第34話 総合商店
僕はこの流通事業の集大成とも呼ぶべき新規事業を計画している。
それは現代の日本に生きる読者諸君にとっては非常に身近なものだろう。
いや、むしろ近年はすたれ始めているともいえるかな。
商会の立ち上げから1年。
帝都北門駅周辺の市街地を中心に、フランチャイズは計10店舗となった。
従業員は200名を超えている。
また、ポイントカードのベイカ加盟店も、多種多様な業種の小売店で53店舗を数える。
最初は交渉して頼み込んで導入してもらったポイントカードも、今は向こうから加盟したいと頼み込んでくるようになった。
そんな中、僕はとある新型店舗の構想を打ち出す。
スーパーマーケット。
説明するまでもない。
食料品、生活雑貨のほぼすべてが一度に揃う総合商店だ。
細かな定義は様々あるが、地域それぞれに適した営業戦略があると言えよう。
僕は商会設立以来この構想を密かに抱え、戦略を練っていた。
そしてついに、スーパーマーケット第1号店の準備が整う。
商品が豊富なだけに店舗の大きさも大きい。
周辺の世帯の消費動向の調査も行った。
特に僕が狙ったのは、駅前である。
ちなみに、それは帝都北門駅ではない。
鉄道でさらに一駅北に行った隣駅である。
従来の営業エリアから3km近く離れているのだが、帝都へ鉄道で通勤する者たちが住み着いており、需要が見込めた。
特にその駅の周りは帝都の住宅不足の結果、自然発生した街である。
生活インフラが間に合っておらず絶賛水道工事中といった具合であった。
商店など勿論、足りない。
あらかじめ住人への説明会などでイメージの向上を図った。
また、そう言った地区であったから広い土地を見つけやすかったのである。
商品の搬入であるが、ぶっちゃけ鉄道貨物は不便であったので流通班の人員を拡充してリアカーと馬車で対応することにした。
帝都と外港のケーニッヒを結ぶドル箱鉄道は、ウチみたいな零細企業の為にわざわざ駅構内に貨物線を増設したりはしないのだとか。
えっ……? 鉄道小荷物でやれって?
スーパーの流通……、全部小包とか、舐めすぎだろ?
結果は圧倒的だった。
もはや、オーバーキルと言えた。
地域一帯の零細商店は一掃された。
もともと、バラックみたいな個人商店が多かったのもある。
可能な限りそう言った人物を雇い入れるなどして失業者の不満解消に努めた。
「ヘンゼルが歩いた後には草も残らない」
そんな噂が流れたが、ウォ●マートよりは温情があるだろう。
第一、店長でなく僕の指示なんだし……。
資本主義社会は薄情である。
スーパーマーケット事業は計画だけなら現在7店舗ほど動いている。
帝都の流通を掌握するのも難しくないかもしれないが、どこかで僕が暗殺されそうなので、ちょっと、ここらで手を休めようと思う。
まぁ、そう言っている間にも、ウチの事業はどんどん大きくなり、ライバル店をどんどんつぶし、卸売業者までどんどん圧迫し始めているのだが…………。
あれ?
僕、何で孤児院にいるんだろ?
まぁ、とりあえず、余計なことは考えず……、
今晩もメシ食って、風呂入って、ラウラだな?
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