チェイサー陣営脱落RP

【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

■チェイサー退場後少しして…


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

(全く、運が悪い…)


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

この聖杯戦争が始まって以来、何度目かになるつぶやきだ。

ティンダロスの猟犬という化け物を召喚したのも。化け物が歯向かってきたのも。初戦であの"セイバー"に出会ったのも。

全て、こんなはずでは無かった。


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

傷ついた右腕を庇いながら、城塞エリアまで敗走するはずではなかったんだ。

城塞に辿り着き、一息つく。サーヴァントを失った以上、自分にできることはない。魔術協会に見つかる前にここを去ることにしよう。


【シールダー】

「あ、おかえりー。お疲れ様」


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

ふと視線を上げると、城壁の隅に腰掛け見下ろしている存在がいた。

白銀の鎧をまとった少女。盾の乙女。


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

少女は挨拶と言わんばかりに手を振った後、軽やかに飛び降りてくる。


【シールダー】

「いやいや、大変だったね。セイバーのあの宝具はないよ。遠くから眺めてたけど、あんまりにあんまりで笑っちゃった」


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

バカにしているのか、と言葉が出かかるが飲み込む。代わりに


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

「シールダー。私は応急処置を行った後、この街を発ちます。あなたはそれまでの間、私を護衛しなさい」


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

重力を感じさせない動きで目の前に着地した少女に命令する。


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

マスター権も令呪も失った彼女をわざわざ殺そうとする他の参加者はいないだろう。

とはいえ、ここにはユグドラシルと敵対している魔術協会や聖堂教会も潜伏している。護衛はないよりはあったほうがいい。

しかし―――


【シールダー】

「悪いけど、その命令は受けられないよ」


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

シールダーは一呼吸の間を置いてからにっこりと微笑んで宣言した。


【シールダー】

「今のあたしは盾の乙女"シールダー"じゃなくて、魂を狩る死神"ワルキューレ"だから」


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

「は?」


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

その言葉の意味をたっぷり1秒かけて紅咲は理解した。

『自分を殺しに来た』と。


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

シールダーが虚空から光の槍を取り出す。

見惚れてしまうほど神秘的なそれは"英雄の心臓を串刺しにした槍"という概念礼装だ。


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

「な、何を言っているの!私が誰かわからないわけじゃないでしょう!?」


【シールダー】

「人間、そして勇ましく戦った"勇者"だよね?あなたの活躍はしっかり見ていたよ。だから、最大限の敬意を込めて殺すの。何かおかしいところある?」


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

「ふざけないで!それのどこが敬意よ!」


【シールダー】

「あなたの頑張りは神に認められたということ。とっても名誉なことなんだよ?」


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

シールダーは幼い子供に言い聞かせるかのように言う。


【シールダー】

「安心して。あなたの魂はあたしがしっかり送ってあげるから」


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

ゆっくりと歩いて来るシールダーにはまるで警戒という物が感じられない。


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

(どうする…!?)


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

逃亡するか、戦うか。


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

判断は一瞬。

紅咲は腰のポーチにしまっていたルーン文字の刻まれたダガーを取り出す。


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

殺すと宣言した以上、シールダーは逃がすつもりはないのだろう。余裕の足取りは単に力の差を自覚しているからだ。


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

それならば、万が一の可能性に賭けて攻撃に打って出るしかない。

それに、神話を降臨させようというこの地で、シールダーと親和性の高い"原初のルーン"による攻撃ならば通じるのではないか。そんな僅かな希望があった。


【シールダー】

「さようなら。グン…」


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

「死んでたまるかっ――!」


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

紅咲はダガーのルーンを起動させ振るう。魔力でできた斬撃が飛び―


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

最後の賭けとして放った一撃は、見えない壁に阻まれるようにシールダーの前で霧散した。


【シールダー】

『大神宣言・英雄抹殺(グングニル・グリムリーパー)』


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

シールダーの手の内に合った槍が光の粒子となって消える。

紅咲憐火は己の内側で何かが破裂する音を聞いた。


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

(ああ、本当に…何もかも上手くいかない…)


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

己の内側から飛び出た光の槍に心臓を串刺しにされ、紅咲憐火は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


【紅咲憐火(チェイサー陣営)】

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