第30話 『雨』それは休日の合図

朝、目が覚めると



部屋の中の湿気が凄い!


バタバタと雨が家に打ちつける音が聞こえた


今日は雨か・・・




この世界には基本的に休日は無い、休めば収入が無くなり生活が苦しくなるからだ


しかし雨が降ると仕事は休む、畑仕事は出来ないし馬車も危なくて走らせられない、その為人の動きが極端に少なくなるから普通は休む




ーーーーーーーーーーーーーーー




俺は今、門の前の広場でテントを張って店を出している、以前干し芋を売っていた場所だ


『テント』と言ってもキャンプで寝泊まりする方じゃなくて、お祭りの出店で使う方のやつ


そして今はちょうどおやつの時間くらいかな?


元日本人の俺には雨だから休むという考えは無い!




「なぁダンナ、雨なのに商売するのか?売れないと思うよ」



ケイトの疑問も当然だ、凄く分かりやすく人が居ないんだからな、俺のスキルの「収納」は時間停止機能があるから売れ残っても問題無い


だからと言って考え無しに店を出してる訳ではない、今日はウィンナーサンドの他に、朝からおでんを作って持ってきた


昨日大根が大量に手に入ったから味見も兼ねて作ったんだ、それに今日は雨のせいで冷えるからな


運良くおでん日和だ♪



「ケイトよ、こんな日さえも商人にとってはチャンスなんだよ、ほら味が染みた大根食ってみろよ」


「大根?ダンナが朝から作ってたやつか、どれどれ、あちぃ!はふはふ、、、旨い、旨いよダンナ!薄味なんだけど薄味じゃない?不思議美味しいよ♪」



感想がめちゃめちゃだけど、旨いって事は分かったよ、メリルとニィナもはふはふしながら大根を食べてる


他の具はジャガイモと牛スジだ、ジャガイモは煮崩れるからおでんには入れないんだけど、今日はお試しだから入れてみたんだ



「ねぇおにいちゃん、こんなに美味しいのにわざわざ雨の日に売る必要が分からないんだけど、どうして?」


「もっともな質問だな、今日が雨なのは偶然だけど元々おでんは雨の日と寒い日限定で売ろうと思ってたんだ


ここで問題です。

この二つの日に共通している事はなーんだ?」


「それは両日とも人の活動が減退します。」


「ニィナ正解!ご褒美に生キャラメルをあげよう、口開けて、はい、あー」


「あー、、、、っ?!はぁ~、なんと甘美♪主様!もう無くなってしまいました!」


「ははは、生キャラメルは直ぐ溶けるから旨いんだよ」


「ダンナァ~今のはあたしも分かってたよぉ、だからあたしもソレ欲しい!」


「はいはい、夕食の後のデザートで出してやるから」


「むぅ、それなら我慢する」



「おにいちゃん、それでどうして雨の日と寒い日にしか売らないの?」


「おでんは寒い方が美味しいってのもあるんだけど、売る日を限定する事で特別感を出したいんだ


そして雨の日や寒い日でもおでんを買いに人が集まれば、それを目当てに他の商人も集まって、、、


最終的に今日みたいな雨の日でも人通りが増えて消費が増えて、ついでに雇用も増えたらいいなぁって


あくまでも俺が儲かる事が最優先だし、他はそうなればラッキー♪ぐらいにしか思ってないけどな」



俺が説明し終えると、メリルがキラキラした目をして何かを考え出した


あれは何か商売を思い付いたのだろうか?


俺はスローライフをしたい訳ではないし、それなりに商売を大きくして儲けたいと思っているのだが、メリルは俺より商売に積極的だからなぁ


今は余計な事を言わずにそっとしておこう。



俺はおでんを鍋に入れて門兵の所にやって来た



「こんにちはー、雨なのにご苦労様です。」


「あれ?!あんたは干し芋売ってた旦那だよな?捕まったギルドの野郎に脅されたって聞いて心配してたんだよ」



確かにそうなのだが、あきらかに年上の奴に旦那と呼ばれるのは違和感が凄い、目の前の奴は30くらいか?


中身が39歳のおっさんが言っても説得力はないか(笑)



「心配かけたみたいで、申し訳ないです。」


「無事ならいいんだ、売り子のお嬢ちゃんのファンも結構いたから居なくなって残念がる奴も多くてな」



なんとメリルにファンがいたとは!


今度から売り子の時メリルに話しかける客はケイトに剥がして貰おう、話す時間は1人3秒だ!



「それよりも今日は冷えますからね、温まる差し入れを持って来たんですよ、試作品なんで感想を聞かせて欲しいなと、勿論お金は要りませんよ」



俺は木で出来たジョッキにおでんを入れ串を1本付けて渡す、これなら片手で持って食べれるからな




「おぅありがてぇ、ちょうど腹が減ってたとこなんだよ、それにジョッキとは考えたなぁ


これなら立ったままでもスープも飲みやすいぜ!不思議な匂いだけど嫌な感じはしないな、どれひとつ、、、あちっ!はふはふ、はふはふ、はふはふ、はふはふ」



凄いはふはふしてるけど猫舌なのかな?



「ウメェー!!こりゃあいいぜ体も温まるし外で食うのに最高だな!」


「それは良かったです、その料理にはまだお楽しみがあるんですよ♪でも仕事中だから駄目ですね」


「待ってくれ、仕事中だと駄目って事はもしかして酒か?!」


「正解です。鍋とジョッキは置いてくんで他の人にもどうぞ、鍋は後で回収しに来ます、日暮れまでは広場にいるのでよかったら来て下さい」


「おぅ!絶対行くから俺の酒置いといてくれよな!」


「ちゃんとお酒用意してお待ちしてます。」






つづく。



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