してくれりゃあチカラになるっつうのに」
「そこまで甘えられませんよ」
「そんなもんかのう、人族っちゅーのは考え過ぎでいかん!ワシらのようにもっと酒を飲むべきだな」
「シン君が考え過ぎっていうのは当たってるわね(笑)」
「ミリーさん!」
「おはようシン君、相変わらずあなたは自分の価値が分かってないようね、今のこの状況は全部あなたが切っ掛けなのよ」
どういう事だ?
確かに俺はあのクソジジイを潰す為に色々してきた、だがどうしたら今のこの状況に繋がるんだ?
「さっぱり意味が分かりません」
「シン君のお陰で孤児院で売ってるパンやポップコーンが人気なのよ
それでお金に余裕が出来て、スラム街で炊き出しをするようになったの、その結果つまらない盗みをする子供が減ったのよ
街の人もみんな喜んでるわ、それにシン君が仕事の無い冒険者にわざわざ依頼をしたり、仕事を増やそうとしてるのも知ってるのよ
それなのに穀物の値を上げたアメジスト商会にみんな怒ってたの、その結果がこれね
それに穀物の買い占め及び不当な値上げは禁止されていて立派な違法行為よ、法の番人であるライブラ公爵も動いてる
全く何を考えてこんな事をしたのかしら、理解に苦しむわね」
「・・・」
俺が言葉に詰まっていると、アメジスト商会の扉が壊されて人々が中になだれ込んで行く
しばらくして、引きずられるように1人の老人が連れて来られた
あれは会長のインポースか?!
以前会った時はもっと威圧的で自信に満ち溢れたクソジジイだったが、今は疲れ果ててくたびれた、ただのジジイに見える
ああなると惨めなもんだな
「おや、ジジイの哀れな姿を見て後悔してるのかい?」
「女将さん、、、俺は自分のした事に後悔はありませんよ、でも結局あのジジイは何がしたかったのかなって」
「そうだねぇ、どうしてもあんたに頭を下げるのが嫌だったんじゃないかい」
「そういうの俺には分かんないですけど、そんなもんなんですかね?」
「そんなもんだよ」
『きゅるるるる~ 』
ん?この音は俺が抱っこしているスミレの腹の音か?ずっと寝てて今起きたようだ
「ん~、ご主人さま~」
「どうしたスミレ?」
「おなかすいた~(悲)」
そりゃそうだ、飯も食わずに朝っぱらから何してんだって話だよ
「ダンナァ~あたしもお腹空いたよぉ~(泣)」
「それじゃあ飯食いに帰るか、せっかくだしみなさんも一緒にどうですか?」
「やったー♪シン殿のご飯だー!」
「ウェンディ、はしゃぎ過ぎよ!でもシン君のご飯は楽しみだわ♪」
「親方さん達も皆でどうぞ、酒も出しますよ、ひと仕事終えた後の酒は格別でしょ?」
「マジか?ヤッホー!!お前さんドワーフの事が分かってるじゃねぇか♪そうこなくっちゃよ、ガハハハハハハハ!」
「シンさん、ウチの人がごめんなさいね、お金は払うからお酒は沢山用意して貰えるかしら?」
「ははは、構いませんよ沢山飲んでって下さい、それじゃあ帰りますか」
「「「「おー♪」」」」
知らぬ間に
繋いだ縁(えにし)に助けられ
向かう先には飯がある
人生楽ありゃ苦もあると
そんな戯れ言吹き飛ばす
草餅が好きな男、長倉真八
これは彼が最高の草餅を追い求める
そんな物語なのかもしれない。
第3章 完
◆◆◆◆◆
今回で第3章は完結です。
次回、閑話を挟んで新章開始となりますので引き続きよろしくお願い致します。
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