第31話 レティシアと言う名の光(マクシミアン視点)

 つい眠ってしまった。多分僅かな時間だと思うが、こんなに心安らかに眠れたのは久しぶりだ。


 まだ少し残る眠気を引き摺りつつ瞼を開けると、目の前に天使が眠っていた。


 膝枕をしてくれていたら、一緒になって眠ってしまったのか。


 レティシアの寝顔を見つめる。何処を見ても何処にも欠点の無い美しい寝顔。

 風に揺られて木漏れ日の様に光る髪が軽く靡いている。


 飽きる事なく見惚れてしまった。


 暫くして天使の瞼が揺れる。その瞼の中に、美しいほうせきが隠されているのを知っている。

 早く開いて俺を見つめて欲しい反面、このまま美しい寝顔を見続けたい。


 俺は思わず、その美しい寝顔に手を伸ばしていた。


 しかし手が触れる前にレティシアは目を覚ましてしまった。


 瞼がゆっくり開き、隠されていたエメラルドとアメジストの宝石ひとみが姿を見せる。


 俺と目が合う。すると瞳が揺れて、美しくそして慈愛に満ちた優しい微笑みを浮かべた。


 綺麗だ。


 素直にそう思った。


 思わず伸びていた手を、そのままその美しい頬に寄せようとしたが、レティシアは我に返った様に目をまじろぐと、顔を赤らめ取り出した扇で美しい顔を隠して横を向いてしまった。


「寝顔なんか見てないで起こして下さい……」


 可愛い。


 俺はこの美しくて可愛らしいレティシアに恋をした様だ。

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