ヤキモチ焼きのmy little princess,世界で一番愛しい貴方へ

 Dear my little princess,

 It is a pleasure to see you after such a long time.


 何をポカーンとした顔をなさっているのですか?

 語学留学に行ってるというのに全く上達しませんね。

 旦那様や奥様はさぞかしガッカリされることでございましょう。


 まあ、ここまでは、使用人としての意見でございます。


 そして、ここからはわたくしの本音でございます。

 お変わりないようで、安心致しました。

 改めまして、お帰りなさいませお嬢様。


 お嬢様がお留守の間、私が他のお嬢様のお世話をすると、お嬢様は絶対にヤキモチを焼くので、貴方様がいらっしゃらない間、私の仕事は、専ら庭園の庭いじりでございます。


 全く、私の使用人としてのプライドは、ズタズタ。どこにいったのやらでございます。

 その代わり、お屋敷の庭園には、貴方様を想う程、愛情を込めて育てた結果、色とりどりのコスモスやパンジーが咲き誇ってございます。

 いっそ庭師にでも転職しようかしら?

 そしたら、もうお嬢様のお世話は出来ませんね。

 お嬢様より、お花たちの方がよっぽど素直でしたよ。

 フフン♪

 でもまあ、出来の悪い子の方が可愛いとは良く申したもので……

 今もお嬢様のドレスのリボンが解けているのを拝見致しますと、その不器用さに呆れつつも、やはり私がいないとダメなのね……と、大変愛おしい気持ちになります。


 そうそう、庭園のお散歩をしましたら、お庭でアフタヌーンティーをしましょう。


 暖かいジンジャーミルクティーのマリアージュには、ラムレーズンのパウンドケーキをご用意致しましょう。

 ティーカップには、ウェッジウッドより、ハーレクインイエローリボンをご用意致します。

 あっ、干しぶどう苦手とか仰らないでくださいね。


 お嬢様、またすぐご出発でございますね。

 明日から私の仕事は、また専ら庭いじりでございます……


 あちらの茂みをご覧くださいませ。


 実は、誰にもバレない秘密の小部屋をお作り致しました。

 しばしの間。二人だけの秘密の時間を過ごしましょう。

 そこでは、お嬢様ではなく、名前で呼ばせてくださいませ。

 貴方様の思い出に少しだけでもなれたら嬉しゅうございます。

 ほんの少しの時だけ、一緒に夢をみましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る