第45話 あなたの為に法螺貝を

「カスミィ~、たまご焼きおかわり~」


「カスミー、ウィンナーも焼いてくれ~」


「カスミ、私は大根おろしを所望します」





俺は今、カスミの料理の腕を上達させるために簡単な料理を作らせている


たまご焼き、オムレツ、ポテサラ、巻き寿司などだ、どれも簡単で酒のつまみになる♪


作った物は美味しく食べないといけない、その為に酒を飲むのは仕方ないんだ


そう!


仕方ないんだ!



ケイトとニィナと共に酒を飲んでぐだぐだしてるのも、すべては料理を無駄にしない為なんだ!



メリルとスミレは疲れたのかいつもより早めに寝てしまった、だからカスミを特別遅くまで働かせている訳では無いんだ




それにカスミとは少しだけど、距離が縮まったように思う



「ごっご主人様、お酒の飲みすぎは身体に悪いです」


「えぇ~、まだ大丈夫だよ」


「そうだよカスミィ~」


「でっでも、、、」


「分かった、じゃああと1杯だけ、あと1杯飲んだら寝るから、なっ?」


「それでは、あと1杯だけですよ」




とまあこんな感じで俺にも意見を言うようになった


酒に関してはメリルの影響だろうけど、もう少し飲ませてくれてもいいんじゃないかと思う






『コンコン』


「おーい、開けとくれ~」



ん?あの声は女将さんだな



「今開けますよ~、、、『ガチャ』いらっしゃい女将さん」


「こんな時間に悪いね、ちょいと話があってねいいかい?」


「ええ、構いませんよ、カスミー女将さんにお酒だしてー」


「はい、かしこまりましたご主人様!」


「ふふっ、楽しみだねぇあんたの酒は美味しいから♪その前にこれロンからだよ、よいしょっと」


「ロンからですか?、、、って何ですかこの袋いっぱいの銀貨は?!」


「ははは、それはあんたが教えた料理で儲けた金の一部だね、料理を教えてくれた報酬に受け取って欲しいってさ」


「そんなに売れてんですか?」


「売れるもなにも、冒険者や主婦なんかには当然売れてるけど


飲食店をやってる奴がこっそり買いに来て自分の店で出したりしてるからね、こないだは貴族の使いが買いに来たらしいよ」


「そりゃ凄いや、それで話ってのはロンが儲けてるって事ですか?」


「それはついでだよ、本題はアメジスト商会の事だよ」


「それって、もしかして何かされたんですか?」


「やっぱりあんたも何か知ってるみたいだね」


「実は先日アメジスト商会の誘いを断りまして、その腹いせに何かしてくるんじゃないかと警戒してたところなんですよ」


「あはははははは、あんたあのジジイの誘いを断ったのかい?そりゃ傑作だね♪」


「女将さん笑い事ではないんですけど」



「いやぁあのジジイの断られた時の顔を想像したらつい可笑しくてね、けどこれで話が早く済むよ


実はあたしもロンもあのジジイから誘われたのさ、勿論あたしもロンも断ってやったよ!


あんたから教えて貰った料理が目当てだってのはバレバレだったからね


でもそれが相当気に入らなかったんだろうね、アメジスト商会で扱ってる卵や肉の値段を5倍にして売り付けようとしやがったのさ、全く器の小さいジジイだよ!


ロンの所は知り合いの冒険者に頼んで肉を調達するみたいだから問題ないよ


でもあたしはそうもいかなくてさ、でもあんたなら卵や肉なら持ってるだろ?それを売って欲しくてね」


「それは勿論売りますけど、俺のせいで申し訳ないです」


「悪いのはあのジジイだよ、だからあんたが謝るのはお辞め!」


「そうかもしれませんけど、、、そうだニィナ、アメジスト商会を調べてたろ、何か分かった事あるか?」


「本当は確証を得てからと思っていたのですが」


「構わない、今分かってる事を教えてくれ」


「はっ!最近アメジスト商会が大麦、小麦、トウモロコシ等を買い占めする兆候があります


当初それらは不作で尚且つ一部が雨に濡れて駄目になったのが原因で値が上がったと言われていますが、そのような事実は無いようです」


「不作でもないのに買い占めをしてるとしたら、、、」


「意図的に値を吊り上げている可能性がございます」


「ちょっと待てよ、少し前から小麦は値上がりしてるんだぞ


それが買い占めまでされたらどこまで値が上がるか分からん、このままいけば孤児院で小麦とトウモロコシは買えなくなっちまう


トウモロコシなんて最近まで安かったのに、孤児院で買ってるのを知って値を上げたって事か?!


あのクソジジイやりやがったな!!


俺に何かするだけなら和解もあったかもしれん


だが関係ねぇ孤児院の子供達を巻き込みやがって


あいつは絶対にやっちゃなんねぇ事をやった、これはあいつから俺に対する宣戦布告だ!」


「ダンナ!乗り込むか?」


「そいつは最後のお楽しみだな、あのジジイは人の道を外れている、もはや慈悲は無い徹底的にやってやる!」




『ぶふぉおぉ~~~!ぶふぉおぉ~~~!!』




「うるせぇ!ってニィナはなんで吹螺貝吹いてんだよ?」


「来るべき日に備え用意しておりました♪主様の出陣は華やかに致しませんと!」


『ぶふぉおぉ~~~!ぶふぉおぉ~~~!!』




「あはははははは、若いっていいねぇ(笑)」



「女将さん笑い事では、、、いやこれは笑っていいのか?」







街に響き渡る吹螺貝の音は、住民にとってとても迷惑だった事は言うまでもない!






つづく。

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