vol. 06 青年海外協力隊とJICAとODA ②

クッションを挟んだので改めて。


ODAは政府が行う途上国への技術/資本協力で、JICAは日本におけるODAの実施組織となり、その事業として、

”技術協力”

”有償資金協力”

”無償資金協力”

を実施しています。

そして、JICAがこれら事業及びプロジェクトで使用/投資するお金は”ODA”として会計計上されることになる。


ただ、この”技術協力”、”有償資金協力”、”無償資金協力”それぞれについて具体的なイメージが沸かないと思うので、これからざっくり説明しますね。


まずは、一番わかりやすそうな”有償資金協力”について。

これは円借款とも呼ばれるんだけど、文字の通りお金の貸付なんです。

だから返済義務ありなやつー。

だけど一般的な融資とは異なり、金利を極めて低く(国の貧困状態によって金利を変更。アフリカとかは0.01%とか)且つ償還期間を長期間(例えば30年間とか)とし、借り手となる国がそのお金で大規模に開発/発展できるようにすることができるようにすることが目的になっています。

※ちなみにこの金利とか償還期間は、対象国の一人あたりGNIで設定されてたり。

(https://www.jica.go.jp/activities/schemes/finance_co/about/standard/index.html)

国の発展には道路を作る・発電所をつくる・上下水道をつくるとかが必要になるけど、結局インフラ設備設置はめちゃくちゃお金がかかりますよね。

そういったニーズに対して大規模にお金を貸与することで、その国の発展を支援するという感じ。

実は他にも”海外投融資”っていう現地や国内の法人に対象国での開発事業実施に必要な資金を投資/出資するものもあるけど、これはまたいつかの機会で。

だって、令和3年度言うと、1兆5000億円の有償資金協力の内、

海外投融資は600億円しかなかったりだし。

(https://www.jica.go.jp/investor/bond/ku57pq00000r13n2-att/202101_01.pdf)


具体的にはどういった案件があるの?

すみません、それがまだ言えてなかったです。


実際のプロジェクト例をあげると、

1)アゼルバイジャンの火力発電所支援

:借款契約(L/A)調印 1998年2月

:借款契約額 206.99億円

(https://www.jica.go.jp/oda/project/AZB-P1/index.html)

2)モロッコの下水道整備事業支援

:借款契約(L/A)調印 2005年11月

:借款契約額 42.03億円

などの発電とか上下水道設置の支援したり、

(https://www.jica.go.jp/oda/project/MR-P21/index.html)

他にも医療プロジェクトでの機器購入やそのプロジェクト支援とかもあったり。

3)インドの保険強化事業

:借款契約(L/A)調印 2016年3月

:借款契約額 255.37億円

(https://www.jica.go.jp/oda/project/ID-P251/index.html)

多岐に渡って色々やってる感じです。

あと、この医療プロジェクトについては日本製機器を導入していたりで、ODAでありながら、結果的に日本企業への貢献もあったりする。


ちなみに、最近有償資金協力の相手として金額規模が大きいのはインドとかバングラデシュとかだったりします。

2019年度の有償資金協力承諾実績だと、インドが約3800億円、バングラデシュが約2700億円、ついでウズベキスタンが約1900億円。

要は南アジア地域になるんだけど、これら国々を見て、日本としての外交的思惑が見えたり見えなかったりするかなと。

(https://scmufg.webcdn.stream.ne.jp/www11/sc_mufgflv/jica2009/pdf/jica.pdf)


貸し倒れはないのかって?

良い質問です。有難う御座います。

普通に貸し倒れあるっぽいです。

(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_filp/report/zaitoa290725/09.pdf)

勿論有償資金協力の原資には税金も使われている以上、貸し倒れはなんとしても避けないといけない。それ故にリスク最小化の為の契約を貸付時に行い、もし償還が難しい状況になった場合でも、償還期間を繰り延べたりもしたり等対策は取られています。ただ、それでも国がデフォルトになるとどうしようもなく、、、


以上が有償資金協力について。

そんでもって次の”無償資金協力”に行きますね。


無償資金協力は、これこそ言葉の通りですが、返済義務のない資金の贈与援助になります。

有償資金協力とは返済義務の有りなしという点が最も大きい差異になりますが、他にも

無償資金協力の対象となるは、基本的に”途上国の中でも所得水準が低い国”が中心となることですね。

(https://www.jica.go.jp/aboutoda/basic/03.html)

そして、この資金が何に使われるか?というと資材/機材/設備などを購入する為って感じが多い。加えて、無償資金協力となるプロジェクト分野は、色々あるんですが、特に保健・感染症、衛生、水、教育、農村・農業開発などの基礎生活分野、社会基盤整備、環境分野かなーと。


実際の無償資金協力の例を出すと、

1)タジキスタンの救急車両整備

:贈与契約(G/A)締結 2019年7月

:課題 保健医療

:供与額 7.71億円

(https://www.jica.go.jp/oda/project/1860540/index.html)

2)ギニアの橋架替え

:贈与契約(G/A)締結 2019年7月

:課題 運輸交通

:供与額 14.14億円

(https://www.jica.go.jp/oda/project/1960280/index.html)

3)モザンビークの中学校建設

:贈与契約(G/A)締結 2019年12月

:課題 教育

:供与額 22.83億円

(https://www.jica.go.jp/oda/project/1960320/index.html)


こんな感じかな。


つらつら言いましたが、

そもそも有償と無償があるのか?って思いますよね。


これについては、有償資金協力の対象はインフラ等の大規模設備支援があるといった話をさっきしたと思うんですが、そういうのって事業としての収益性があったりするんです。

発電所とかとか。だってみんな電気代払いますよね。

収益があるということは、償還の為のお金の目処を立てられるわけです。

(最終的な償還者は国としても、国は事業収益の中から税金とか徴収できるわけで。)

けど、この世には収益性は低いけど重要なものって沢山あるじゃないですか。例えば教育とか衛生分野とか。

無償資金協力はそういった分野/プロジェクトの為の支援ということですね。その点が有償資金協力と棲み分けになっていると思っていただければと。


あと、無償資金協力って他にやってることも細々あって、例えばNGO支援とか留学生支援とか緊急支援とか。

いっろいろあるけど細かくなるからこれは割愛!

(https://www.sangiin.go.jp/japanese/kokusai_kankei/oda_chousa/h17/pdf/1-1.pdf)


あっはい。質問なんでもどうぞ。

なんでなんで全部無償資金協力にしないか?ですか。

確かに支援される国からすると全部無償が良いに越したことないですよね。

間違いない。

仰る通り、支援受領国的には無償が一番ハッピーなのは間違いないです。

ただ、お金は有限っていうのもありますし、他にも有償にすることで返済義務が発生するのでプロジェクト評価が厳密になるし、対象国的にも効果があったりするんですよね。

あぶく銭は適当に使われて終わってしまうというか。


そんな感じです。


そしてラストですね。

ここまででもう疲れたかもですが、もう少し頑張るぞい、です。


最後の”技術協力”について。

これは、無償資金協力が機器などのハードウェア的な支援をするのに対して、”技術協力”はソフト面の支援となり、日本の技術のある人を対象国に送り、現地の人に技術を教えるといったものです。

例えば、無償資金協力で何かの機器を買ったとしても、その機器をうまく扱えないとプロジェクトはうまくいきませんよね。

そういった技術(ソフト)面での支援がこの”技術協力”になります。

専門家派遣とか(これがメイン)、現地の人を日本の研修施設に受け入れたり。

そして青年海外協力隊もこの技術協力になんと含まれます。

(あっ、最近JICAは、青年海外協力隊・シニア海外協力隊・日系社会青年海外協力隊を含んだ総称としてボランティア事業をJICA海外協力隊という表現を使ったりします。)

https://www.jica.go.jp/volunteer/concept/index.html)

そして、この技術協力を通して対象国の社会・経済の開発の担い手となる人材を育成する感じです。


青年海外協力隊以外に、専門家の技術協力ってどんなことやってるかわかりませんよね。

なので、例を挙げるとこんな感じになります。


1)ザンビアの鉛汚染のメカニズム分析/解明プロジェクト

:事業 技術協力

:課題 資源・エネルギー

:協力期間 2016年4月〜2021年6月

(https://www.jica.go.jp/oda/project/1500625/index.html)

2)アフガニスタンの中核人材育成プロジェクト

:事業 技術協力

:課題 教育

:協力期間 2011年2月〜2019年6月

(https://www.jica.go.jp/oda/project/1003624/index.html)

3)ウガンダの灌漑地区開発計画プロジェクト

:事業 技術協力

:課題 農業開発/農村開発

:協力期間 2014年5月〜2016年4月

(https://www.jica.go.jp/oda/project/1300276/index.html)


他にもプロジェクトはしこたまありますが、興味があればご自身で調べて見て下さい。


兎に角、ひたすら長く喋ったんですが、一番言いたかったのは、”青年海外協力隊はODAの技術協力にあたる事業”ってことなんです。

この事業の主目的はあくまで、対象国の人への技術支援であり、ボランティアはその支援の為の一つの方法/ツールということです。


これが言いたかった。。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る