vol. 09 居酒屋にて ⑤

「店員さーん、唐揚げとフライドポテト追加で!」

彼女は店員さんに追加オーダーを伝えた。


「勝手に選んじゃったけど、良いでしょ?」

「はい、なんでも好きですので。むしろ有難う御座います。」

「よし!」

ハニカム彼女はやはり可愛い。


「しかし、、、なっがい。長い。長い。もっと短く話せや!」

少し怒った?感じ。

可愛い。


「すみません。。。長いかなとかは思っていたのですが、ついつい勢い余って。」

これは本当。


「まぁ、それなりに面白かったから良いけど。ただ相手の反応を見ながらしゃべんないと、お前だけが楽しくて、相手は楽しくないって状況になって最悪だぞ。だれが楽しくて、お前のオナニーに巻き込まれないといけなんだよ。こっちはお前のオナニーの為にわざわざ時間作ってるわけじゃないんだよ。」

返す言葉がない。

全然気がついてなかった。

正論すぎる。

もう、はぁーーーー確かにって感じ。

情けない。

恥ずかしい。、、

けど、こうやって言ってくれる人は初めてで、とても有り難い。

ってかいつの間にか”お前”って呼ばれてる。

まぁ良いけど。


お詫びをしておこうと思う。

「その点については本当にすみません。仰る通りすぎて反論のしようもありません。ついついあれもそれもと説明したくなってしまい、、、ただ、少し変な話かもしれませんが、そう言って頂いて凄く有り難かったです。自分が楽しく話していても、それって相手が楽しくないとコミュニケーションじゃないですよね。この反省を活かして、次の誰かとはうまく話せるように頑張りまs,,,,」

「だから、勝手に話してんじゃね-よ。」

ほえ?


「お前のオナニーだったが、話自体は自分の知らない領域だったし面白かったの。」

はぁ、さいですか。

「だから、続けろ。とりあえず話は聞くから」

はい。

うん。。?


「もう終わりで解散ではないのでしょうか?」

よくわからんくなってきたぞ。


「良いから話続けて。まぁ、お前みたいなやつは滅多に婚活でも会わないタイプだからさ。

せっかく時間作って会ってる以上、少しでも有益な情報を家に持ち帰りたんだよ。」

自分は情報屋か?

そんなんではないわ。

ただ、まだお話ができるというのであれば、それは凄く光栄なことだ。


「あ、、、わかりました。私で良ければ?是非もう少しお話させてください。」

「それでよし。」

どやって感じの顔をしている彼女はやっぱり可愛かった。


「いきなり質問しちゃうけどさ。」

一呼吸してから。

「さっきODAがパートナー国を作る為って言ってたけど、これまで日本は沢山の国にODAで支援してきたんでしょ。ってことは、世界の多くの国が日本を良いパートナーとして認識していて、例えば食料とかも今後も継続して輸出してくれるってことだよね?」

「そんな保証ないですよ。未知です。ただその可能性を少しでもあげるためにODAしてます。」

これはリアル。


「は?」

驚いた顔をしている。

「だって散々金使って支援してるじゃん。なんで?」

「それは、世界の各先進国が同じようなことをしているんです。金額は大小ありますが。」

結構昔は日本のODA支援金額は世界で一番だったり。

今はアメリカがトップ、次点がドイツ、その次がイギリス、で日本が4番目。たまにカナダが3番目にいたり?

(https://www.oecd.org/dac/financing-sustainable-development/development-finance-data/ODA-2019-detailed-summary.pdf)

(https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_008417.html)

最近は韓国とかの支援額が伸びてる。

あと国民一人当たりの負担額とかの尺度だと、ノルウェーとかの北欧がトップになる。

見方次第だね。

「繰り返すようですがODAの第一目的は常に途上国支援です。これは真実。ただ同時に、支援という名を借りて椅子の取り合いをしているんです。」


「えー、そんなんだったら投資っていうよりギャンブルに近くない?」

「うーん。一理あるのかなぁ、、、」

少しむずかしい。ギャンブルという言葉にもやる。

「えっと、各国の支援が集まれば金額も大きくなり支援も大規模にできるので貧困から脱することができる可能性はあがりますよね。故に、世界平和/安寧を構築するという観点だと非常に素晴らしいことなんです。その上で、あくまでODAの二次目的であるパートナー関係構築は(日本贔屓してくれるか)?という点では非常に微妙であるのも事実。。。」

「そこんとこ難しいね。ただ、投資もギャンブルもベットしないとリターンはゼロだしな、、、」

その通り。

投資をしないということは、現状維持ではなく後退を意味することになる。


「仮にパートナーになるような密な関係が築けなくても、ODAによって国が発展して日本製品が売れるようなったりすれば国益に繋がる、全損にはなりづらい投資、、、捉えることもできるかも?」

「けど、その銘柄で馬鹿勝ちしている国もいるんでしょ?」

「それは否定しません。」

否定のしようがねぇ。


「なんかそれは悔しいよね。ただ、それが外交か。」

「おっしゃる通りですね。」


ふぅーと彼女が何かを切り替えるかのように息を吐き出した。


「ざっくりとは理解できたかな。有難う」

二カッと笑う彼女はやはり可愛い。


「ちょっと話変えるけど、ODAを投資と捉えるのは良いとして、先進各国がこぞって支援してるってことは、支援受領国はかなりのスピードで発展してるんだよね?」

「また良い質問ですね、、、」

どう答えようか。悩むところだ。


「どうなん?」

「質問の答えになってないかもですが、世界の貧困状況は間違いなく改善に向かっています。」

FACTFULLNESS(ファクトフルネス) 著者: ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド

とか読むと良いと思うんだ。


「ただ、”かなりのスピードで発展している”と言われると、YesでありNoですね。」

「どゆこと。勿論国によって大小あるのは理解できるけど。東南アジアとアフリカ諸国比べるのは違うし。」


「まさにその観点です。私は経済の専門家ではないので正しく知るなら専門家にヒアリングした方が良いと思われますが、とりあえず私が「YesでありNo」と思った点について説明しても良いですか?」


「お前の感想かよ。」

はい。だって経済学のバックグラウンドないし。


「けど、せっかくの機会だし、聞かせてよ。だってお前アフリカ行ってたんだろ。現地を見てきた人間の話も面白そうだし。」


「ありがとうございます。」


うん?なんで説明する機会も貰えたことにお礼を言ってるんだ?

今更だけど、、、まぁ、良いか。

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