死の運命にある凶悪笑顔の2人はとてもカワイイ

研究所

第一章 二人の主人と一人の奴隷

第1話 カワイイは正義

 どうやら転生したらしい。見慣れない場所に手足の鎖、そしてボロ切れを着ている。俺の最後の記憶はたしか、車にかれそうな子供を助けてコンビニ強盗を倒し、警察官に扮した自爆テロを解決したんだっけ。まあ、おかげで木っ端微塵に吹き飛んで死んだんだが。


 そんな俺が転生したらしい。というのも、同じ鉄の檻に入れられている彼がブツブツ独り言をつぶやいているのを聞いたからだ。彼によると、ここはラノベかそれを原作にしたゲームらしい。


「えぇ…ラノベとゲームどっち? 原作とゲームじゃエンディングが……」


「おい、お前ら出ろ!」


「ひっ……!」


 前世だったらいざ知らず、奴隷の俺たちに名前はまだない。せいぜいが番号で呼ばれるくらいだ。檻から出るということはアレが始まるんだろうな。


「お前らはオークションの商品だ。自分の良いところをアピールして、少しでも良い主人に買われるよう努力しろよ?」


 俺は具体的になにがアピールになるのかと質問すると、丁寧に「知るか」とのこと。

 相手が人間であれば、まだやりようはあったんだけど、が相手じゃなあ……。転生を信じる要因として、体の半分が別の生き物だったり、肌の色が真っ青だったりしていたのが大きい。


「さすが異世界」



▽▽▽▽▽

 オークション会場は意外と広く次々と呼ばれ、売られては残りを繰り返していた。5人1組で客の前に並び、それぞれのアピールポイントを紹介したのち、番号と金額を提示するみたいだ。


「いいかお前ら、いま偉いお方が来ている。その方に買われれば良い暮らしができるぞ? だから頑張ってこい」


 高値で売られろってことね、了解。こっちとしても、できるなら良い暮らしがしたい。すると、自分の番号が呼ばれ壇上に上がった瞬間、もの凄いプレッシャーが掛けられた。


「あ、ああ……2人も…いる、なんて」


 同じ転生者の彼は、顔を真っ青にしながらそう呟いた。この大瀑布のような重圧を放つ人物たちが、彼の視線の先にいた。白と黒の女性が。


「う、うわァ───!!」


 ついに我慢の限界が来たのか、俺を除いた4人が逃げ出してしまった。

 正直、自分も早く逃げたかったんだ。白と黒の2人、その目を見るとガタガタと震えてしまいそうになる。本能から危険信号が放たれ、いますぐにでも離れろと警告してくる。だが。


「出来ねえよ、そんな顔されちゃあ」


 2人は酷く悲しそうだった。無表情を貫いてはいるが、それは無理をして気丈に振る舞っているだけ。なら、俺が取るべき行動は1つ。


「俺を買って下さい!」


 笑顔でそう叫んだ。


 あれっ? よく見たら2人とも美人でカワイイ。うん、正義ジャスティス


((いま……ワレに笑ってくれたの? ))


「あれ、どうして悪寒が?」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ここまで読んで頂きありがとうございます。

高評価、感想お待ちしております。


作っていくとどうしても長くなってしまうため、最初ということで短く仕上げてみました。次回からは少し文章量を増やしていきます。どうぞお付き合いください。


白はギザギザの歯、黒は光を反射しない瞳を持っています。


新作『ネロ•エスピーナのリドル─初見殺しの魔法使い─』を始めました!

執筆は遅いですがどうぞ応援のほど、お願いします


                    研究所

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