第34話 すべては自分の幸せの為に

だし巻き玉子要員を確保するため奴隷商会にやって来た俺は、ついにもふもふとの出会いを果たしたのだった




「お待たせ致しました、こちらの奴隷を見ていただく前にこの2人からの条件をお伝え致します。」


「条件?」


「もしこちらの奴隷を購入される場合は2人一緒に購入して頂きます。」


「まあ気に入れば2人買うのは構わないが、奴隷が条件を言うのは普通なのか?」


「はい、それが数少ない奴隷の権利でございます。しかしその条件を承諾して買うかはお客様次第、一定期間買われなければ条件は無効、さらに国が定めた期間買われなければ鉱山等で強制労働となります。」


「ふーん、条件を付けてもいいけど買われる可能性が低くなって強制労働の確率が高くなるのか」


「その通りでございます。」



なるほど、多少の同情はするが俺ではどうにも出来んな、国を相手に出来るはずもないし




「それで、君達は獣人でいいのかな?」


「あの!どうか私達を一緒に買って下さい!この子は私の妹なんです、私がこの子の分まで頑張って働きますから!」



うさぎ耳と犬耳の姉妹か、両親がそうだったのかな?



「そうか、君がその子の分まで。2人を雇うとしたら寝る場所と食事、新しい服にその他の日用品等々のお金がかかる、妹さんは大人の半分のお金で済むとして


俺としては君が1.5人分働いてくれるなら二人一緒に買う事に文句はないよ、だから教えて欲しいんだどうやって1.5人分働くのか」


「・・・えっ?」


「恥ずかしながら俺は獣人を見るのは初めてでさ、獣人がどういう事が出来るのか知らないんだ、それに俺には1.5人分働く方法なんて思い付かないからさ是非教えて欲しいんだ」


「・・・」



姉のうさぎ耳の子は何も言えず俯いてしまい、犬耳の妹は完全に怯えてしまっている



「ごめんね、今のはわざと意地悪な言い方をしたんだ」


「・・・」


「話を聞く時は俯くのを辞めて相手の顔を見なさい、君が俺にどう思われても構わないと言うのならそれでもいいが」


「・・・」



ようやく顔をあげて俺の顔を見てる、どうやら話を聞く気はあるようだ



「君は俺に妹さんの分も働くと言った、だから俺はその方法を知りたいだけなんだ」


「・・・わかりません、でも私この子の分まで頑張って働きますから!だから、、、」


「頑張って働くのは当然だよ、働かない奴隷なんていらないんだから、君は妹さんを守りたいんだろ?」


「・・・はい」


「なら出来ない事を出来ると言うのは辞めなさい、そして自分に出来る事を考えなさい、君は何が出来る?」


「・・・」


「その大きな耳は君のご両親にもあったのかな?」


「・・・はい、母が同じような耳をしていました」


「そう、お母さんが、その耳はどんな事が出来るのかな?」


「・・・わかりません」



今にも消え入りそうな声で答えるうさぎ耳の少女



「分からない事を分からない、と答えるのは悪い事じゃないむしろとても大事な事だよ、分からないなら一緒に考えよう」


「っ?!」


「そうだなぁ、君はこの街の近くに大きな川があるのは知ってるかな?」


「はい」


「じゃあその川を挟んで向こう側にいる人が、今俺が話している声の大きさで話していたら君は聞こえるかな?」


「はいそのぐらいの距離ならハッキリと聞こえます」


「マジか?!そうか聞こえるのか♪


君に出来る事が早くもひとつ見つかったな

、君にはお母さんから貰った立派な耳で小さな音を聞く事が出来るんだ、素晴らしいじゃないか!」


「えっ?!」



驚いたのだろう、うさぎ耳がピコピコ動いている様はとても可愛い



「よく聞きなさい、君はその立派な耳で俺なんかより何倍もよく聞こえる筈だ、妹さんと一緒に居たいのならその耳で聞き、君自身が何が大事で何が大事ではないのかを判断しなければいけない」


「・・・」


「俺は商人だ、俺が君達を買ったら新しい事を沢山覚えて商売の手伝いをして貰う事になる、1.5人分働けとは言わないけど、大きくなったら妹さんにも働いてもらう、君達はどうしたい?」


「えっ?!」


「俺がどうしたいか、ではなく君達2人がどうしたいのかを決めなさい」


「私、、、新しい事を頑張って覚えます、商売のお手伝いもします、だから私達を買って下さい!」




「よし!この2人を貰おう、幾らだ?」


「金貨30枚でございます。」



おぉっ!


分かってたけど結構するのね、奴隷は安くても1人金貨10枚はするらしいから、まあ妥当な値段かな



「俺の名前はシンって言うんだ、2人の名前を教えてくれるかな」


「私はカスミ、妹はスミレと言います。」


「そうか、カスミにスミレこれからよろしくな!」



そう言って振り返ると、ケイト、メリル、ニィナの3人がニヤニヤしながこっちを見ている



「3人揃って何ニヤついてるんだよ?」


「いやぁ~、やっぱダンナは他の奴らと違うなって思ってただけだよ」


「おにいちゃん、2人に可愛い服用意してあげてね」


「流石は我が主様です♪」



「まあ褒めてるって事か、ほら」



俺はうしろでどうしたらいいか困っている2人の前に手を差し出す


だけどどうしたら良いか分からないのか見ているだけだ、俺はそれを無視して強引に


だけど優しく2人の手を握る



「ようし今日は2人の歓迎会だ!さっさと我が家に帰るぞ!」


「「「おー!」」」










新たな仲間と手を繋ぎ


歩む彼等の行き先に、邪魔する物などありはしない



2人の少女が感じた温もりは


いつか心も癒すだろう



偽善と罵る奴らには


偽善で何が悪いと言ってやる





自分の幸せが1番大事な男、長倉真八


これは彼が普通に生きていく物語である。






第2章 完







◆◆◆◆◆


閑話を挟んで新章開始となりますので、今後もよろしくお願い致します。



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