第2話 積極性

「はい、コーヒー、ブラック飲める?」


「あっありがとうございます」


ナコがユウキにコーヒーを渡す


入社してから1週間

そろそろ仕事にも慣れてきたユウキだったが

その分業務量の多さにも嫌気がさしてきた頃だった


ユウキが支店長に呼ばれる


「ここの会社に飛び込みでアポイントに行ってくれ」


「あっわかりました」


げっ。この時間からかよ、帰ったら何時になるんだよ


時刻は6時過ぎを指していた


車を出そうとした時

ナコが後から走ってくる


ユウキは窓を開ける

「どうしたんすか?カジタさん」


「支店長に私も行けって…」


「え」


「女性が居た方が良いだろって」


「でもカジタさん、定時6時までじゃ」


「大丈夫です。支店長のご指示なので」


ナコが車に乗り込む


「俺はカジタさんが一緒なら心強いですけど、本当に良いんですか?」


「支店長のご指示なので」


「じゃ」


ユウキが車を走らせる


無言が続く


「何か緊張します」


「えっ」


「いや、女性を横に乗せるの久しぶりなので」


「またまた、」


「いや本当っす」


ミサコを乗せた事は何度もあるけれど

こんなに緊張はしなかった


ユウキは少しワクワクしながら

車を走らせた









窓を見つめるナコ




何か喋らなければ




「ユウキさんって」


「えっはい」


突然ナコが話しかける


「ユウキさんって彼女居るのですか?」



「あっ、えっ、あっ、はい、まあ、」











「好きですか?彼女のこと」







「え、あっまあ、一応」













「カジタさんは、ご結婚なされてるんですか?」


「ええ」


「好きですか?旦那さんのこと」


「ええ」












「でも…」


「でも?」


「あっここです、クライアント先」


「あっ」


クライアント先を通り過ぎる



「すみません、Uターンします」


でもの後が気になったユウキだったが

聞き返せずにいた


アポイント先に着く


ピンポーン


ピンポーン


「留守ですね」


「dmだけ入れて帰りますか」


「でもそれじゃ支店長に怒られちゃう」


「そうっすか、」


「多分まだ帰ってきてないのかも、」


「車で待機しますか」




「どちら様ですか?」


薄禿げたおじさんが後ろから声をかける



「あっ西府商社の者です」


「お話だけでも聞いてもらえますか?」


ナコが積極的に話しかける


「今日責任者居ないからまた今度来てくれ」


「いつお尋ねすればよろしいですか?」


ナコがまた積極的に話しかける


「そうだな、土曜の昼くらいにまた来てくれ」



「土曜は当社お休みで、」


「わかりました」


ユウキに被せるようにナコが返事をする


「カジタさん、」


「休日出勤になりそうね」


「カジタさん積極的っすね」


「一件でも多く取った方が良いでしょ」


ナコはユウキに笑いかける

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