水際 (短文詩作)

春嵐

第1話

 ビルの、屋上。緑化の一貫で、なぜか水が流れている。これがどこから引いてきたもので、どこに流れ去るのか分からない。緑化って言ってるのに。水って。

 でも、涼しいので。いつもここにいる。

 それに。


「お。サボり魔がいる」


 彼が来る。


「涼しいので」


「水流れてるからな。真冬だけど」


「春の初めですよ」


 どうだろ。違うかな。


「サボりですか?」


「俺か?」


 彼が、座る。


「サボりじゃないよ」


「ほんとですか?」


 彼の体温を感じる。


「疲れては、いる」


「疲れてるんだ」


 彼が、体勢を変える。それに合わせて、私も体勢を変える。


「暖かいな」


「私が?」


「そう」


「湯たんぽ扱いか」


「人肌のカイロ。というか人肌」


 しばらく、座って。ここにいる。




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