第七話

 エビフライ規制をなくすためには蕎麦川と戦うということで意見が一致した翌日、急遽戦闘行動にでることになった。急展開すぎるが、もう考えても無駄という結論に達したので、力業、実力行使にでることになった。暴力は正義である。どうなんだ。不安要素百パーセント無添加なんだけど。ここはノリでってことで。急っていうか、どしたんって動揺レベルの展開だ。

 六人の部隊は役所公舎の前に整列した。一応格好だけでもということでエビチリがホラ

貝を吹いた。こういうのって普通リーダー格はやらないもんだけど頼んでもこのメンツじゃ誰もやってくれなそうなので仕方なくエビチリがやることにした。一吹きしたら肺活量があまりにもなくて乾いた空気音しか出なかった。そのうち苦しくなって咳き込んでしまった。エビチリは喘息持ちだ。横で見ていたステーキがオレにもやらせてくれと、まさかの意欲を出したので貸してみたら見事な音が出た。ホラ貝を吹かせればまるで世界一。その音は地球の裏側ブラジルまでも届きそうな音色だった。そんなパワーの近くにいたエビセンはあまりの音の大きさに全員気絶してしまった。決戦は後日に持ち越された。(なにしているんだ一体)

 後日今度はステーキに手加減するようホラ貝を任せたが加減という言葉を理解していないのかまたもフルパワーで吹き出した。しかしエビセン陣営はこんなこともあろうかと耳栓やヘッドホンなどをして気絶をうまく避けることができた。ホラ貝いるのか。

 あまりの轟音に役所から人が押し寄せてきた。当然だ。秘書AからHかMぐらいまでも駆けつけた。(いい加減だ)

「ええええびふらあああああああああ」

 ステーキが両拳を握り両腕を水平に伸ばして回転した。唐突な大技発動だ。そこに竜巻暴風が発生して役所の人間をかたっぱしから吹っ飛ばした。しかしステーキは回転制御が効かなくなり中心軸がズレてしまい水平感覚をなくし地面にめり込んでしまい、あえなく取り押さえられてしまった。

 さらばステーキ、お前の死は無駄にしない。エビセンはステーキが捕まっている隙に役所公舎に忍び込むのに成功した。蕎麦川のいる部屋は五階である。そこまでにあらゆる刺客を倒していかないとならない。どんな刺客が相手だとしてもエビフライの正義のためなら命を惜しまずだ。

「えーウチ別にそこまでじゃないし」

 カニコ、なんてことを言うんだ。タロウは黙ってついてきているじゃないか。さっきから頭を蛍光灯とか表示板などいろんなところにぶつけているけど平気なままだぞ。というかそこのラッパーそのラジカセ肩に担いでこの期に及んでそこまでいるのかソレ。

 ここまで刺客らしい刺客は見当たらない。おかしい。いやおかしくないか。普通役所に刺客なんて控えていないか。五階まであっさりたどり着いたぞ。エビフライがあっさりしていてどうするんだ。

 蕎麦川の部屋まであと少しだ。アイツを倒せばエビフライ規制が解かれる。こんなことしてこれで果たして民主国家と言えるのか、いやもう後には引けぬ。

「かかったな」

 その声は。

 あっというまに床が抜けてエビセン全員落ちてしまった。

 ああああああああ。

 って四階になっただけじゃん。地下部屋じゃないんだからその仕掛けいるのか。しかしこの四階こそ恐怖の階層だった。なにィ。

 ここは役所の人間も踏み入れない魔窟の階。

 真っ暗だ。ここに懐中電灯とスイッチがある。どっちを選ぶ。 懐中電灯→③スイッチ→⑥は。なにコレ。こんなことして読み進めないといけないの。超ダリー。いや一応今回のテーマがゲームなんでゲームっぽいこと書いておかないと怒られるような気がして。この話すでにここまでで一万千字越えているのでそっちのほうがよっぽど怒られるかと思うんだけど。いいから。さっさとどっちがいいのか選べよ。懐中電灯→③スイッチ→⑥

① 飲まないと喉がぐんぐん渇く。人は水分をとらないと死んでしまう。ゲームオーバー。

② 開けると中からギャングが出てきた。待っていたぞコノヤロウ。銃を乱射した。「待て待て銃刀法だろ、ここは日本だろ」「シニンにクチナシだ馬鹿め」ゲームオーバー。

③ 懐中電灯をつけると辺りの壁一面に札が貼ってあるのが見えた。一枚とれかかっていた札を見つけた。戻すよう張り替える→⑦そのままにしておき前に進む→④

④ 前に進むと前から包丁持った爺さんが走ってきた。「無視すんなー無視すんなこのガキャア」全員滅多刺しされた。ゲームオーバー。

⑤ どかしてみると中からうめき声がする。箱の中で爆弾が暴発して悲鳴が聞こえてくるも、ここは死んでは証人はいない。とっとと場所を移動する。そこにテーブルの上に牛乳瓶が用意されていた。この牛乳を飲む→⑧飲まない→①

⑥ このスイッチは壊されていて火花がでた。スイッチが押されるであろう瞬間にガスが吹き込まれた。その火花で爆発が起きて全員死亡。ゲームオーバー

⑦ お札を直すとお札には「いつも元気でいてねおじいちゃん」と書かれていた。ふうんと思いつつ前に進む。お爺さんは無事成仏した。目の前に大きな箱があった。開けてみる→②どかしてみる→⑤

⑧ うん。うまい牛乳だ。喉も潤い先に進む。さっきの階段までたどり着いた。四階をクリアした。五階に進む。

蕎麦川がそこで待っていた。

「よくぞここまでたどり着いたな。褒めてやるぞ」

「お前なー、選択肢ひとつ間違えると全部意味不明に死ぬじゃねーか。最後の牛乳もわけがわからないぞ。なんで数時間牛乳飲まないだけで死なないといけないんだ。ウスバカゲロウかおれたちは」

「ここまで話上は生きてこられたんだからいいじゃないか」

 ただでさえ読むの大変で作者も書きながらこんがらがっていたんだぞ。たった八個の選択肢つくるだけで青息吐息虫の息だ。企画した当初は全編これでいこうとしたけど音を上げてたったこれだけだぞ。ええ。どうしてくれるんじゃ。(なにがなにに怒っているのか不明だが許してほしい)全編これやったらさすがに誰も読まないだろ。無駄な労力で一年やそこらじゃできないぞ。おい。締め切りをすぎたらエビフライは大変な目に遭うんだぞ、知らないのか(知らんがな)

 蕎麦川には勝算があった。もうやつらはこのゲームで疲れている。読む方も疲れている。攻撃するなら今だ。というかオレなんで攻撃しないといけないの。それより誰こいつら。

「お前らはまだ気づいていないだろうがな。こっちにはスパイを送り込んでいたのだ。お前らエビフライ規制をなしにしようとする悪党だろ」マンガならここでバーンという効果音のひとつでも出したいところだ。(今のマンガってバーンいわないよ)

 誰だお前は。オレは秘書Gだ。(さっきMまでいっていなかったっけ)

「なんだってスパイだって。まさか新聞社から派遣されてきたイカフライが。二重スパイだったとは」

「いや知らないオレじゃない。とんだ濡れ衣仕掛けたギミック。ていうか二重スパイってなに。いいたいだけでしょ、ソレ」

 確かにこんなラッパーの報告を逐一聞いていたら頭がおかしくなりそうだ。いや新聞記者でも頭くるけど。じゃあスパイは誰だ。怪しさでいえば。

「姿を見せるんだ。我が精鋭よ」

 タロウが一歩前にでる。しかしでた途端に前のめりで倒れてしまった。今まではずっと動かずに済んでいたものがここにきて急に走ったり跳ねたりしたものだから脱水症状を起こしてしまった。

 秘書が慌てて着ぐるみを脱がしていく。そこは汗だくになった秘書Pだった。(なんで中省いた)もう青息吐息虫の息。(さっきもなんか聞いたな。スベっているのに気に入っているのかこの表現)頬を叩き意識を確認する。

「貴様、今まで潜んでいた重大情報はなにかあるのか。教えろ」

「あ、ああ」息はある。どうした、なにかあるか。

 このやりとりなに。報告する人とその敵が一緒にいるところで機密を伝達するってどういう状況。

「う、うあ」「しっかりしろ」全員が固唾をのむ。

「オレだけケーキ食べてない」

ガクッ。

「秘書Pィィィィ」「タロォォォォ」全員が慟哭した。なんでお前まで泣くエビチリ。

「タロウは仲間だと信じている。今でもだッ。もうお前ら許さないぞ」

「お前らこそ我らの秘書Pをこんなことにしやがって。目にもの言わしてやる」

 ラウンドファイッ。ででーん。ここにきてゲームの畳みかけ。蕎麦川さんは完全に置いてけぼりだッ。で、誰が戦うの。

「いやオレ無理だよ。小学生相手にだって柔道勝てないもん。暗算勝負も小学生に勝てないよ。あと国旗で国名当てるヤツ、あれも無理」

「なんで格闘技の話が小学生のほうに寄っていくんですか。いいでしょう。私が相手になります」エビータが上着を脱いだ。

「いや、待て。ここでもし腕でもケガしたらどうする。自分は後に控えるイージージーとの戦いに力を温存しておかねばならない。こんなやつらにつきあうよりイージージーとの戦いが優先だ。ていうかイージージーさんと仲良くなってゲーム攻略法教えてもらいたいッ。ユーチューブで顔出しみたら美少女だったし。これはダメだ」

「ダメだ。私はこの戦いには理由あって辞退する」

「えっ君心の声だだ漏れだったけど大丈夫」

「えっどこまで」

「いや全部」

「どこから。まさかアダルトサイトから膨大な不当請求があって悲観に暮れているところから」

「いや、それは知らない」

「お前、なに誘導尋問しているんじゃ殺すぞマジで。ええ」「ぐえええ」

 エビータはエビチリの首を絞めた。

 しびれを切らした蕎麦川がふたりを引き離した。

「さっきからなにを茶番劇しているんだお前らは。オレが相手になってやる」

「えっその秘書とアンタが戦うの」

「なんでこっちの味方同士討ちしないといけんだ、バカか」

「いやこっちはこっちで争っているので、そちらはそちらでご自由に」

「話がわけわからなくなるだろ、バカ」

 蕎麦川はエビチリの胸ぐらを掴んで引き寄せた。

「ふん。お前らの目的はなんだ。エビフライだけじゃあるまい。オレを更迭させるか国政進出を拒むかだろ。おい、誰の差し金だ。言えばお前らを許してやってもいいぞ」

 蕎麦川はツバを吐きかけた。そう言われて気がついた。蕎麦川は政界に敵が多い。恨みを持っている者もいただろう。その人らを後ろ盾にしておけばこんな自ら戦うこともなかったのだ。

 え、はあなんて頭をかきながら愛想笑いを浮かべていると容赦ないラリアットが飛んできた。

「ええい。隠しても得はないぞ。言え、誰だ。落花生沢か。あいつだろ」

 エビチリは人差し指をあげた。

「そうです。落花生沢先生に頼まれました。我々は雇われレジスタンスでありまして。給料ももらっております」

 蕎麦川は畜生と叫ぶと秘書Qをぶん殴った。

「やっぱりアイツか。アイツの仕業か。絶対ぶっ殺す。全部の手の爪の間に針を刺した後に爪を全部はがしてやる。アイツを拘束した目の前でアイツの妻子をボコボコにいたぶってやる。アイツの親族六親等を全員捜しだし火あぶりにしてやる。落花生沢めええ」

 エビータが肘でエビチリをつつく。わかってる。ヤバイ。とんだとばっちりだ。一体なにをそこまで。

「あのぉその落花生沢さんという人に頼まれるも何も面識もないのですけど」

 そうはいっても蕎麦川にはもうなにを言っても聞こえないみたいでさっきから右拳をあげては叫び左拳をあげては吠えている。

「ヘイヨウ。落ち着けブラザー。オレ新聞記者、祇園精舎、おごる平家はへけけのけ、久ってからのからずでベイベ。そのブラザー、マジで落花生沢知らないこれマジ、サイレントマジョリティー、オケ、アンダスタン、ユア、アンダスタン、韃靼蕎麦川、ドンウォリィビィハッピィ」

 イカフライがラジカセを担いで体を揺らしながら蕎麦川に近づいていた。しかし、ひっこめという一言で足蹴にされてしまった。胡散臭さがここで裏目に出てしまった。しかし今更だけど、なんなんだよラッパーの新聞記者って。

 蕎麦川はひとしきり叫んだら気が済んだのか襟を正してエビチリに視線を向けた。

「落花生沢の企みはわかったが、なぜお前らはアイツに従う。いくら積まれたんだ」

 エビチリは血だらけになりながらも体力を振り絞って立ち上がった。

「ところでなんでオレっていつの間にこんなケガしているの。オレとまだ戦ってないのに」

「さっきそのラッパーがいきなり前に出たときラジカセの角に頭ぶつけたので」

「あっそう。気をつけてよ」

「どうもすいません」

 そうじゃなくて。これは金の問題じゃないんだよ。

「リーダー、言うことはちゃんと声だして。思っているだけで口パクパクしているだけじゃそうがないでしょ」

「だってあの人怖いんだもん」

 蕎麦川の髪が逆立つ。「怖いじゃねえええ。男だろ。主張すべきはちゃんとせんか、バカモノォォ」ツバを吐き散らして怒鳴った。

 さすがこの議会はブラックとしてネット投票上位常連しているだけある。パワハラはむしろお家芸である(ダメじゃん)

 蕎麦川が近づいてくる。今までこの蕎麦川の描写を怠っていたが、胸板はスーツの上からでもわかる厚さ、指はマメがつぶれまくってグローブみたいになっている、肩は背後霊が持ち上げているのかっていうくらい膨れ上がっている、顔には一筋の傷が大文字に削られている。ここまでくると昭和劇画にでてくるヤクザ模範顔である。この出で立ちで趣味は刺繍ですとか言われた日には様々な想像を巡らせてしまうぐらいの容姿である。反対にエビチリときたら最近まで例のあれやこれやで外出自粛がすっかり身につき、もう今や外に出る用事がなければ出ないという自堕落な生活を送るようになってしまい、そのせいか腹が日に日に出てくる始末になっていた。腹、お前だけは外に出たかったのか、なんという自己主張の強い部位だ。ちょっと階段を上り下りするだけで翌日は筋肉痛に悩まされてしまうという体躯になってしまっている。注訳:エビセン活動はエビチリの庭にあるコンテナの中である。注訳2:今日こんなに走ったり跳んだりしたもんだから明日はもちろん筋肉痛である。もう今から憂鬱だよ。

 そんなのが拳を突き合って勝負になると思うか。ええ。こんなときあのステーキがいれば。アイツだったらその腕力でなんとかなったのに。この公舎に入る最初にあっけなくリタイヤしやがって。いつもハンバーガー食べては穀を潰しているのにあの序盤で終了か。ええおい。還ってこいステーキ。

 エビチリが祈ると削岩音が聞こえてきた。その音が近づいてくる。ステーキだ。ステーキはここまで回転を止めることなく秘書連中をなぎ倒してきたのであった。よくあの難関四階も越えてきた、無理矢理かそれでもいい。さああとはコイツ蕎麦川を残すのみだ。さあ来い。

 ステーキを見つけると蕎麦川の顔もこわばってきた。さすが強者は強者を感じるというものか、さあ行け。

 その削岩音も蕎麦川の足下まで近づくと小さくなっていき、やがて止まった。

「どうしたステーキ」

「目が回った」

 おい。そんなベタ展開いらないんだよ。遊びじゃねえだよ。立てステーキ。ダメだ、泡吹いてる。完全に三半規管が麻痺起こしている。

 胸をなで下ろす蕎麦川、腕を回しにかかった。このベタな威嚇はなんなんだ。

「お前らもおとなしく従え。冒頭でも六月二十一日はエビフライを食べてもいいと慈悲を与えているだろ」

 エビチリは両膝をついて祈りのポーズをした。アーメン。

「厳しすぎます。せめてどこかの規制みたいに一日一時間エビフライを食してもいいという許可にしてください」

「そんなの普通の食事じゃないか」

(バレた)

「お前ら、オレをバカにするのもいい加減にしろ、オレをバカにしてもいいのはな」

 そのとき後ろの部屋のドアが蹴破られた。誰だ。

 そこはひとりの少女が立っていた。

「そこまで。最後は私が勝負します。真の強い者を決める時が、来た」

ババーン。

 これは小説だがロッキーのテーマが流れるシーン。

「コムギではないか。お前ここでなにをしている」

 蕎麦川のことはガン無視してカニコに向かって歩いて行った。

「いやコムギ、お前のアレルギーのことだって考えている。わかってくれ、オレのかわいいひとり娘よ」

 コムギは踵を返して蕎麦川に近寄るとみぞおちに鋭いパンチを喰らわせた。蕎麦川ダウン。

「さすが我が娘よ」

 蕎麦川は泡を吹いてのたうち回った。

「ギャルカニ、ランクマッチの時間よ、なにしているの」コムギはタブレットを構えた。

「ハハッイージージー様。今エビフライに飽きていたのでマルチプレイで指を慣らしているところでした」

カニコは片膝をついて右手を左胸に添えた。

「ダチってよりシモベじゃん」

 エビータが肩をすくめる。カニコはコムギのためならすぐに準備をする。

 エビチリはカニコの姿を見て頭に血が上った。

「っていうか飽きているんじゃねーよカニコ。カニコだけは集合かけたら一番に来てくれるし皆勤だし、エビフライが好きだと信じていたのに、飽きてゲームしているなんて、そんな話があるかよ」エビチリは髪をかきむしって怒りをあらわにした。

 カニコはエビチリをにらんだ。

「ウチが好きなのはエビフライなんかじゃない。アンタなの、エビチリなのよ。いい加減気づけこの鈍感」

 ジャーン。

 バタフライ今日は今までのどんな時より素晴らしい赤い糸で結ばれていく光の輪のなかへバタフライ今日は今までの

「待て待て待てバタフライのカラオケ始めているんじゃないよ。これはエビフライの話だっていってんだろ」

「こんなめでたいときに野暮なこと言うんじゃないよ」

エビータはもう泣いている(早いよ)イカフライはエビータのあまりの号泣されっぷりにたじろいだが、やがてもらい泣きしてしまった。カニコが好きだった秘書Eも泣いている(君、まだいたの)

「もう。ランクマやらないの。せっかく秘書Rが後ろで配信カメラ構えているのに」コムギは地団駄を踏んでいる。

「コムギ、お前も大人になったらわかる。愛は素晴らしいものだ」蕎麦川はコムギの肩に手を置いた。蕎麦川も鼻水と泡を垂らして泣いている。

「やっと言えたし。ううっ」カニコも泣いている。

 秘書も勢揃いで泣いている。

「えっなにこの阿鼻叫喚。嘘でしょ。オレも泣かないとダメパターンなのコレ」

エビチリは首を挙動不審に動かしている。頭上から天使が鐘を鳴らしながら舞い降りてきた。

「なにコレ、オレ死ぬの」

愛はすべてを許す。愛の徳政令特別処置によりエビフライ規制条例は撤回されることになった。

今までのこの話、何。カニコの告白でみんな解決されちゃうの。ステーキの死はなんだったの(目を回して倒れているだけです)

「ここで新郎新婦友人代表の余興としてラップを披露しようかと思います」

 マイクをとろうとしたイカフライにエビータのドロップキックが炸裂した。

「いいんだよお前のラップは。新聞記者らしく全員集合の写真を撮れよ。なにいつの間にか友人代表になっているんだよ。お前エビセンメンバーでもないだろ」

「ヨウ、こんなにめでたいのに、ひどい仕打ち、鬼は外福は内、勝負はついたオレたちの勝ち、今後の人生お前らにあれ幸、イエ」

 ラップしてんじゃん。

 かくしてエビフライ規制は剥がされることに決まった。しかし蕎麦川はこれをひとつの教訓として国政に活かすことを誓った。エビフライ、それは愛を繋げるものだという知見を世に広めたい気持ちになった。

 そしていずれはこの日と六月二十一日をエビフライの日と定め、年二回エビフライ祝日とする。年二回はエビフライ祭を開催させ、アレルギーがない限りは祭の国民参加を義務づけることに閣議決定される。

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