第38話 ドワーフと酒 その2

パスタマシンを作って貰う為にドワーフの親方さんがいる工房に来たのだが


俺が出したビールを飲んだ親方さんが物凄い勢いで仕事をし出したけれど


あまりの勢いにビビりながらも俺とニィナは静かに待つしかなかった。




「待たせたな」


「もう仕事は終わったんですか?」


「おう、おめぇの酒が旨かったからな久々に気合いが入ったぞ、ガハハハハハ!


ところであのエールは何なんだ?」




「正確にはエールでは無いんですけど、幻のエールとでも思って下さい」


「まあ細かいこたぁいい、1本幾らだ?」


「すみませんがあれはまだ売れないんですよ」


「なっ?!あれを売らないって事はもしかして、酒の味も分からん馬鹿な貴族共に献上するつもりか?!


それだけは止めろ!それとも貴族共に脅されてんのか?伯爵程度ならワシが黙らせてやる!」



うぉい?!


なんか急に物騒な話になってるんですけどー(泣)伯爵を黙らせるとか怖いわ!




「だっ大丈夫ですから、あれは仲間で飲む分しか無いだけですから!」


「本当か?ならいいが、、、ちょっと待て!するとあれは本当に売らんのか?」


「ええ、今のところ売るほどありませんので」


「おい!あんな旨い酒を飲ませておいて『ゴンッ!!』いってぇー誰だコラァー!!」


「あんたはお客になんて口の聞き方をしてんだい!『ゴンッゴンッゴンッ!』」



おおっ!


なんか知らんが小柄なおばさんが出てきて親方を角材で殴ってるよ、流石に角材は駄目だと思うのだが(汗)



「悪かった、ワシが悪かったから!」


「謝る相手が違うだろう!!『ゴンッ!!』」


「すっ、すまんかったな、酒の話になるとつい興奮しちまった」


「私からも謝りますのでどうか許してやって下さい。」


「気にしてませんので(汗)本当に大丈夫ですから!」



それにしてもこのおばさんは何者だ?



「全く、珍しく気合いの入った音をさせてると思って来てみれば、酒が絡むといつもこれだよ


改めまして、申し遅れましたが私はこの馬鹿、ガゼルの妻をしてますオリビエと言います。」


「これはどうもご丁寧に、俺はシンと言います、隣にいるのはニィナです」



「それでシンさんは仕事の話をしに来たのでしょう?」


「ええ、そうです。新しい商品を作る為の道具と作業場を作って頂きたくて伺いました」




俺はパスタマシンの簡単な絵と、麺棒を二本使ってパスタマシンの説明をする



「これは驚いたね、単純な造りなのに今までこんな道具は見たことないよ。あと作業場は何処に作ります?」


「孤児院の隣にお願いします、それと食材を保管する倉庫も欲しいです」



こんな事もあろうかと孤児院の院長さんには既に許可を貰っといたんだ♪



「分かりました、、、これは仮の見積書になります材料や設備等、細かいところはまだですけど道具の製作料も含めて、だいたい金貨20~40枚はかかると思って下さい」




200~400万円ぐらいか、倉庫も作るからそんなもんかな?


でもこういうのって言い値をそのまま受け入れるのは駄目だって聞いた事がある


大きな買い物は値切りたくなるんだよな、俺が関西人だからだろうか?



「ひとつ提案なんですけど、作業場を作る方には仕事終わりにさっきの酒を毎日差し入れするので、少し安くなったりしません?勿論作業場が完成するまで差し入れますけど」


「さっきの酒と言うとこの馬鹿が騒いでたやつですか?」


「ええ、そうです、オリビエさんも良ければ味見して下さい、『シュポッ!トクトクトクトク』はいどうぞ」


「なんて綺麗なガラス・・・それにエールではないようね、しかも冷やしてあるなんて、んぐんぐんぐ、、、ふぅーー。シンさん!」


「はいっ?!なんでしょうか?」


「これはどれぐらい差し入れて貰えるのでしょうか?」


「人数にもよりますが、ひとり2杯、、、いえジョッキで3杯差し入れます」


「分かりました金貨15枚でどうでしょう?作業場は私が監督して完璧な物を作らせますので」



急にえらい安くなっちゃったよ?!


ビールが旨いって言ってもそこまでの価値は無いと思うんだが



「それで構いません、凄く安くしてもらって申し訳ないくらいですよ、そのお礼と言ってはなんですけど、珍しい酒を1本差し上げます」



俺が出したのは瓶に馬の絵が描かれたウィスキー、日本なら何処のスーパーでも手に入るお手頃な値段のやつだ


ドワーフ相手ならこれも異世界小説の定番だろう




「あら?逆に気を使わせてしまったみたいね、それにこれも綺麗なガラスね、味見してもいいかしら?」


「勿論ですよ、どうぞお好きなだけ」


「スンスン、まあ♪なんて良い香りなのかしら♪木?どうしてこんな香になるのか想像もつかないわ。ではひと口、、んぐ、クゥーーーーー!」


「おい、お前だけ飲んでないでワシにもくれんか?」


「あんたは黙ってな!」


「おっおぅ、すまん」



いやいや親方さん立場弱すぎやん!


髭もじゃで筋肉ムッキムキなのに綺麗な奥さんの言いなりって俺的にはアウトなんだが



「シンさん、代金を金貨10枚にするのでこのお酒を定期的に売って貰えないかしら?勿論、無理無い本数で構わないわ」



おおっ!また安くなったよこんなに安くして大丈夫なのか?


どんだけ酒好きなんだよ



「少数で良ければ構いませんよ」


「それでは商談成立ね、シンさんとは末長く良き友でありたいわ、今後もよろしくね」


「こちらこそ、末長くよろしくお願いします。」



俺はオリビエさんと、ガッチリと硬い握手をしたのだった


骨が折れるかと思うぐらいチカラが強かったけどな(笑)





それにしてもドワーフに酒は定番だけど、実際にあの反応を見ると怖くなってきたわ、冗談抜きでウィスキーを巡って戦争とかしそうだもんな




流石に戦争はしない、、、よな?






つづく。

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